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お客様は神さま!……ではありません?
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「可愛いわね、二人共。一颯君が貴方達を可愛いがるのが分かるわ」
蓮実さんは、まさかの"君"付けだった。私達が驚いていると……「知らなかったかもしれないけど、一颯君…、支配人とレストランに居る星野蒼汰君は私の一つ下の後輩なの。貴方達を見ていると私達が20代の頃を思い出すわ」と感慨深い様子で教えてくれた。
蓮実さんは一颯さんの仕事の先輩!
「一颯君は鬼軍曹だとかって言われてるけど、表面に出さないだけで、社員一人一人の事を常に考えてくれている。夜警さんの名前や顔も全員覚えているし、支配人だから当たり前って思うかもしれないけれど、中々出来る事じゃないのよ。
暇が出来れば各部署を見回りに行って、社員の様子を伺ってる。仕事がキツイって言って辞めた人も居たけど、辞める時に一颯君の文句を言って辞めた人は居ないわね。辞める時にも一人一人と向かい合って話をしてるみたい」
蓮実さんにとっても一颯さんは大切な存在らしく、評価は絶大!話を聴き勧めると本店からこのホテルに移籍したのは、一颯さんに誘われたからだそうだ。
「しっかし、最近は一颯君も蒼汰君も飲みに誘っても振られっぱなしなんだ。このホテルに来てからは一回も行ってないわね。特定の彼女でも出来たのかしら?」
ギクリ。私の心臓が跳ね上がる。
「……さぁ?居るならお会いしてみたいですね、その特定の彼女さんに」
「今度聞いてみようかな?」
「聞いてみて下さい!どんな方なのか気になりますから!」
高見沢さんは真実を知っているくせに、興味本位で蓮実さんを煽る様な聞き方をしていた。蓮実さんもその気になって、今度聞いてみると言っていたけれど……実は目の前に居ます。一颯さん、何て答えるんだろう?気になるところではある。
蓮実さんとお話した後、二人揃って事務所を出た。
「蓮実さんって、大人な女性ですよね」
「……うん。本人には聞いた事ないけど、結婚して小学生の子供がいるらしいよ」
「え?お子さんがいらっしゃるのにあのスタイル…!」
蓮実さんの美貌は惚れ惚れしちゃう程に美しい!お子さんがいらっしゃるのに引き締まったウエストに細長い手足、幸薄そうな美人って言ったら失礼かもしれないけれど、そこがまた素敵なのです。
一颯さんの同僚の方々は本当に素敵な方ばかりで、恐縮してしまう部分もある。私も歳を重ねたら、あんなに素敵になれるのかな?
「間違っても、あんたが蓮実さんみたいにはなれないから」と言って、高見沢さんが笑う。そ、そんなに笑わなくても良いじゃない?
「あんたはあんたのままでいいんじゃない?彼氏もそれが御所望なんでしょ?」
「……そ、それはどうか分かりませんけど…」
「無理に背伸びしないで、きっと…そのままのあんたで良いんだよ」
私は一颯さんに合わせなくてはならない、と無理に背伸びをしようとしていた。高見沢さんは私達の関係は否定しようとするくせに、優しい言葉をかけてくれる時もある。
「あー、イチャイチャしてる!」
ラウンジ裏のパントリーで業務が来るまで待機していたら、吉沢さんが顔を出した。指をさされた私達は必死に否定をする。
「イチャイチャはしてないですよ、決して!」
「誰がイチャイチャしてんだよ?」
「してないのは知ってるよ~」と笑顔を振り撒き、「様子見の幸田様なんだけどね、ラウンジに御友人の予約も入ったの。卒業記念だって」と教えてくれた。
エグゼクティブラウンジは基本はエグゼクティブフロアに宿泊している方へのドリンクや軽食サービスを提供している。宿泊している方の御友人ならば、一定料金を支払えば利用も可能になる。
幸田様の宿泊目的が卒業記念だとしたなら、安心も出来るかもしれない。
「私や他のスタッフも気配りはするけど、他のお客様の御迷惑に成りかねない時は早めの判断をする事になったからね。一応、報告迄」
今の所、幸田様は問題を起こした訳でははない。これ以上、個人的な事情に他の方を巻き込むわけにはいかないから、ルームサービスの時に和解したい。私が出向く事で丸く収まると良いのだけれど……。
───ルームサービスの時間が間近に迫り、優月ちゃんと星野さんがやって来た。
「お疲れ様です。星野さんまでお越し頂き、有難う御座います」
「お疲れ様。今日はパーティーとかないからね、大丈夫だよ。それに支配人様にも頼まれてるからサポートさせて頂きます」
星野さんは変わらず笑顔が素敵な方だ。優月ちゃんは星野さんを諦めたと言っていたけれど、平常心は保っていて、普段通りに接していた。
「よし、頑張ります!」
優月ちゃんはパーティーの人手が足りない時などに星野さんの依頼により、レストランに出入りしているので、私よりもサービスは手慣れているかもしれない。
このホテルに来て、一年が立った。私達はお互いに成長し合えたと思っている。
客室のドアのチャイムを鳴らす前に深く深呼吸をする。
「失礼致します、御夕食の御準備をさせて下さいませ」
ドアを開けて、ついにルームサービスの時間が始まった。私はまず、テーブルにクロスを張り、グラスやシルバーを並べ始めた。幸田様は何も言わずに私達の行動を眺めていた。
「幸田様、御準備が整いました。こちらへお掛け下さいませ」
準備が整い、幸田様を御案内した。幸田様は「有難う、篠宮さん、中里さん」と言って席に着いた。
蓮実さんは、まさかの"君"付けだった。私達が驚いていると……「知らなかったかもしれないけど、一颯君…、支配人とレストランに居る星野蒼汰君は私の一つ下の後輩なの。貴方達を見ていると私達が20代の頃を思い出すわ」と感慨深い様子で教えてくれた。
蓮実さんは一颯さんの仕事の先輩!
「一颯君は鬼軍曹だとかって言われてるけど、表面に出さないだけで、社員一人一人の事を常に考えてくれている。夜警さんの名前や顔も全員覚えているし、支配人だから当たり前って思うかもしれないけれど、中々出来る事じゃないのよ。
暇が出来れば各部署を見回りに行って、社員の様子を伺ってる。仕事がキツイって言って辞めた人も居たけど、辞める時に一颯君の文句を言って辞めた人は居ないわね。辞める時にも一人一人と向かい合って話をしてるみたい」
蓮実さんにとっても一颯さんは大切な存在らしく、評価は絶大!話を聴き勧めると本店からこのホテルに移籍したのは、一颯さんに誘われたからだそうだ。
「しっかし、最近は一颯君も蒼汰君も飲みに誘っても振られっぱなしなんだ。このホテルに来てからは一回も行ってないわね。特定の彼女でも出来たのかしら?」
ギクリ。私の心臓が跳ね上がる。
「……さぁ?居るならお会いしてみたいですね、その特定の彼女さんに」
「今度聞いてみようかな?」
「聞いてみて下さい!どんな方なのか気になりますから!」
高見沢さんは真実を知っているくせに、興味本位で蓮実さんを煽る様な聞き方をしていた。蓮実さんもその気になって、今度聞いてみると言っていたけれど……実は目の前に居ます。一颯さん、何て答えるんだろう?気になるところではある。
蓮実さんとお話した後、二人揃って事務所を出た。
「蓮実さんって、大人な女性ですよね」
「……うん。本人には聞いた事ないけど、結婚して小学生の子供がいるらしいよ」
「え?お子さんがいらっしゃるのにあのスタイル…!」
蓮実さんの美貌は惚れ惚れしちゃう程に美しい!お子さんがいらっしゃるのに引き締まったウエストに細長い手足、幸薄そうな美人って言ったら失礼かもしれないけれど、そこがまた素敵なのです。
一颯さんの同僚の方々は本当に素敵な方ばかりで、恐縮してしまう部分もある。私も歳を重ねたら、あんなに素敵になれるのかな?
「間違っても、あんたが蓮実さんみたいにはなれないから」と言って、高見沢さんが笑う。そ、そんなに笑わなくても良いじゃない?
「あんたはあんたのままでいいんじゃない?彼氏もそれが御所望なんでしょ?」
「……そ、それはどうか分かりませんけど…」
「無理に背伸びしないで、きっと…そのままのあんたで良いんだよ」
私は一颯さんに合わせなくてはならない、と無理に背伸びをしようとしていた。高見沢さんは私達の関係は否定しようとするくせに、優しい言葉をかけてくれる時もある。
「あー、イチャイチャしてる!」
ラウンジ裏のパントリーで業務が来るまで待機していたら、吉沢さんが顔を出した。指をさされた私達は必死に否定をする。
「イチャイチャはしてないですよ、決して!」
「誰がイチャイチャしてんだよ?」
「してないのは知ってるよ~」と笑顔を振り撒き、「様子見の幸田様なんだけどね、ラウンジに御友人の予約も入ったの。卒業記念だって」と教えてくれた。
エグゼクティブラウンジは基本はエグゼクティブフロアに宿泊している方へのドリンクや軽食サービスを提供している。宿泊している方の御友人ならば、一定料金を支払えば利用も可能になる。
幸田様の宿泊目的が卒業記念だとしたなら、安心も出来るかもしれない。
「私や他のスタッフも気配りはするけど、他のお客様の御迷惑に成りかねない時は早めの判断をする事になったからね。一応、報告迄」
今の所、幸田様は問題を起こした訳でははない。これ以上、個人的な事情に他の方を巻き込むわけにはいかないから、ルームサービスの時に和解したい。私が出向く事で丸く収まると良いのだけれど……。
───ルームサービスの時間が間近に迫り、優月ちゃんと星野さんがやって来た。
「お疲れ様です。星野さんまでお越し頂き、有難う御座います」
「お疲れ様。今日はパーティーとかないからね、大丈夫だよ。それに支配人様にも頼まれてるからサポートさせて頂きます」
星野さんは変わらず笑顔が素敵な方だ。優月ちゃんは星野さんを諦めたと言っていたけれど、平常心は保っていて、普段通りに接していた。
「よし、頑張ります!」
優月ちゃんはパーティーの人手が足りない時などに星野さんの依頼により、レストランに出入りしているので、私よりもサービスは手慣れているかもしれない。
このホテルに来て、一年が立った。私達はお互いに成長し合えたと思っている。
客室のドアのチャイムを鳴らす前に深く深呼吸をする。
「失礼致します、御夕食の御準備をさせて下さいませ」
ドアを開けて、ついにルームサービスの時間が始まった。私はまず、テーブルにクロスを張り、グラスやシルバーを並べ始めた。幸田様は何も言わずに私達の行動を眺めていた。
「幸田様、御準備が整いました。こちらへお掛け下さいませ」
準備が整い、幸田様を御案内した。幸田様は「有難う、篠宮さん、中里さん」と言って席に着いた。
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