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社内恋愛の事情を知ってしまいました!
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一颯さんと一緒にベッドに入り、少しだけ雑談してたら、突然、返事が聞こえなくなった。
あれ?確かめてみる?って言ってた割には、いつの間にか寝息を立てて深い眠りについた一颯さんだった。
最近は片付けもままならぬ程に疲れていると言ってたから、ゆっくり眠らせてあげよう。
次の日の朝、先に目が覚めた私は朝食を用意しようと先にベッドから出ようとした。その時に腕を掴まれて「何時?」と聞かれたので「6時過ぎです」と答えた。
「……不覚にも寝落ちしてしまった」
「疲れているんですよ。ぐっすり眠れましたか?」
「久しぶりに熟睡したみたいで目覚めがすっきり」
「それは良かった!…って、手を離して下さい。もう朝食を用意しないと一颯さんが食べる時間がなくなっちゃうから!」
「有難う、未来の奥さん」
いきなり起きた一颯さんは唇にチュッとキスを落とした。未来の奥さんと言われて、顔が火照り始める。近い将来、そうなれたら嬉しいけれど。
「恵里奈は通い妻みたいだな」
「……たまにしか来ませんけどね」
「一緒に住んだらいーのに?」
「そう出来たら嬉しいですけど、今更、寮のアパートを出るのも不自然ですし、住所等の関係もありますし」
「そうだよな。残念だけど…結婚する日まで楽しみはとっておくよ」
いつもなら寝起きが良くない一颯さんだったが今日は本当に良く眠れたようで、ベッドから直ぐに起き出した。一颯さんが仕事に行く支度をしている間に簡単な朝食を作り、一緒に済ませた。その後に玄関先でお見送りをして、「行ってらっしゃい」のキスを交わす。この後が仕事だと思うと余韻に浸っている暇はないのだが、一連の流れが本当に新婚さんみたいで幸せいっぱい!
一颯さんのマンションを出て、一旦、アパートの寮まで戻り、支度をしてから出直す。朝から忙しくもあるが、幸せの代償だと思えば、苦ではない。
暖冬だと騒がれているので、外に出ても例年のようには寒くはない。 鼻にくるツンとした寒さも耳が痛くなるような寒さもない為、朝の一颯さんの温もりがまだ残っているような気さえした。
アパートの寮からホテルまでの道程、浮き足立っているように見えたらしく、通りがかった高見沢さんに注意を受けた。
「……あんたさぁ、顔が綻んでるし、分かりやす過ぎだから、もっと気を引き締めなさい!」
「お、おはよう御座います…高見沢さん」
高見沢さんからはほんのりと甘い香りが風と共に漂って来た。
「……柔軟剤?とても良い香りがします」
「マフラーから匂うんだよ!あの女にマフラー貸したら洗濯機で洗ったらしく、甘ったるい匂いがする!」
「あの女?……もしかして吉沢さん?」
「……そうだよ!帰り際に首元が寒いって言って、無理やり奪われただけ。貸した訳じゃないが、結果的には貸した事になっただけ」
吉沢さんが高見沢さんのマフラーを争奪し、洗濯して返したらしいけれど…何だかんだ言って二人は仲良しなんだよなぁ。
「あ、高見沢さんと吉沢さんって帰りが一緒になる事があるんですね。私はまちまちだから、誰とも合わなかったりですけど…」
「たまたまだよ、本当に、たまたま帰り際に会っただけ」
ムキになって否定する高見沢さんが可愛らしい。
「吉沢さんって小さくて、見かけはお人形さんみたいに目がパッチリしてて可愛いですよね~。彼氏の話とかした事ないですけど、いるのかな~?」
私は高見沢さんの反応が見たくて、つい意地悪を言ってしまう。
「………いるよ。リーマンの彼氏。一緒に居たのを見た事があるし、話も聞いてる」
「そうですか…」
私は聞いちゃいけない事を聞き、踏み込んではいけない場所に踏み込んでしまった。高見沢さんは何時になく、切なそうな顔をして答えた。
高見沢さんが絶対に吉沢さんを好きなのは知っているけれど、どうしてあげる事も出来ない。私は聞いた事がなかったけれど、彼氏が居たんだ。高見沢さんはどんな気持ちで好きな人の彼氏の話を聞いていたのだろう?考えれば考える程に悲しくなる。
「……あの女さ、彼氏に随分と泣かされてるのに、それでも離れようとしないんだ。女って何なんだろうな?」
「そんな時こそ、マフラーみたいに略奪しちゃえば良いじゃないですか!」
「……あんたさぁ、時々、とんでもない事言うよね」
呆れたように溜め息をつく高見沢さんに反論する。
「だって、今のままじゃ高見沢さんも吉沢さんも救われないです。略奪ってイケナイコトですが、吉沢さんが泣いてるなら、高見沢さんが幸せにしてあげたら良いと思います」
「そんな事したら、アイツはもっと泣くよ。正直言うと…前々からの知り合いで、大学の先輩後輩だから。彼氏はアイツと同い年」
私は何にも言えなくなった。高見沢さんと吉沢さんは大学の先輩後輩で、彼氏も知り合いで…。高見沢さんは何年間、片思いして来たのだろう?高見沢さんって案外、一途なんだなぁ。吉沢さんは高見沢さんの気持ちを知らずに彼氏の話をしているとしたら、知らない事がこんなにも残酷だなんて。
「早く結婚でもしちゃえって思ってるんだけど、彼氏が煮え切らない。あんな浮気性の彼氏、別れたらいい、よ…。いてっ!」
バシンッ!
いきなり、後ろから何かが高見沢さんの背中に当たったらしい。
「……バカッ!」
あれ?確かめてみる?って言ってた割には、いつの間にか寝息を立てて深い眠りについた一颯さんだった。
最近は片付けもままならぬ程に疲れていると言ってたから、ゆっくり眠らせてあげよう。
次の日の朝、先に目が覚めた私は朝食を用意しようと先にベッドから出ようとした。その時に腕を掴まれて「何時?」と聞かれたので「6時過ぎです」と答えた。
「……不覚にも寝落ちしてしまった」
「疲れているんですよ。ぐっすり眠れましたか?」
「久しぶりに熟睡したみたいで目覚めがすっきり」
「それは良かった!…って、手を離して下さい。もう朝食を用意しないと一颯さんが食べる時間がなくなっちゃうから!」
「有難う、未来の奥さん」
いきなり起きた一颯さんは唇にチュッとキスを落とした。未来の奥さんと言われて、顔が火照り始める。近い将来、そうなれたら嬉しいけれど。
「恵里奈は通い妻みたいだな」
「……たまにしか来ませんけどね」
「一緒に住んだらいーのに?」
「そう出来たら嬉しいですけど、今更、寮のアパートを出るのも不自然ですし、住所等の関係もありますし」
「そうだよな。残念だけど…結婚する日まで楽しみはとっておくよ」
いつもなら寝起きが良くない一颯さんだったが今日は本当に良く眠れたようで、ベッドから直ぐに起き出した。一颯さんが仕事に行く支度をしている間に簡単な朝食を作り、一緒に済ませた。その後に玄関先でお見送りをして、「行ってらっしゃい」のキスを交わす。この後が仕事だと思うと余韻に浸っている暇はないのだが、一連の流れが本当に新婚さんみたいで幸せいっぱい!
一颯さんのマンションを出て、一旦、アパートの寮まで戻り、支度をしてから出直す。朝から忙しくもあるが、幸せの代償だと思えば、苦ではない。
暖冬だと騒がれているので、外に出ても例年のようには寒くはない。 鼻にくるツンとした寒さも耳が痛くなるような寒さもない為、朝の一颯さんの温もりがまだ残っているような気さえした。
アパートの寮からホテルまでの道程、浮き足立っているように見えたらしく、通りがかった高見沢さんに注意を受けた。
「……あんたさぁ、顔が綻んでるし、分かりやす過ぎだから、もっと気を引き締めなさい!」
「お、おはよう御座います…高見沢さん」
高見沢さんからはほんのりと甘い香りが風と共に漂って来た。
「……柔軟剤?とても良い香りがします」
「マフラーから匂うんだよ!あの女にマフラー貸したら洗濯機で洗ったらしく、甘ったるい匂いがする!」
「あの女?……もしかして吉沢さん?」
「……そうだよ!帰り際に首元が寒いって言って、無理やり奪われただけ。貸した訳じゃないが、結果的には貸した事になっただけ」
吉沢さんが高見沢さんのマフラーを争奪し、洗濯して返したらしいけれど…何だかんだ言って二人は仲良しなんだよなぁ。
「あ、高見沢さんと吉沢さんって帰りが一緒になる事があるんですね。私はまちまちだから、誰とも合わなかったりですけど…」
「たまたまだよ、本当に、たまたま帰り際に会っただけ」
ムキになって否定する高見沢さんが可愛らしい。
「吉沢さんって小さくて、見かけはお人形さんみたいに目がパッチリしてて可愛いですよね~。彼氏の話とかした事ないですけど、いるのかな~?」
私は高見沢さんの反応が見たくて、つい意地悪を言ってしまう。
「………いるよ。リーマンの彼氏。一緒に居たのを見た事があるし、話も聞いてる」
「そうですか…」
私は聞いちゃいけない事を聞き、踏み込んではいけない場所に踏み込んでしまった。高見沢さんは何時になく、切なそうな顔をして答えた。
高見沢さんが絶対に吉沢さんを好きなのは知っているけれど、どうしてあげる事も出来ない。私は聞いた事がなかったけれど、彼氏が居たんだ。高見沢さんはどんな気持ちで好きな人の彼氏の話を聞いていたのだろう?考えれば考える程に悲しくなる。
「……あの女さ、彼氏に随分と泣かされてるのに、それでも離れようとしないんだ。女って何なんだろうな?」
「そんな時こそ、マフラーみたいに略奪しちゃえば良いじゃないですか!」
「……あんたさぁ、時々、とんでもない事言うよね」
呆れたように溜め息をつく高見沢さんに反論する。
「だって、今のままじゃ高見沢さんも吉沢さんも救われないです。略奪ってイケナイコトですが、吉沢さんが泣いてるなら、高見沢さんが幸せにしてあげたら良いと思います」
「そんな事したら、アイツはもっと泣くよ。正直言うと…前々からの知り合いで、大学の先輩後輩だから。彼氏はアイツと同い年」
私は何にも言えなくなった。高見沢さんと吉沢さんは大学の先輩後輩で、彼氏も知り合いで…。高見沢さんは何年間、片思いして来たのだろう?高見沢さんって案外、一途なんだなぁ。吉沢さんは高見沢さんの気持ちを知らずに彼氏の話をしているとしたら、知らない事がこんなにも残酷だなんて。
「早く結婚でもしちゃえって思ってるんだけど、彼氏が煮え切らない。あんな浮気性の彼氏、別れたらいい、よ…。いてっ!」
バシンッ!
いきなり、後ろから何かが高見沢さんの背中に当たったらしい。
「……バカッ!」
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