72 / 73
糖度MAX*楽観主義者のお姫様
6
しおりを挟む
*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚
「昨日は急な有給だったみたいだけど、どうしたの?体調悪かった?」
社員食堂でランチを食べながら、綾美が私に尋ねる。
「…大きな声では言えないけど、有澄が勝手に有給入れちゃって…。日曜日、有澄の誕生日だったから、沢山遊んで来たよ」
私はお弁当を包んであるランチクロスをほどきながら、返事をした。
「王子、やるねぇ。…だからかな?日下部さんは一日機嫌悪くて近付くなオーラ出してたよ」
確かに今日も朝から機嫌は悪かった。
呼び付けられる事はなく、今日も近付くなオーラが全開で出てる感じ。
「噂をすれば来たよ…」
ドンッと勢いよくトレーを置いたから、カップに注がれたスープがこぼれた。
「珍しいですね、ハンバーグランチって…」
いつもはだいたい魚が入っている定食だから、ハンバーグはかなり珍しい。
「まだ食べてないだろ?弁当と交換して」
「あっ、ちょっと!勝手に食べないでよっ」
返事もしてないのに勝手に交換して食べ始めている。
全く、何なの。
有り得ないでしょ…。
「お前、マンション買ってもらったのに住まないって正気か?」
「えぇ!?マンション!?王子が買ったの!?」
綾美には追追話す予定でいたのに、急に来てその話題を持ち出すのは違反でしょ!
何で会社内で話すの?
「有澄の祖父母が購入してくれたんだけど、高級なデザイナーズマンションで…住むのをためらってる…」
そう言った話の流れで、有澄の実家についてとか、差し障りのない程度に話したら、綾美が呆れてしまった。
「ゆかり、バカなの?」
花野井グループの御曹司のお嫁さんに行くのが怖いと言ったら、綾美が私に暴言を吐いた。
ご褒美にカフェに行く位で、高級品も欲しいと思った事がなくて、こじんまりした生活が好きだったからどうして良いのか分からないんだもん。
「いつもの楽観主義はどこ行ったの?いつもなら、"私頑張るね"とか、"次頑張ればいっか"とか適当な事を言ってるのに…この後に及んで、飛び込んで行かないとは!
王子はゆかりの事を一番に考えてるのに可哀想だよ。とりあえず、いつもの調子で飛び込んでみればいいじゃん!駄目だったらまた考える。それでいいよ」
綾美に怒られてしまった。
行動力が半端ない綾美が最近悩んでいた事はバイヤーになるか否かの事で、以前も彼氏と別れても深追いせずに次を探していた。
高橋さんは特別で、今までで一番に好きになった人だから真剣に悩んでいたんだと思う。
私も綾美の様に後押しして欲しかっただけなのかもしれない。
段々と大丈夫な気がしてきた。
「日下部さんが諦められないから早く結婚しちゃえーって、こないだ嘆いてたよ」
「余計な事を言うな」
「日下部さんの分も幸せにならなきゃね、ゆかり」
"こないだ"とは、有澄の実家でいただいたステーキ肉と白身魚を焼いて、家飲みした時の事だと思われる。
私も日下部さん本人に言われたけれど・・・。
綾美にまで嘆いていたとは、本当に好きになってくれてたんだと思い知る。
「…日下部さんって、本当に諦め悪いですね。そう言えば、お見合いはするんですか?」
「断った。寄って来る女は沢山いるから、俺からわざわざ行く必要がない」
「うわぁーっ、性格悪っ」
聞けば、都市銀の令嬢とお見合いの話が出ていたらしいのだが、断ったらしい。
日下部さんと綾美の話を聞きながら、笑う。
綾美に勇気づけてもらい、残りのお昼時間で副社長室に向かった。
誰にも会わないようにとドキドキしながらエレベーターに乗り込み、最上階で降りる。
来客中ではない事を確認して、副社長室の扉をノックする。
「どうぞ…って、どうしたの?」
私に気付いた有澄は立ち上がり、パソコンを打つ手を止めて私の方に近付く。
「あのね、有澄!私、花野井グループの為に頑張るから…有澄のお嫁さんになりたいです」
周りを見渡して誰もいないのを確認してから、勢いだけで言ってしまった。
有澄はあっけにとられてしまった様で、目を丸くする。
「ありがとう。でも、何で逆にプロポーズしてるの?そして、何で今なの?まぁ、いっけど…」
有澄はクスクスと微笑んで、ポケットから婚約指輪の箱を取り出した。
私の返事がいつ貰えても良いように、肌身離さずに持っていたらしい。
「秋葉 紫さん、俺と結婚して下さい」
改めて左手の薬指に指輪をはめてもらい、嬉しくて目元に涙が溜まる。
「…泣き虫」
「私こそ、有澄が誰かにとられたら嫌なの。今なら、有澄となら何だって乗り越えて行ける気がするよ。
だってほら、楽観主義者だから、私」
「ふふっ、そうだね」
私達はお互いの存在を確かめる様に抱きしめあう。
副社長室での秘密の密会。
職権乱用も、たまになら許されるでしょうか?
◆❖◇END◇❖◆
「昨日は急な有給だったみたいだけど、どうしたの?体調悪かった?」
社員食堂でランチを食べながら、綾美が私に尋ねる。
「…大きな声では言えないけど、有澄が勝手に有給入れちゃって…。日曜日、有澄の誕生日だったから、沢山遊んで来たよ」
私はお弁当を包んであるランチクロスをほどきながら、返事をした。
「王子、やるねぇ。…だからかな?日下部さんは一日機嫌悪くて近付くなオーラ出してたよ」
確かに今日も朝から機嫌は悪かった。
呼び付けられる事はなく、今日も近付くなオーラが全開で出てる感じ。
「噂をすれば来たよ…」
ドンッと勢いよくトレーを置いたから、カップに注がれたスープがこぼれた。
「珍しいですね、ハンバーグランチって…」
いつもはだいたい魚が入っている定食だから、ハンバーグはかなり珍しい。
「まだ食べてないだろ?弁当と交換して」
「あっ、ちょっと!勝手に食べないでよっ」
返事もしてないのに勝手に交換して食べ始めている。
全く、何なの。
有り得ないでしょ…。
「お前、マンション買ってもらったのに住まないって正気か?」
「えぇ!?マンション!?王子が買ったの!?」
綾美には追追話す予定でいたのに、急に来てその話題を持ち出すのは違反でしょ!
何で会社内で話すの?
「有澄の祖父母が購入してくれたんだけど、高級なデザイナーズマンションで…住むのをためらってる…」
そう言った話の流れで、有澄の実家についてとか、差し障りのない程度に話したら、綾美が呆れてしまった。
「ゆかり、バカなの?」
花野井グループの御曹司のお嫁さんに行くのが怖いと言ったら、綾美が私に暴言を吐いた。
ご褒美にカフェに行く位で、高級品も欲しいと思った事がなくて、こじんまりした生活が好きだったからどうして良いのか分からないんだもん。
「いつもの楽観主義はどこ行ったの?いつもなら、"私頑張るね"とか、"次頑張ればいっか"とか適当な事を言ってるのに…この後に及んで、飛び込んで行かないとは!
王子はゆかりの事を一番に考えてるのに可哀想だよ。とりあえず、いつもの調子で飛び込んでみればいいじゃん!駄目だったらまた考える。それでいいよ」
綾美に怒られてしまった。
行動力が半端ない綾美が最近悩んでいた事はバイヤーになるか否かの事で、以前も彼氏と別れても深追いせずに次を探していた。
高橋さんは特別で、今までで一番に好きになった人だから真剣に悩んでいたんだと思う。
私も綾美の様に後押しして欲しかっただけなのかもしれない。
段々と大丈夫な気がしてきた。
「日下部さんが諦められないから早く結婚しちゃえーって、こないだ嘆いてたよ」
「余計な事を言うな」
「日下部さんの分も幸せにならなきゃね、ゆかり」
"こないだ"とは、有澄の実家でいただいたステーキ肉と白身魚を焼いて、家飲みした時の事だと思われる。
私も日下部さん本人に言われたけれど・・・。
綾美にまで嘆いていたとは、本当に好きになってくれてたんだと思い知る。
「…日下部さんって、本当に諦め悪いですね。そう言えば、お見合いはするんですか?」
「断った。寄って来る女は沢山いるから、俺からわざわざ行く必要がない」
「うわぁーっ、性格悪っ」
聞けば、都市銀の令嬢とお見合いの話が出ていたらしいのだが、断ったらしい。
日下部さんと綾美の話を聞きながら、笑う。
綾美に勇気づけてもらい、残りのお昼時間で副社長室に向かった。
誰にも会わないようにとドキドキしながらエレベーターに乗り込み、最上階で降りる。
来客中ではない事を確認して、副社長室の扉をノックする。
「どうぞ…って、どうしたの?」
私に気付いた有澄は立ち上がり、パソコンを打つ手を止めて私の方に近付く。
「あのね、有澄!私、花野井グループの為に頑張るから…有澄のお嫁さんになりたいです」
周りを見渡して誰もいないのを確認してから、勢いだけで言ってしまった。
有澄はあっけにとられてしまった様で、目を丸くする。
「ありがとう。でも、何で逆にプロポーズしてるの?そして、何で今なの?まぁ、いっけど…」
有澄はクスクスと微笑んで、ポケットから婚約指輪の箱を取り出した。
私の返事がいつ貰えても良いように、肌身離さずに持っていたらしい。
「秋葉 紫さん、俺と結婚して下さい」
改めて左手の薬指に指輪をはめてもらい、嬉しくて目元に涙が溜まる。
「…泣き虫」
「私こそ、有澄が誰かにとられたら嫌なの。今なら、有澄となら何だって乗り越えて行ける気がするよ。
だってほら、楽観主義者だから、私」
「ふふっ、そうだね」
私達はお互いの存在を確かめる様に抱きしめあう。
副社長室での秘密の密会。
職権乱用も、たまになら許されるでしょうか?
◆❖◇END◇❖◆
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
クリスマスに咲くバラ
篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。
小さな恋のトライアングル
葉月 まい
恋愛
OL × 課長 × 保育園児
わちゃわちゃ・ラブラブ・バチバチの三角関係
人づき合いが苦手な真美は ある日近所の保育園から 男の子と手を繋いで現れた課長を見かけ 親子だと勘違いする 小さな男の子、岳を中心に 三人のちょっと不思議で ほんわか温かい 恋の三角関係が始まった
*✻:::✻*✻:::✻* 登場人物 *✻:::✻*✻:::✻*
望月 真美(25歳)… ITソリューション課 OL
五十嵐 潤(29歳)… ITソリューション課 課長
五十嵐 岳(4歳)… 潤の甥
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
Home, Sweet Home
茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。
亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。
☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる