糖度高めな秘密の密会はいかが?

桜井 響華

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糖度MAX*楽観主義者のお姫様

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月々の家賃だったり、購入するにも資金だったり、色々気になる事はあるけれど、私は一先ず素直な気持ちを伝えた。

「そっか。ゆかりは本当に高級志向に釣られないよね。そういうところも好きなんだけど…」

私達は夜景を見ながら立ち話をしていたが、有澄が広いフローリングの上に座ったので、私も腰を下ろして座る。

「こっちに座って…」

「……はい」

「素直で可愛い」

有澄の前に座り直すと、ぎゅっと後ろから抱きしめられ、頭を撫でられる。

今日は有澄の誕生日だから、言われるがまま、行動しようと決めている。

テーマパークでは私がはしゃぎ過ぎて失敗したので、今後は有澄の赴くままに過ごしたい。

「この部屋、誕生日プレゼントに貰った。…と言うか、こないだ実家に行った時に住む場所も決めてないと言ったら、祖父母に勝手に買われた」

「プ、プレゼントなの!?」

「皆、ゆかりの事が気に入ってるから、俺の為って言うよりは、厳密にはゆかりへのプレゼントだよ」

広いリビングキッチンの他に二部屋、広くて綺麗なバスルーム、ちょっとした書斎になりそうな余っているスペース、トイレも洗面所も洗練されたデザイン。

住人の公共の場所として、ラウンジやジムもある。

庶民の私には、この部屋がいくらぐらいするのか想像もつかない。

「許可も得ずに勝手に買ったり、自分達の会社の将来の為に相良や日下部さんまで巻き込んだり、破天荒過ぎて疲れるよね。破天荒よりも身勝手と言った方が正しいかな?」

私が返答に困っていると・・・

「この部屋も要らなくなったら売ればいいんだし、とりあえず住んじゃおうか?」

と言い出した。

私は、ただただ驚くばかりで何も言葉に出来なかった。

有澄と一緒に暮らしたいよ・・・でも、こんなに簡単に部屋まで用意して貰って良かったのかな?

「家具もキッチン周りのモノも買ってくれるんだって。日下部さんにもお嫁さんが来たらいずれマンション購入するつもりだって言ってたから、遠慮なくお願いしたらいいと思うよ。

日下部さんの事を隠していた罪滅ぼしをしたいんだろうから、させてあげて?」

有澄のアパートでの暮らしは1LDKだったけれど、毎日がとても楽しくて、有澄が御曹司だという事も忘れるぐらい。

今まで庶民的な生活を送って来た私にとって、財産がある人達の生活は未知の世界だった。

釣り合う様に頑張ろうと思ったけれど、現実をつき尽きられた感じがした。

「何で泣いてるの…?」

「怖くなって来たの」

「怖い…?」

「うん。有澄のお家は簡単にマンションなんて手に入るかもしれないけど…私はお嬢様でもないし、大卒でもないし、と、とにかく、相応しくないと思うの…」

想像したら怖くなった。

どんなに頑張っても、家柄の良いお嬢様にはなれないもの。

花野井グループの恥にでもなれば、有澄が私のせいで後ろ指を指される。

怖くて怖くて、涙が止まらなくなった。

有澄と一緒に居たいのに格差が邪魔をする。

「…ゆかりが傷つくと思ったから言わずにいようと思ってたけど、勝手に身辺調査されていて家柄も問題ないって言ってたよ。昨日、遅くなったのはマンションの件と身辺調査で揉めたから…」

「うぅ…身辺調査って、ドラマみたい…」

「泣いてんの笑ってんの、どっち?」

「………泣いてるのっ」

身辺調査ってドラマの世界みたいで、何だか笑ってしまった。

良かれと思って、お爺様が独断で私と家族の身辺調査をした事に対して、お祖母様と社長が激怒したらしい。

『貴方は婿養子の分際で、花野井家気取ってんじゃないわよ。ゆかりさんを私が気に入ってるんだから身辺調査なんて必要なかったのよ!』とお祖母様が激怒して、お爺様が深々と謝ったらしく、その時の出来事を話しながら有澄が笑っている。

やっぱり、花野井家は女性優位なんだなと思った。

「こないだから言ってるけど、ゆかりが嫌だったら花野井グループなんて捨てればいいよ。勿論、ここにも住まなくてもいい」

「…それも嫌っ」

「俺には二択しかないから、捨てるか継ぐかの二択。ゆかりと離れる選択肢はないから…どちらにしても、お嫁さんになって貰うんだけど…」

「…有澄、大好き。有澄の家族も勿論好き。でも、…」

「じゃあ、この話は保留ね。結論は急がなくてもいい。けど、…」

有澄がさり気なくポケットからハンカチを取り出して、私に手渡す。

その時に一緒に出したのか分からないが、何処からともなく出した指輪を私の左手の薬指にはめる。

「ゆかりは予約って事で」

「………!?」

「結婚するにも時間がかかりそうだし、その間に悪い虫が寄らないようにお守り。…何で、また泣いてるの?まったく泣き虫なんだから…!」

有澄は私の事を床に押し倒して、頬に流れた涙を手で拭くように優しく触れて、目元にキスをする。

目と目が合うと私は有澄の頬に手を伸ばし、キスをせがんだ。

「この続きは…帰ってからね」

有澄は手を差し伸べて、私の身体を起こす。

私達はマンションを出て薄明かりの中を歩く。

そう言えば夕飯を食べてない事に気付き、帰り途中に良さげのカフェを見つけたので立ち寄った。

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