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糖度12*決断すべき、お別れの時
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日下部さんの車は、車内の静粛性と制御装置を兼ね備えた五人乗りの今、人気のハイブリッド車。
後部座席にしようか、助手席にしようか迷っていると助手席の扉を開けてくれたので恐る恐る乗り込む。
「…お邪魔します」
仕事かもしれないけれど、日下部さんと車で二人きりってどうなの?
しかも、新車じゃないか・・・。
日下部さんの運転テクニックも気になるし、緊張し過ぎてシートベルトを握りしめる。
あれ?
いざ出発するとギスギス感がなく、スムーズな走行。
駐車場から公道に出ると穏やかな運転で乗り心地がとても良かった。
「日下部さん、今日は怖くないですよ。むしろ、快適です!」
窓から入る春風が気持ちよく、景色も落ち着いて眺めて居られる。
「もう一度、教習所で練習して来たから…って、練習の事は誰にも言うなよ」
「言いませんよ」
ずっとペーパードライバーだったから専用の講習を受けて来たらしく、新車も購入した模様。
車内に広がる新車の香りと爽やかな芳香剤の香りが混ざり合う。
この香り、好きだなぁ。
「ちょっとだけ時間あるから、ランチしよう」
「……はい」
通り道にあったファミレスに寄り、少し急ぎ足のランチタイム。
「珍しいな、紅茶を飲まないなんて…」
「訳あってカフェインレス生活です。たまには暖かいココアも美味しいですよ」
「食事しながら、甘いのを飲むなんて信じられない!」
そう言いつつ、私が気付かないとでも思っているのか、私のサラダにトマトをさり気なく置く。
「今だにトマトが嫌いなんですね」
「嫌いなんじゃなくて食べたくないだけ」
日下部さんはトマトが苦手らしく、いつも私に横流しするか、残す。
年上で口うるさい上司なのに、たまに見せる子供っぽいところのギャップは嫌いじゃない。
「煙草吸って来る」
日下部さんは早々とパスタセットを食べ終わり、喫煙所へと向かう。
私の目の前では吸わないけれど、社内でも喫煙所で良く見かける様になった。
今まではごくたまに吸っているだけだと思っていたが、吸う回数が増えてきた気がする。
戻って来た日下部さんはふんわりと煙草の移り香がした。
「最近、タバコの本数増えてませんか?」
「別に…お前には関係ない」
出たよ、お決まりのセリフ。
"お前には関係ない"───確かに私は彼女でもないし、関係がないのは分かっているけれど・・・。
煙草の本数が増えるのもストレスなのかな?
「食べ終わったら行くぞ。デザートは無しだ。帰りにまたどこか寄ってやるから」
「…けぇき食べたい…れす」
「食べながら話すな!」
時間が押し迫っで来たので私は急いでドリアを食べる。
まだ少し熱いドリアが口の中で広がり、舌が火傷した様な気がして少し涙目。
日下部さんはタブレットと睨めっこ。
またゲームの時間なんですね…。
「ほら、見て。完成予定図」
「わぁっ!?新しいお店ですか?」
「こないだ、お前が盗み見していた概要。車酔いしないんだったら車の中で見ていいよ」
盗み見とは人聞きが悪いが、それに近かったのは確か。
完成予想図らしき画像を目の前にパッと見せられて、また日下部さんの手元へしまわれた。
"お前には関係ない"って突っぱねて言ったくせに、今更また蒸し返すの?
やっぱり話すと言う事は、私には聞きたくない言葉が、状況が隠されている様でとてつもなく嫌な予感がした───・・・・・・
食事を済ませてファミレスを後にする。
打ち合わせ場所の会社に着くまでに私の手元に収められたタブレット。
「応援したいけど…日下部さんが部署から居なくなるの嫌です。佐藤さんも日下部さんも綾美も皆が居なくなるなら、私も連れて行って下さい!」
「バーカッ!主力戦力のお前が居なくなったら、いろはが成り立たなくなるだろ。人事についてはまだ決定ではないし、本社内に居るのは変わりはないから…」
「…本当ですか?…なら、我慢します」
「切り替えはやっ!」
先日見た通り、新規参入のショップで輸入雑貨を主にした衣食住に関するショップだった。
自社ブランドはシンプルなデザインがコンセプトで、いろは雑貨のターゲット層よりも上の年齢を狙っているらしい。
テーブルウェアの他にインテリアなども取り扱いするんだ・・・。
今までの部長の席には誰が座るんだろう?
女性をターゲットにしている雑貨なので、いろはの企画開発部の社員は女性が多かったので、日下部さんの前の部長は女性だった。
女性の部長が寿退社して、日下部さんが部長として就任した。
ペア商品もある為、男性は日下部さんを含めて3人居て、男性向けの判断材料となっている。
「…そう言えば、綾美は何も言ってくれないです」
「アイツは入社当時からバイヤーを希望してたんだけど、バイヤーと言っても今までは国内が主だったし、企画開発部に居たんだ。新規オープンのショップなら、国外に行けるバイヤーになれるから誘ったんだけど…」
「そっかぁ。綾美は旅行好きで英語話せるし合ってますね」
後部座席にしようか、助手席にしようか迷っていると助手席の扉を開けてくれたので恐る恐る乗り込む。
「…お邪魔します」
仕事かもしれないけれど、日下部さんと車で二人きりってどうなの?
しかも、新車じゃないか・・・。
日下部さんの運転テクニックも気になるし、緊張し過ぎてシートベルトを握りしめる。
あれ?
いざ出発するとギスギス感がなく、スムーズな走行。
駐車場から公道に出ると穏やかな運転で乗り心地がとても良かった。
「日下部さん、今日は怖くないですよ。むしろ、快適です!」
窓から入る春風が気持ちよく、景色も落ち着いて眺めて居られる。
「もう一度、教習所で練習して来たから…って、練習の事は誰にも言うなよ」
「言いませんよ」
ずっとペーパードライバーだったから専用の講習を受けて来たらしく、新車も購入した模様。
車内に広がる新車の香りと爽やかな芳香剤の香りが混ざり合う。
この香り、好きだなぁ。
「ちょっとだけ時間あるから、ランチしよう」
「……はい」
通り道にあったファミレスに寄り、少し急ぎ足のランチタイム。
「珍しいな、紅茶を飲まないなんて…」
「訳あってカフェインレス生活です。たまには暖かいココアも美味しいですよ」
「食事しながら、甘いのを飲むなんて信じられない!」
そう言いつつ、私が気付かないとでも思っているのか、私のサラダにトマトをさり気なく置く。
「今だにトマトが嫌いなんですね」
「嫌いなんじゃなくて食べたくないだけ」
日下部さんはトマトが苦手らしく、いつも私に横流しするか、残す。
年上で口うるさい上司なのに、たまに見せる子供っぽいところのギャップは嫌いじゃない。
「煙草吸って来る」
日下部さんは早々とパスタセットを食べ終わり、喫煙所へと向かう。
私の目の前では吸わないけれど、社内でも喫煙所で良く見かける様になった。
今まではごくたまに吸っているだけだと思っていたが、吸う回数が増えてきた気がする。
戻って来た日下部さんはふんわりと煙草の移り香がした。
「最近、タバコの本数増えてませんか?」
「別に…お前には関係ない」
出たよ、お決まりのセリフ。
"お前には関係ない"───確かに私は彼女でもないし、関係がないのは分かっているけれど・・・。
煙草の本数が増えるのもストレスなのかな?
「食べ終わったら行くぞ。デザートは無しだ。帰りにまたどこか寄ってやるから」
「…けぇき食べたい…れす」
「食べながら話すな!」
時間が押し迫っで来たので私は急いでドリアを食べる。
まだ少し熱いドリアが口の中で広がり、舌が火傷した様な気がして少し涙目。
日下部さんはタブレットと睨めっこ。
またゲームの時間なんですね…。
「ほら、見て。完成予定図」
「わぁっ!?新しいお店ですか?」
「こないだ、お前が盗み見していた概要。車酔いしないんだったら車の中で見ていいよ」
盗み見とは人聞きが悪いが、それに近かったのは確か。
完成予想図らしき画像を目の前にパッと見せられて、また日下部さんの手元へしまわれた。
"お前には関係ない"って突っぱねて言ったくせに、今更また蒸し返すの?
やっぱり話すと言う事は、私には聞きたくない言葉が、状況が隠されている様でとてつもなく嫌な予感がした───・・・・・・
食事を済ませてファミレスを後にする。
打ち合わせ場所の会社に着くまでに私の手元に収められたタブレット。
「応援したいけど…日下部さんが部署から居なくなるの嫌です。佐藤さんも日下部さんも綾美も皆が居なくなるなら、私も連れて行って下さい!」
「バーカッ!主力戦力のお前が居なくなったら、いろはが成り立たなくなるだろ。人事についてはまだ決定ではないし、本社内に居るのは変わりはないから…」
「…本当ですか?…なら、我慢します」
「切り替えはやっ!」
先日見た通り、新規参入のショップで輸入雑貨を主にした衣食住に関するショップだった。
自社ブランドはシンプルなデザインがコンセプトで、いろは雑貨のターゲット層よりも上の年齢を狙っているらしい。
テーブルウェアの他にインテリアなども取り扱いするんだ・・・。
今までの部長の席には誰が座るんだろう?
女性をターゲットにしている雑貨なので、いろはの企画開発部の社員は女性が多かったので、日下部さんの前の部長は女性だった。
女性の部長が寿退社して、日下部さんが部長として就任した。
ペア商品もある為、男性は日下部さんを含めて3人居て、男性向けの判断材料となっている。
「…そう言えば、綾美は何も言ってくれないです」
「アイツは入社当時からバイヤーを希望してたんだけど、バイヤーと言っても今までは国内が主だったし、企画開発部に居たんだ。新規オープンのショップなら、国外に行けるバイヤーになれるから誘ったんだけど…」
「そっかぁ。綾美は旅行好きで英語話せるし合ってますね」
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