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糖度9*傷だらけのウェルカムボード
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有澄は"副社長"と呼ばれる事があまり好きではないらしく、ちょっと怒らせてしまった。
彩羽コーポレーションは家族経営といっても、社長と副社長が身内なだけで他の役員は違う。
社長の決めた辞令に従っただけの有澄は、陰で若すぎるだの成り上がりだのと言う噂を囁かれている様なので精神的にもキツいのだと思う。
「有澄…温泉楽しみだね。露天風呂が海が見える絶景なんだって!部屋食初めてだから、どんな感じかな?」
暗雲が立ち込めて来たので話題を変えて、ゴールデンウィークに宿泊する温泉の話。
気づけば、あと何日かでゴールデンウィークになり指折り数えた方が早い。
「俺は客室の貸し切り風呂が一番楽しみなんだけど…。貸し切り風呂と部屋食なら、チェックアウトまでは外に出なくていいから、ずっとゆかりと一緒だね」
「うん、ずっと一緒だよ。湯船も何種類もあるんだって。日替わり風呂とか。早く行きたいね」
「いや、そうじゃなくて…。誰にも邪魔されずにゆかりを独占出来るって話」
「うん…、私も有澄を独占出来るね。家とはまた違うよね」
有澄は不機嫌そうに大きく溜息を1つ吐き、
「あーもぅ!ゆかりは鈍感だから…。仕事も家事もないから、ずっと抱き合っていられるねって話だったの。理解した?」
と言って私の方を上目遣いで見る。
「理解、したけど…。お風呂の中でするのは嫌い。のぼせるから…」
「なるべく気をつける」
有澄は最近、何かに焦っている様な、もしくは何かに怯えている様な気がする。
とにかく、独占欲が半端ない。
眠る時も必ず一緒の時間だし、私の方が遅ければ駅までお迎えに来てくれる。
「…もう少し落ち着いたら、引越ししようと思う。ゆかりも一緒に住もうね」
食器を片付けようとして重ねていたら、突然の一言に制止する。
「どうしたの、いきなり?」
「副社長様になったのに、いつまでも1LDKのアパートに住んでるんじゃ、ゆかりに申し訳ないし。ゆかりだって、2LDKの部屋に住んでるのに…」
副社長様って自分で言ってるし・・・。
「お給料に余裕が出てきたから二部屋のアパートに住んでるけど、実際は必要ないよ。最近はあんまり帰ってないから一部屋のアパートに引っ越そうかな?って思ってたから」
社会人3年めにして2LDKに引越ししてみたけれど、女の子がたまに泊まりに来るだけで、一人だと意味のない部屋になっていた。
平日は仕事ばっかりだから誰も来ないし、彼氏も居なかったし、物もそれ程ある訳でもなく・・・ハッキリ言って残りの一部屋は必要なかった。
「じゃあ決まりね!お互いに引越ししたかったんだったら、ちょうど良かったよね…って事でお風呂入ろ!」
食器を流し台まで運ぶと腕を掴まれた。
「片付けしてないっ」
「適当に洗浄機に放り込んでおけばいいよ。はい、終わり。行こっ」
私は一度、水で汚れを流してから食器洗浄機に入れないと嫌なタイプなんだけれど、有澄は『何のための洗浄機なの?』と言って、いつもそのまま入れてしまう。
男性だからか、有澄の性格なのか・・・。
「今日も一緒に入るの?…何も…しない?」
強引に連れて来られたお風呂場の脱衣場の前で立ち止まる。
「保証はしないけど…。もしかして、期待してる、とか?」
私の意見など無視して脱ぎ始める有澄。
「ちがっ…!?し、してないよ。恥ずかしいし、のぼせるから…嫌なの」
「ゆかり、可愛いすぎっ」
上半身裸の有澄が、顔に火照りを感じている私の額にキスをして、服を脱がし始める。
今日もまた流されて、有澄には逆らえない───・・・・・・
彩羽コーポレーションは家族経営といっても、社長と副社長が身内なだけで他の役員は違う。
社長の決めた辞令に従っただけの有澄は、陰で若すぎるだの成り上がりだのと言う噂を囁かれている様なので精神的にもキツいのだと思う。
「有澄…温泉楽しみだね。露天風呂が海が見える絶景なんだって!部屋食初めてだから、どんな感じかな?」
暗雲が立ち込めて来たので話題を変えて、ゴールデンウィークに宿泊する温泉の話。
気づけば、あと何日かでゴールデンウィークになり指折り数えた方が早い。
「俺は客室の貸し切り風呂が一番楽しみなんだけど…。貸し切り風呂と部屋食なら、チェックアウトまでは外に出なくていいから、ずっとゆかりと一緒だね」
「うん、ずっと一緒だよ。湯船も何種類もあるんだって。日替わり風呂とか。早く行きたいね」
「いや、そうじゃなくて…。誰にも邪魔されずにゆかりを独占出来るって話」
「うん…、私も有澄を独占出来るね。家とはまた違うよね」
有澄は不機嫌そうに大きく溜息を1つ吐き、
「あーもぅ!ゆかりは鈍感だから…。仕事も家事もないから、ずっと抱き合っていられるねって話だったの。理解した?」
と言って私の方を上目遣いで見る。
「理解、したけど…。お風呂の中でするのは嫌い。のぼせるから…」
「なるべく気をつける」
有澄は最近、何かに焦っている様な、もしくは何かに怯えている様な気がする。
とにかく、独占欲が半端ない。
眠る時も必ず一緒の時間だし、私の方が遅ければ駅までお迎えに来てくれる。
「…もう少し落ち着いたら、引越ししようと思う。ゆかりも一緒に住もうね」
食器を片付けようとして重ねていたら、突然の一言に制止する。
「どうしたの、いきなり?」
「副社長様になったのに、いつまでも1LDKのアパートに住んでるんじゃ、ゆかりに申し訳ないし。ゆかりだって、2LDKの部屋に住んでるのに…」
副社長様って自分で言ってるし・・・。
「お給料に余裕が出てきたから二部屋のアパートに住んでるけど、実際は必要ないよ。最近はあんまり帰ってないから一部屋のアパートに引っ越そうかな?って思ってたから」
社会人3年めにして2LDKに引越ししてみたけれど、女の子がたまに泊まりに来るだけで、一人だと意味のない部屋になっていた。
平日は仕事ばっかりだから誰も来ないし、彼氏も居なかったし、物もそれ程ある訳でもなく・・・ハッキリ言って残りの一部屋は必要なかった。
「じゃあ決まりね!お互いに引越ししたかったんだったら、ちょうど良かったよね…って事でお風呂入ろ!」
食器を流し台まで運ぶと腕を掴まれた。
「片付けしてないっ」
「適当に洗浄機に放り込んでおけばいいよ。はい、終わり。行こっ」
私は一度、水で汚れを流してから食器洗浄機に入れないと嫌なタイプなんだけれど、有澄は『何のための洗浄機なの?』と言って、いつもそのまま入れてしまう。
男性だからか、有澄の性格なのか・・・。
「今日も一緒に入るの?…何も…しない?」
強引に連れて来られたお風呂場の脱衣場の前で立ち止まる。
「保証はしないけど…。もしかして、期待してる、とか?」
私の意見など無視して脱ぎ始める有澄。
「ちがっ…!?し、してないよ。恥ずかしいし、のぼせるから…嫌なの」
「ゆかり、可愛いすぎっ」
上半身裸の有澄が、顔に火照りを感じている私の額にキスをして、服を脱がし始める。
今日もまた流されて、有澄には逆らえない───・・・・・・
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