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糖度9*傷だらけのウェルカムボード
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4月下旬、ゴールデンウィークを前にして、皆は浮き足立っている様です。
「彼氏と軽井沢に行くんだ」
「温泉行って来るよ」
とか、職場でも話し声が聞こえる。
私と有澄も旅行の計画は立てていて、温泉に一泊してくることにした。
「1月の有給で一人で関西方面の友達の所に行っちゃったから、GWはね、高橋君と旅行行く事にした」
「どこ行くの?」
「まだ決めてなくて…行き当たりばったり旅行にする」
綾美は1月に有給を使い旅行に行くと言って、関西に住んでいる友達に会いに行ったそうだ。
高橋さんは休めなかったらしく、ゴールデンウィークが初の二人での旅行になるらしい。
いつもなら計画的な綾美が行き当たりばったり旅行とは・・・珍しいかも?
「私も温泉に泊まりに行こうと思ってる」
「温泉もいいよね。でも、今からじゃ予約取れないよね?うーん…どこ行こうかな?」
日下部さんが外回りで席を外しているので、のびのびと話しながらの仕事中。
私もウェディング参入関係のデザインは全て終了したので、通常営業のデザインのみになり、仕事も自分のペースで出来る。
みどりの日と土曜日、日曜日が重なり、三連休になる。
最初の二日間で大規模なブライダルフェアが行われる為、"いろは"のウェディングの引き出物展示場所に飾る、ウェルカムボードを作成中。
ホテルのウェディング担当マネージャーに頼まれたので、四苦八苦しながら作業している。
当日の朝にウェルカムボードを持って、有澄と一緒に展示場所を見に行く予定。
「ゆかり、私が結婚する時が来たらウェルカムボードお願いね。青系が良いなぁ」
綾美がウェルカムボードを見ながら、飾り付けてある造花に手を触れる。
「もちろん喜んで作ります!綾美と私、どっちが先に結婚するかな?」
「お互いにそろそろ良い歳だけど、仕事も辞めたくないよね?」
「同意見…」
私も綾美も仕事が楽しいから、結婚して出産後も仕事を続けたい。
けれども、産後に戻って来ても今のポジションに居られるかどうか不安なのだ。
総務課や広告デザイン課などでは保育時間に合わせて出社と退社をしている社員が居ると聞いた事はあるけれど、実際のところは分からない。
その時が来たら、高橋さんに聞いてみよう。
「杉野、また出歩いてるし!」
「ぶ、部長!?いつの間に!?」
外回りから帰って来て、何も言わずにしれっと職場に入って来る日下部さん。
「あ、ありがとうございます…」
綾美を横目で睨みながら、お土産らしき物を無言で渡す。
中身はドーナツで企画開発部全員に行き届く分は入っていた。
外回りに行った時は、たまにお土産を買ってきてくれるけれど・・・ドーナツ屋さんと日下部さんって似合わないな。
「秋葉、一人で笑いこらえてるみたいだけど何?」
「だって、日下部さんが一人でドーナツ屋さんに入って買ってきてくれたのかな?って思ったらおかしくて!」
「確かに!笑える!」
会話が聞こえた人達も思わず笑う。
「さっさと仕事しろ!GWの休みがなくなるぞ!」
日下部さんはバツ悪そうにデスクに戻り、ドサッと勢い良く座る。
圧倒的な存在感を放つ日下部さんは、椅子に座った途端に皆が静まり返る。
「ゆかりちゃん、コレとコレ、どっちのデザインが好き?」
「私は右が好きです。柄がハッキリしていて可愛いです」
「実は私もこっちが好きなんだけど、踏み切れなかった!ありがとう」
私のデスクの隣は2年先輩の佐藤さん。
いつも穏やかで柔らかい雰囲気の先輩で、主にキッチンツールや浴室雑貨などを担当している。
大人可愛いデザインで売れ行きも好調、シリーズで揃えてるお客様もいると聞いた。
私の担当は主にポーチなどの小物雑貨、紙系のポストカードや便箋など平面な物が多い。
いつか私も担当してみたいデザインをしている、憧れの先輩なのだ。
「話変わるんだけど…私、今度、入籍するの」
「えぇー!?おめでとうござ…っ」
佐藤さんが小声で話してくれたのに、私は嬉しくて声が大きくなってしまい、口を手で塞がれた。
「秋葉、うるさい!お前は落ち着いて仕事が出来ないのか!」
「すみません…」
うるさいのは日下部さんだっ!
いちいち、私にばかり注意するな!
「つい嬉しくてすみません…」
「大丈夫だよ。私もいきなり言ってしまったから…。実はね、6月に挙式する事になったの。皆にはまだ言ってないんだけど…今日の帰りにでも話すね。それで、私にもウェルカムボードを作ってくれないかな?
本当はご好意で作って貰えるものでこっちから頼む物じゃないかもしれないけど、綾美ちゃんと同じで私もゆかりちゃんに作って欲しいの」
「わ、私で良いんですか?」
「私はゆかりちゃんのデザインが好きだから、ゆかりちゃんにお願いしたいのよ」
「私も佐藤さんのデザイン大好きです。両思いですね!」
「彼氏と軽井沢に行くんだ」
「温泉行って来るよ」
とか、職場でも話し声が聞こえる。
私と有澄も旅行の計画は立てていて、温泉に一泊してくることにした。
「1月の有給で一人で関西方面の友達の所に行っちゃったから、GWはね、高橋君と旅行行く事にした」
「どこ行くの?」
「まだ決めてなくて…行き当たりばったり旅行にする」
綾美は1月に有給を使い旅行に行くと言って、関西に住んでいる友達に会いに行ったそうだ。
高橋さんは休めなかったらしく、ゴールデンウィークが初の二人での旅行になるらしい。
いつもなら計画的な綾美が行き当たりばったり旅行とは・・・珍しいかも?
「私も温泉に泊まりに行こうと思ってる」
「温泉もいいよね。でも、今からじゃ予約取れないよね?うーん…どこ行こうかな?」
日下部さんが外回りで席を外しているので、のびのびと話しながらの仕事中。
私もウェディング参入関係のデザインは全て終了したので、通常営業のデザインのみになり、仕事も自分のペースで出来る。
みどりの日と土曜日、日曜日が重なり、三連休になる。
最初の二日間で大規模なブライダルフェアが行われる為、"いろは"のウェディングの引き出物展示場所に飾る、ウェルカムボードを作成中。
ホテルのウェディング担当マネージャーに頼まれたので、四苦八苦しながら作業している。
当日の朝にウェルカムボードを持って、有澄と一緒に展示場所を見に行く予定。
「ゆかり、私が結婚する時が来たらウェルカムボードお願いね。青系が良いなぁ」
綾美がウェルカムボードを見ながら、飾り付けてある造花に手を触れる。
「もちろん喜んで作ります!綾美と私、どっちが先に結婚するかな?」
「お互いにそろそろ良い歳だけど、仕事も辞めたくないよね?」
「同意見…」
私も綾美も仕事が楽しいから、結婚して出産後も仕事を続けたい。
けれども、産後に戻って来ても今のポジションに居られるかどうか不安なのだ。
総務課や広告デザイン課などでは保育時間に合わせて出社と退社をしている社員が居ると聞いた事はあるけれど、実際のところは分からない。
その時が来たら、高橋さんに聞いてみよう。
「杉野、また出歩いてるし!」
「ぶ、部長!?いつの間に!?」
外回りから帰って来て、何も言わずにしれっと職場に入って来る日下部さん。
「あ、ありがとうございます…」
綾美を横目で睨みながら、お土産らしき物を無言で渡す。
中身はドーナツで企画開発部全員に行き届く分は入っていた。
外回りに行った時は、たまにお土産を買ってきてくれるけれど・・・ドーナツ屋さんと日下部さんって似合わないな。
「秋葉、一人で笑いこらえてるみたいだけど何?」
「だって、日下部さんが一人でドーナツ屋さんに入って買ってきてくれたのかな?って思ったらおかしくて!」
「確かに!笑える!」
会話が聞こえた人達も思わず笑う。
「さっさと仕事しろ!GWの休みがなくなるぞ!」
日下部さんはバツ悪そうにデスクに戻り、ドサッと勢い良く座る。
圧倒的な存在感を放つ日下部さんは、椅子に座った途端に皆が静まり返る。
「ゆかりちゃん、コレとコレ、どっちのデザインが好き?」
「私は右が好きです。柄がハッキリしていて可愛いです」
「実は私もこっちが好きなんだけど、踏み切れなかった!ありがとう」
私のデスクの隣は2年先輩の佐藤さん。
いつも穏やかで柔らかい雰囲気の先輩で、主にキッチンツールや浴室雑貨などを担当している。
大人可愛いデザインで売れ行きも好調、シリーズで揃えてるお客様もいると聞いた。
私の担当は主にポーチなどの小物雑貨、紙系のポストカードや便箋など平面な物が多い。
いつか私も担当してみたいデザインをしている、憧れの先輩なのだ。
「話変わるんだけど…私、今度、入籍するの」
「えぇー!?おめでとうござ…っ」
佐藤さんが小声で話してくれたのに、私は嬉しくて声が大きくなってしまい、口を手で塞がれた。
「秋葉、うるさい!お前は落ち着いて仕事が出来ないのか!」
「すみません…」
うるさいのは日下部さんだっ!
いちいち、私にばかり注意するな!
「つい嬉しくてすみません…」
「大丈夫だよ。私もいきなり言ってしまったから…。実はね、6月に挙式する事になったの。皆にはまだ言ってないんだけど…今日の帰りにでも話すね。それで、私にもウェルカムボードを作ってくれないかな?
本当はご好意で作って貰えるものでこっちから頼む物じゃないかもしれないけど、綾美ちゃんと同じで私もゆかりちゃんに作って欲しいの」
「わ、私で良いんですか?」
「私はゆかりちゃんのデザインが好きだから、ゆかりちゃんにお願いしたいのよ」
「私も佐藤さんのデザイン大好きです。両思いですね!」
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