糖度高めな秘密の密会はいかが?

桜井 響華

文字の大きさ
上 下
32 / 73
糖度8*ハイスペック彼氏

しおりを挟む
今日から4月。

桜も散りはじめた中、新入社員が今日から出社して来た。

新入社員の歓迎会を来週に控え、社員達は気持ちがソワソワしている。

『広告部に入った子が可愛い』とか、
『歓迎会でもっと親密になりたい』とか、春らしく心躍る恋話も聞こえてくる。

そんな中、私も例外なく気持ちがソワソワしているのだ。

社員食堂の掲示板に"辞令"として、
【取締役副社長に花野井  有澄を任命する】とあった。

有澄が社長の息子だから、出来レースで当たり前のポジションを最初から獲得していたんだと思われる。

今まで副社長のポジションがあったのかどうかは定かではない。

現社長が有澄に会社を譲る為に副社長というポジションを用意したのかもしれないし・・・。

私は掲示板の前で立ち尽くしていた。

「…有澄って、ゆかりの彼氏だよね?でも名字が違う?」

「…うん、多分、有澄の事だね」

綾美が通りかかり、私に話かけるが衝撃的過ぎて上手く言葉が見つからない。

以前、系列の"いろはCafe"で働いていたのも、社内で会ったのも全ては副社長になる為。

そうだっ!

有澄の事を教えてくれた日下部さんは以前から辞令を知っていたのだろうか?・・・だとしても、何故、私と有澄の関係まで知っていたんだろうか?

「綾美…私、日下部さんに聞きたい事があるから先に戻るね!」

「えー?何いきなり?急用?」

「後から話すよ!」

日下部さんは食事交代中の留守番で企画開発部に居るハズ。

綾美を置き去りにして、私は急いで企画開発部へと向かう。

「日下部さんっ!」

日下部さんはデスクに座り、一人で仕事をしていた。

私は駆け寄った勢いでデスクを手のひらで思い切り叩き、怒られた。

「お前、うるさい!一体何なんだ!?」

「ねぇ日下部さん教えて下さい!」

今は日下部さん一人キリだから丁度良い。

思い切って、勢いのまま聞いてしまおう。

「日下部さんって何で香坂君を知ってたの?」

「………」

「ねぇってばっ!」

パソコン用のブルーライトカットの眼鏡をしながら仕事している日下部さん。

答えようとしないので、手を伸ばして外す。

「はぁっ…。教えたら、何かメリットある?」

渋々とパソコンを閉じて私の方を見てくれた。

「えと…飴ちゃんあげます」と言って、ポケットからフルーツのど飴を差し出したが却下。

「じゃあ何したら教えてくれるの?」

「…逆に聞くけど何してくれるの?」

真っ直ぐに目を見て話すから、私は咄嗟に目を反らした。

何してくれるの?って聞かれても困る。

「…社員食堂のランチ奢ります」
「却下」

「…じゃあランチに好きな物プラスします」
「却下」

「綾美と高橋さん連れて飲みに行きましょ。私持ちで!」
「却下」

思い付く事をことごとく却下されて、私は困り果てて苦し紛れに思いついた。

「…仕方ない!取って置きの切り札です!日下部さんの超怖い運転練習に付き合います!」

「超怖いって何だよ。まぁ、いいや、それで決まり」

「日下部さんに命預けるんですからね、何かあったら責任とってよね!」

「そうだな、責任とるよ」

「やだ、やっぱりやだ。責任取られるの怖い…」

根負けした様で日下部さんは笑ってる。

「俺の昼交代の時間になったら、誰にもバレない様に時間ずらして社食に来い」

「分かりました」

日下部さんとの話が終わったので再び社員食堂に戻ると綾美と高橋さんが二人で話をしていたので、邪魔しない様にその場を去った。

綾美と高橋さんの交際お試し期間は終了して、本当の彼氏彼女になったらしい。

社員食堂を出ようとした時に忘年会で同じテーブルだった女の子に会った。

「副社長の花野井さんって秋葉さんの彼氏ですよね?」

「…うん」

きっと掲示板を見て知ったのだろう。

忘年会で初めて会話をしただけで、今まで存在も知らなかった私の様な人の彼氏の話までも覚えているとは恐るべし。

4ヶ月も前の話なのに・・・。

「副社長になる前から付き合ってたみたいですけど、御曹司って知ってたから付き合ったんですか?きっとそのうち飽きられて浮気しそうじゃないですかぁ?」

何が言いたい?

「御曹司だなんて知らなかったんだよ。そうだね、私の方が年上だから仕方ないのかもね?」

「男はみーんな若い子がいいに決まってます。私、日下部さん狙ってるんです。協力してくれませんか?」

私に傷つける様な物言いをしたくせに頼み事までしてくるとは、本当に強者だ。

さぁ、どうやって切り抜けよう?

「日下部さんは企画開発部に一人で残ってますので行ってみたらいかがです?」

「えー!?一人で行きずらいから秋葉さん行きましょうよ~」

私の休憩時間を嫌味な会話で奪っただけではなく、付き合ってとはどれだけ図々しいんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

同居人以上恋人未満〜そんな2人にコウノトリがやってきた!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
小学生の頃からの腐れ縁のあいつと共同生活をしてるわたし。恋人当然の付き合いをしていたからコウノトリが間違えて来ちゃった!

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

処理中です...