29 / 73
糖度7*ちょっと遠出のお仕事
2
しおりを挟む
『全く、こいつらはいつもいつも…』とブツクサ言いながら、またもやゲームを始める。
紅茶を手に持ちながら、どんなゲームなのか覗いてみる。
指でなぞって消してモンスターを倒して、最後は形を合わせて消すのね・・・。
「お前、近い…!」
いつの間にか、身を乗り出し、接近し過ぎていたらしく日下部さんにデコピンされた。
「痛い…!ちょっと見てただけでしょ!」
「邪魔なんだよ!また、お前のせいでまたレア逃がした」
「自分が下手だからでしょ!」
「…だったら、お前がやってみな」
ポイッとタブレットを太ももの上に置かれて、背もたれのシートに左腕を回して、私を囲む。
日下部さんの方が至近距離だと思う。
見下ろされ、小屋に入れられた小動物の様に縮こまる。
操作方法が良く分からないが適当にいじってみよう。
「あ、、ゲームオーバー…」
やっぱり駄目じゃん、操作方法も分からないんじゃ太刀打ち出来ないよ。
「最後の1回だったのに!お前のせいで、体力回復までに2時間は要する事になったな」
「………」
私からタブレットを取り上げ、画面を消してからバックにしまう。
絶句。
日下部さんが妙に子供っぽい。
拗ねてる。
プライベートの日下部さんって、いつもこうなのか?
仕事中のガミガミうるさい部長ではない、"素"の日下部さんなんだろうか?
「日下部さんと秋葉さんて、仲良しですね」と言って高橋さんが微笑み、
「はたから見たらカレカノだよね」と綾美が後部座席を見て、ニヤニヤしながら言う。
日下部さんは頬杖をついて外の景色を眺めて、聞こえない振りをしている。
「く、日下部さんがムキになってるだけだし…」
「お前が下手くそなんだし!」
綾美の発言への返事に困り、お互いに苦し紛れな言い逃れをする。
私の心はモヤモヤしていて、紅茶を飲みながら外の景色を眺める。
日下部さんとは反対方向の景色。
これから私達は別な人と結婚したりして、反対方向の景色に歩んで行く事になるのだろう。
そうなった時に祝福出来るのだろうか?
友達の様な同期のままで居られるのだろうか?
「…難しいよね」
「何が?ゲームが?」
私は心の中の声をいつの間にか、外に漏らしていたらしく、その声を日下部さんが拾ってしまった。
「そ、そうです。ゲームがね、難しい!」と慌てて、話を合わせる。
「お前もやればいいじゃん。お前もやれば、モンスター交換とか体力回復のスターを送り合ったり出来るし。高橋も杉野もやってる」
・・・・・・この人達、一体、いつから一緒に始めたの?
普段、そんなのやってる暇あるの?
謎だ。
「私、やる暇ないもん」
「ゆかりはね、暇さえあればデザイン考えたりしてるもんね~」
「ソレもそうだけど…」
ゲームよりも、有澄との時間を大切にしたいから・・・。
一緒に居る時は沢山会話したいし、料理のレパートリーも増やしたいし、頭の中を有澄でいっぱいにしたい。
*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚
「あれ?こないだのホテルじゃないんですね?」
車から降りると、先日の忘年会会場になったホテルではなく別の場所に見えた。
見覚えのない景色だったので不思議には思っていたけれど、目的地は違った様だ。
「先日のホテルと同じ系列だが、こっちはリゾートホテル」
へぇ・・・どおりで高速にも乗ったし、海辺にも近いとは思った。
「今の今まで気づかないなんて…」
日下部さんは呆れ顔で私を見る。
「そこがゆかりの良いところだよ。たまに天然なところが好き」
綾美はフォローしてくれるが、行き先を知っていたのかが気になる。
「綾美は知っていたの?」
「うん、高橋君から聞いてたから知ってたよ」
「そっか…」
何故、私には誰も教えてくれなかったのだろう?・・・と思いながら、ブライダルフェアの会場へと向かった。
担当者を待っている間、窓から外を眺めているとチャペルが見えた。
都会の結婚式場のチャペルは建物の中にある場合も多いが、都会から少し離れたこのホテルはチャペルが外にある。
模擬挙式が行われているのか、チャペル付近が賑わっていた。
「お待たせ致しまして申し訳ございません。私はブライダル担当の小野と申します。本日はお越し頂きありがとうございます」
ブライダル担当の小野さんという30代前半だと思われる女性は、私達一人一人に名刺を渡して日下部さんも私達の紹介をした。
「右から杉野、高橋、デザイナーの秋葉です」
「あなたが"いろは"のデザイナーさんなのね。私は"いろは"の雑貨が大好きでつい集めちゃうんです。可愛らしい方が考えるとデザインも可愛くなるのね」
小野さんは私の右手を取り、軽く握って両手で覆いかぶす様に握手をした。
紅茶を手に持ちながら、どんなゲームなのか覗いてみる。
指でなぞって消してモンスターを倒して、最後は形を合わせて消すのね・・・。
「お前、近い…!」
いつの間にか、身を乗り出し、接近し過ぎていたらしく日下部さんにデコピンされた。
「痛い…!ちょっと見てただけでしょ!」
「邪魔なんだよ!また、お前のせいでまたレア逃がした」
「自分が下手だからでしょ!」
「…だったら、お前がやってみな」
ポイッとタブレットを太ももの上に置かれて、背もたれのシートに左腕を回して、私を囲む。
日下部さんの方が至近距離だと思う。
見下ろされ、小屋に入れられた小動物の様に縮こまる。
操作方法が良く分からないが適当にいじってみよう。
「あ、、ゲームオーバー…」
やっぱり駄目じゃん、操作方法も分からないんじゃ太刀打ち出来ないよ。
「最後の1回だったのに!お前のせいで、体力回復までに2時間は要する事になったな」
「………」
私からタブレットを取り上げ、画面を消してからバックにしまう。
絶句。
日下部さんが妙に子供っぽい。
拗ねてる。
プライベートの日下部さんって、いつもこうなのか?
仕事中のガミガミうるさい部長ではない、"素"の日下部さんなんだろうか?
「日下部さんと秋葉さんて、仲良しですね」と言って高橋さんが微笑み、
「はたから見たらカレカノだよね」と綾美が後部座席を見て、ニヤニヤしながら言う。
日下部さんは頬杖をついて外の景色を眺めて、聞こえない振りをしている。
「く、日下部さんがムキになってるだけだし…」
「お前が下手くそなんだし!」
綾美の発言への返事に困り、お互いに苦し紛れな言い逃れをする。
私の心はモヤモヤしていて、紅茶を飲みながら外の景色を眺める。
日下部さんとは反対方向の景色。
これから私達は別な人と結婚したりして、反対方向の景色に歩んで行く事になるのだろう。
そうなった時に祝福出来るのだろうか?
友達の様な同期のままで居られるのだろうか?
「…難しいよね」
「何が?ゲームが?」
私は心の中の声をいつの間にか、外に漏らしていたらしく、その声を日下部さんが拾ってしまった。
「そ、そうです。ゲームがね、難しい!」と慌てて、話を合わせる。
「お前もやればいいじゃん。お前もやれば、モンスター交換とか体力回復のスターを送り合ったり出来るし。高橋も杉野もやってる」
・・・・・・この人達、一体、いつから一緒に始めたの?
普段、そんなのやってる暇あるの?
謎だ。
「私、やる暇ないもん」
「ゆかりはね、暇さえあればデザイン考えたりしてるもんね~」
「ソレもそうだけど…」
ゲームよりも、有澄との時間を大切にしたいから・・・。
一緒に居る時は沢山会話したいし、料理のレパートリーも増やしたいし、頭の中を有澄でいっぱいにしたい。
*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚
「あれ?こないだのホテルじゃないんですね?」
車から降りると、先日の忘年会会場になったホテルではなく別の場所に見えた。
見覚えのない景色だったので不思議には思っていたけれど、目的地は違った様だ。
「先日のホテルと同じ系列だが、こっちはリゾートホテル」
へぇ・・・どおりで高速にも乗ったし、海辺にも近いとは思った。
「今の今まで気づかないなんて…」
日下部さんは呆れ顔で私を見る。
「そこがゆかりの良いところだよ。たまに天然なところが好き」
綾美はフォローしてくれるが、行き先を知っていたのかが気になる。
「綾美は知っていたの?」
「うん、高橋君から聞いてたから知ってたよ」
「そっか…」
何故、私には誰も教えてくれなかったのだろう?・・・と思いながら、ブライダルフェアの会場へと向かった。
担当者を待っている間、窓から外を眺めているとチャペルが見えた。
都会の結婚式場のチャペルは建物の中にある場合も多いが、都会から少し離れたこのホテルはチャペルが外にある。
模擬挙式が行われているのか、チャペル付近が賑わっていた。
「お待たせ致しまして申し訳ございません。私はブライダル担当の小野と申します。本日はお越し頂きありがとうございます」
ブライダル担当の小野さんという30代前半だと思われる女性は、私達一人一人に名刺を渡して日下部さんも私達の紹介をした。
「右から杉野、高橋、デザイナーの秋葉です」
「あなたが"いろは"のデザイナーさんなのね。私は"いろは"の雑貨が大好きでつい集めちゃうんです。可愛らしい方が考えるとデザインも可愛くなるのね」
小野さんは私の右手を取り、軽く握って両手で覆いかぶす様に握手をした。
1
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
Perverse
伊吹美香
恋愛
『高嶺の花』なんて立派なものじゃない
ただ一人の女として愛してほしいだけなの…
あなたはゆっくりと私の心に浸食してくる
触れ合う身体は熱いのに
あなたの心がわからない…
あなたは私に何を求めてるの?
私の気持ちはあなたに届いているの?
周りからは高嶺の花と呼ばれ本当の自分を出し切れずに悩んでいる女
三崎結菜
×
口も態度も悪いが営業成績No.1で結菜を振り回す冷たい同期男
柴垣義人
大人オフィスラブ
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
クリスマスに咲くバラ
篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。

甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる