糖度高めな秘密の密会はいかが?

桜井 響華

文字の大きさ
上 下
22 / 73
糖度5*忘年会には危険がいっぱい!?

しおりを挟む
「ふ、二股なんてしないって言うか、してないけど…。日下部さんの事を考えると最近…心がザワザワする…」

慌てながら否定するが、日下部さんの下りはだんだんと小さい声になっていった。

綾美は一瞬、目を丸くした様にみえたけれど、優しく微笑んでカクテルを私に手渡す。

「はい、甘いカクテルだから、ゆかりも飲めるよ」

「ありがと…」

日下部さんへの気持ちに対する綾美からの返事はなかった。

綾美なりに私の微妙な気持ちを察してくれたのだと思う。

これ以上、詮索しないのも綾美の思いやりだ。

「二人はここに居たんですね」

「あ、高橋君。どうしたの?パシリ?」

二人でカクテルを飲んでいたら、後ろから高橋さんがトレーに沢山のグラスを持ってバーカウンターへと現れた。

「うちの部長達、飲みすぎですよ。通りかかる度に呼び止められて…。日下部さんまで混ざってるし…どうにかして下さい!!」

総務部の上司におまけの日下部さん、その組み合わせは高橋さんにとって最強らしく、断れずに弱気になっている様だ。

「焼酎のボトル貰えないか聞いてみたら?オジサン達に構ってたら自分が楽しめないから、ボトル置いてきて勝手にやれって言えばいいのに!」

対して綾美は強気な態度で高橋さんに上から目線で注意する。

「いや、それは…」
「高橋さんには出来ないんじゃないかな…。ほら、上司だし。綾美なら出来そうな気もするけど…」

私達はオドオドしていると、綾美が焼酎のボトル、氷の入ったアイスペール、水のペットボトルを手に入れてオジサン達(オジサンと言っても、うちの会社は比較的若い社員が多いから40代)の所に向かう。

「お疲れ様です!焼酎です」

席に着くなりドンッと勢い良く焼酎のボトルを置く綾美、恐る恐る氷と水を置く高橋さん。

「綾美ちゃん、お疲れ様ね」
「一緒に飲もうよ~」
「綾美ちゃん、作ってくれる?」

「作りません!」

綾美は華があり、目立つから社内で知らない人は居ないと思う。

見る限り、この人達、クジ引きで決めた席順とか関係なく集まって座ってるから、この席の人達は可愛そうだな・・・と思いながら、少し離れている場所にいると、

「綾美ちゃん、怖いなぁ。ゆりちゃん隠れてないでこっちおいで!」
「綾美ちゃんより秋葉ちゃんの方が優しいよなぁ。俺、好みなんだよなぁ」
と手招きされた。

「ゆりちゃんじゃなくて、ゆかりね。名前間違えたから駄目です!それに私は彼氏にしか優しくしないって決めてるんです!」

売り言葉に買い言葉で綾美が受け答えしていくと、

「誰なんだ、そいつは。社内の奴なの?」
「ここに居るなら連れておいで。品定めするから」

と総務部の上司達が騒ぎ立てる。

話を聞いていた高橋さんは顔が真っ赤になっている。

クリスマスに食事してから"お試し期間"として仮の彼氏彼女の関係だ、と綾美が言っていた。

「居るじゃないですか、そこに!」

綾美は隠す事はせずに指を指して答えたのだが、上司達は酔っていて指の指す方向など見てはいない。

「まさか、日下部か?」
「日下部なら安泰じゃない。合格!」

上司達が盛り上がる中、キッパリと

「違います、高橋君です」

と綾美は言った。

一瞬、静かになった上司達だが、再び歓声が上がる。

「高橋、俺達の綾美ちゃんに何やってんだよ!」
「お前は来年からは残業倍増だ」

総務部のマスコット的存在な高橋さんは皆からいじられている。

そんな場面を見ながら私も笑っていたら、日下部さんと目が合った。

表情が固まってしまい、目線をずらした。

何やってるんだろう、私。

まるで意識してるみたいな行為。

普通にしてた方が私も日下部さんも楽に居られるのに───・・・・・・

「皆さん、お疲れ様です。こちらのテーブルは盛り上がっていて楽しそうね」

「お、お疲れ様です」
「社長、お疲れ様です」

彩美と高橋さんの話題で盛り上がっていたら、社長が秘書と一緒に巡回に来た。

社長が来たとなると、上司達も一瞬で目が覚めたかの様に一同起立して挨拶をする。

年に一度の無礼講なアピールタイムに上司達は必死である。

社長が来たことにより、違う場所に行くチャンスを逃してしまい、上司達の話に愛想笑いを浮かべる。

一人一人の話を聞いていき、残りは綾美と私になった。

「企画開発部の秋葉さんと杉野さんね。杉野さんの分析力は素晴らしいと聞いているわ。これからも情報の収集と分析に力を入れて、良い商品を開発して行きましょうね」

企画開発部には、マーケットリサーチが不可欠で営業マンと一緒に店舗に出向く事もあれば、今後の流行などの情報収集、分析力が欠かせない。

既存の商品を改良するよりも、新製品を開発する方が遥かに大変でより高精度な収集力、分析力が必要になる為、綾美は即戦力なのだ。

「ありがとうございます。これからも頑張ります!」

お礼を伝えて社長と握手をする綾美。

「秋葉さん、お疲れ様です。今度のウェディング参入は秋葉さんのデザインにかかっていると言っても二言はないわ。大好きなのよ、秋葉さんのデザイン。私の独断で選ばせて貰ったの。ウェディング関係の仕上がりがとても楽しみ。これからもよろしくね」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

クールな御曹司の溺愛ペットになりました

あさの紅茶
恋愛
旧題:クールな御曹司の溺愛ペット やばい、やばい、やばい。 非常にやばい。 片山千咲(22) 大学を卒業後、未だ就職決まらず。 「もー、夏菜の会社で雇ってよぉ」 親友の夏菜に泣きつくも、呆れられるばかり。 なのに……。 「就職先が決まらないらしいな。だったら俺の手伝いをしないか?」 塚本一成(27) 夏菜のお兄さんからのまさかの打診。 高校生の時、一成さんに告白して玉砕している私。 いや、それはちょっと……と遠慮していたんだけど、親からのプレッシャーに負けて働くことに。 とっくに気持ちの整理はできているはずだったのに、一成さんの大人の魅力にあてられてドキドキが止まらない……。 ********** このお話は他のサイトにも掲載しています

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

会社の後輩が諦めてくれません

碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。 彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。 亀じゃなくて良かったな・・ と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。 結は吾郎が何度振っても諦めない。 むしろ、変に条件を出してくる。 誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。

処理中です...