糖度高めな秘密の密会はいかが？

糖度１＊会議の後のお疲れ様ディナー

２

知る人ぞ知る事だが、会議中、この人の発言により社員が凍りつく時もある。

的確と言えば的確だが、一言一言が重くのしかかる。

妥協しないのは分かるけれど、言い方がキツいんだよなぁ･･･。

そんな一面を知らずに持て囃す女子達がある意味、羨ましい。

「お疲れ様です。何しにコチラへ？」

「隣の雑貨屋の売り場を見に来た。企画物の売れ行きとか、気になって。ハロウィン物は話題性はあるが売れ残り凄そうだな」

お疲れ様会を一人でしているっていうのに、この男はしれっと仕事の話を持ち出してきた。

タイムカードに退勤押してますけど！

仕事の延長の話はしたくないんですけど！

「外回りしながらビールなんて、役職ついてる方のお仕事は最高ですね」

「バーカッ！今日はノー残業デーだから退勤押してきて、もう帰るだけだからっ」

「そんなにムキにならなくてもいーでしょっ」

二年間通学の専門学校卒で入社した私と四大卒の日下部さん。

私の方が二歳年下だけれど、同期入社な為についついタメ口になっている。

マーケティング本部に所属する企画開発部などの部署には一年間の研修期間があり、各店舗で接客のノウハウや商品知識を学んでからの本社の希望部署への配属となる。

通常一年間の店舗研修となるのだが、日下部は三ヶ月という異例のスピードで本社に配属になっている。

接客が苦手でお客様とトラブルになったという噂もあれば、日下部の希望部署のお偉いさんに気に入られていたので、異例のスピードで配属になったという噂もあるが、本当の事は良く分からない。

とにかく今は、同期のクセにガミガミうるさい部長になっていて私の上司というのが真実。

「何か飲む？」

「え？」

「カクテルで良い？お前、確か甘いのが好きだったよな」

「いやいや、いらないよ。この後、用事あるから」

日下部め、何で勝手に割り込んで来て、私の邪魔をするんだ。

メニューを眺めてフード系を頼もうとしているけれど、私は長居する気もないし、香坂君の仕事が終わったら一緒に出かける約束しているんだから。

香坂君が仕事終わる前に化粧直ししたり、身だしなみをもう一度確認したいんだから！

「日下部さん、せっかく残業ないんだから早く帰って彼女の所に行ってあげたら？」

「今は特定の女なんて居ない」

今は居ないのか･･･。

彼女の件は、直接日下部さんに聞いた訳ではなく、二週間前辺りに事務の女の子が噂しているのを聞いただけ。

彼女が出来ても長続きしないらしい。

つき合いが持たないのは、日下部さんの性格が悪いから(キツいから)だと私は解釈している。

「俺の事より、自分こそ男っ気ないけど大丈夫？」

「か、関係ないでしょ！日下部さんが知らないだけで男っ気ありますからっ」

日下部さんがからかう様に聞いてきたから、売り言葉に買い言葉で答えたけれど、入社してからは仕事が楽しくてしょうがなくて、専門学校の同級生だった彼氏とも別れた。

彼氏と別れてから、香坂君と会うまでは本当に男っ気から遠ざかっていた。

香坂君との恋のチャンスは大事にしたいなぁ･･･と思っているけれど、香坂君は今年、大学卒業したばかりの年下君なんだよね。

私も25歳だし、結婚も考えなきゃいけない時期かな？とは思っている。