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二章 緑の貴婦人の館
十九 新しい雇用先?
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アシュレイ様にここに置けないと言われて、あまりのことにショックを受けていた。
そのためアシュレイ様から言われても何も考えられなくなってしまった。
「代わりに領地を治める手伝いをして欲しい」
――え? それはどういうことなのかしら。 でも、ここで断ると修道院に戻されるかもしれない。私はただ人形のように何度も肯くだけだった。
するとアシュレイ様は私が肯いた途端に嬉々とした表情で自分を抱き締めてきたのだった。
いい加減にして欲しいと抗議しようとしたらその口を塞がれてしまった。
泉の時より深く蕩けるようなキスは初めてでどうしたらいいのか、思わずアシュレイ様にしがみついてしまった。
そして、アシュレイ様の大きくて男らしい体に包まれると途方にくれるような気持ちと自分に家はないけど家にたどり着いたようなほっとした気分になっていた。
そのときノックと共にメロウ夫人がドアを開け放った。
「んまあ、なんてことでしょう」
慌ててアシュレイ様が離してくれたけれど恥ずかしいやら気まずいやらどうしていいのか分からなかった。
修道院ではこのようなときにどうしたら良いのか教えられなかった。
ここに来たときあまりの常識のなさにロタさんとメロウ夫人がいろいろと教えてくださったのだ。
それでも良く分かっていない。貞節を重んじる修道院で男女のことなど教えれくれるはずもなく。
修道院ではまず男性と接触することもなかっから。
布教活動も大方が未亡人になって院に入ってきた人が主にしていた。だから私は外に出ることも皆無だったのだ。あの時は例外中の例外だった。
だけどあの院長になってからいろいろ扱いが変わってきた。きっとそれには何らかの思惑があったのかもしれない。
私は修道院で育ったということで世間的なモノには疎いけれど人から寄せられる感情にはそう鈍感なほうではないつもりだった。
あるときを境に院長が自分に向ける視線がただならぬものに変わったことに気がついた。
だから、私は薬草小屋で過ごしたり人目が多いところで作業したりといろいろ工夫してきたつもりだった。毒などはこちらが専門家だ。自分に盛られても判別することができるので盛られても見抜けるだろう。
「それでリリーは承諾したのかしら? 本人の意思を尊重しないとね」
「ええ、伯母上、リリーは私について来てくれると言っております。快く承諾してくれました。だから伯母上も安心してください」
アシュレイ様が私の方を見て促したので私も我に返った。
「まあ、そうなのね。リリーはどうなの?」
「アシュレイ様仰る通りです」
「まあ、そうなのね。分かりました。じゃあ、急いでリリーの支度をいたしましょう」
「ええ、お願いします。明日にでもここを立ちます」
「明日ですって? それは早すぎますよ」
私の代わりにメロウ夫人がアシュレイ様に抗議の声を上げてくれた。
「ですが、伯母上、私はそろそろ領地に戻りたいのです。もう王とその貴族とのやり取りに嫌気がさしていて」
「まあ、それは仕方が無いわね。分かりました。なるべく早くと言いたいところですが、ここを立つ前にこれの始末をしていらっしゃい。それがあなた達のためでもあります。こことリリーと立つのはそれからです。私も助力を惜しみません」
そう言ってメロウ夫人は布の包みをアシュレイ様に差し出した。
「これは……」
「我が領地の教会は既に買収済みです。しっかりなさい」
アシュレイ様は布の中身と私を交互に見遣ると神妙な面持ちで肯いていた。
「では早速手筈を整えてきます。それまでリリーをお願いします」
そのためアシュレイ様から言われても何も考えられなくなってしまった。
「代わりに領地を治める手伝いをして欲しい」
――え? それはどういうことなのかしら。 でも、ここで断ると修道院に戻されるかもしれない。私はただ人形のように何度も肯くだけだった。
するとアシュレイ様は私が肯いた途端に嬉々とした表情で自分を抱き締めてきたのだった。
いい加減にして欲しいと抗議しようとしたらその口を塞がれてしまった。
泉の時より深く蕩けるようなキスは初めてでどうしたらいいのか、思わずアシュレイ様にしがみついてしまった。
そして、アシュレイ様の大きくて男らしい体に包まれると途方にくれるような気持ちと自分に家はないけど家にたどり着いたようなほっとした気分になっていた。
そのときノックと共にメロウ夫人がドアを開け放った。
「んまあ、なんてことでしょう」
慌ててアシュレイ様が離してくれたけれど恥ずかしいやら気まずいやらどうしていいのか分からなかった。
修道院ではこのようなときにどうしたら良いのか教えられなかった。
ここに来たときあまりの常識のなさにロタさんとメロウ夫人がいろいろと教えてくださったのだ。
それでも良く分かっていない。貞節を重んじる修道院で男女のことなど教えれくれるはずもなく。
修道院ではまず男性と接触することもなかっから。
布教活動も大方が未亡人になって院に入ってきた人が主にしていた。だから私は外に出ることも皆無だったのだ。あの時は例外中の例外だった。
だけどあの院長になってからいろいろ扱いが変わってきた。きっとそれには何らかの思惑があったのかもしれない。
私は修道院で育ったということで世間的なモノには疎いけれど人から寄せられる感情にはそう鈍感なほうではないつもりだった。
あるときを境に院長が自分に向ける視線がただならぬものに変わったことに気がついた。
だから、私は薬草小屋で過ごしたり人目が多いところで作業したりといろいろ工夫してきたつもりだった。毒などはこちらが専門家だ。自分に盛られても判別することができるので盛られても見抜けるだろう。
「それでリリーは承諾したのかしら? 本人の意思を尊重しないとね」
「ええ、伯母上、リリーは私について来てくれると言っております。快く承諾してくれました。だから伯母上も安心してください」
アシュレイ様が私の方を見て促したので私も我に返った。
「まあ、そうなのね。リリーはどうなの?」
「アシュレイ様仰る通りです」
「まあ、そうなのね。分かりました。じゃあ、急いでリリーの支度をいたしましょう」
「ええ、お願いします。明日にでもここを立ちます」
「明日ですって? それは早すぎますよ」
私の代わりにメロウ夫人がアシュレイ様に抗議の声を上げてくれた。
「ですが、伯母上、私はそろそろ領地に戻りたいのです。もう王とその貴族とのやり取りに嫌気がさしていて」
「まあ、それは仕方が無いわね。分かりました。なるべく早くと言いたいところですが、ここを立つ前にこれの始末をしていらっしゃい。それがあなた達のためでもあります。こことリリーと立つのはそれからです。私も助力を惜しみません」
そう言ってメロウ夫人は布の包みをアシュレイ様に差し出した。
「これは……」
「我が領地の教会は既に買収済みです。しっかりなさい」
アシュレイ様は布の中身と私を交互に見遣ると神妙な面持ちで肯いていた。
「では早速手筈を整えてきます。それまでリリーをお願いします」
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