完【R15】盗賊騎士と愛を知らない修道女

えとう蜜夏☆コミカライズ中

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二章 緑の貴婦人の館

十八 思惑の相違(アシュレイ視点で進行)

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 アシュレイは、自分の言葉に怯えたように青ざめるリリーを見つめていた。

 最初のあの修道院での出会いと洞窟での、そして現在の二人の状況は……。

 ガリガリで案山子のような風貌がここまで変わるとはアシュレイ自身がまだ信じられない気分だった。

 目の前のリリーの艶やかな銀髪と澄んだエメラルドの瞳は今まで見たどの女よりも美しくアシュレイの目を釘付けにしていた。

 自分が触れると折れそうにか細い体つきも、保護欲を掻き立てられてしまう。

 実際、触れてみるとそれなりに女らしい体つきでもあり、アシュレイはつい先ほどの裸体を思い出して自分の体が反応しかけたため、慌てて頭から彼女のその姿を追い払った。

 そもそも彼女には助けてもらった恩がある。盗賊に対しても毅然として頭を上げていた気の強さと逃げるときに見せたあの炎の中で自分にその意義を問う姿勢も自分にとって嫌ではなかった。

 寧ろ好感を持つほどだった。そして、先程自分の背中越しに悪態をつく子どものようなところも自分で言うのもなんだが、今や英雄と称えられている自分にそんなことをする者などいなくてつい笑ってしまった。あんなふうに笑うのも久しぶりだったように思う。

 自分は一体彼女をどうしたいのか。自分がここまで気持ちを動かされる女は初めてだった。

 手当をしてもらった彼女の治療は的確で見事なものだった。彼女を自分の側に置くというのは良い考えかもしれない。どんな理由を言い訳にしても自分の中で答えはとうに出ていた。はっきり言ってもう他の女はもうどうでもいい。

 それに彼女を手に入れると自分に勧められている煩わしい結婚話もピリオドが打てる。

 正直彼女に決められた男がいても自分は諦められないかもしれない。修道女だからそんなことはないだろうと思いたいが、この半年という時間があったのだから分からない。

 ただ、彼女自身については先程信じられないことを叔母上から聞いた。

 謎は女を美しくするのよと普段から訳の分からないことを言う叔母だが嘘を言うような人ではない。

 それは生まれたときからの付き合いで分かっている。叔母はその辺の部下よりよっぽど気が回るし、男にしたいくらいの気風の良さも兼ね備えているので、今でも自分はいろいろ相談にのってもらっているのだ。

 彼女に自分の気持ちを拒否されようが構わず、無理やりにでも自分の側におきたいとさえ思う気持ちもある。私はそんな獰猛で逸る気持ちを押さえながら続けた。

「ここは叔母上の館で手狭だから、君にはもっと広い、できれば私と一緒に領地を治めるのを手伝ってもらいたい」

 つい遠まわしに言ってしまったのも、彼女に嘲笑され拒否されるのが怖く、どうとでも言い逃れできそうなものになってしまった。プロポーズの言葉をもっと考えておくべきだったか。

 祈るような気持ちで私は彼女の返事を待っていた。やっと気の抜けたかのように彼女は肯いてくれた。

 彼女にとってこんな武骨な男は嫌なのだろうが構わない。嫌な男でもあの修道院よりましなのだろう。彼女があれほど嫌がっていたから何かあるのだろう。でもそれで彼女が手に入るならかまわない。

 私は踊り出さんばかりに浮き足立ってしまい彼女をきつく抱きしめてその唇に誓いのつもりでキスをした。
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