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二章 緑の貴婦人の館
十五 再会
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私は沈みかけた自分の体を誰かに力強く掴まれたことが分かり、気が付けば岸辺に押し上げられていた。
「大丈夫か?!」
盛大に咳き込む自分の背中を誰かが撫でている。そのとき自分が裸なのに気がついたがどうしようもなかった。
大丈夫だと言いたいが咳が止まらない。
男は黙って背中を撫で続けてくれた。
ようやく咳が止まってお礼を言おうとその人を見遣ると、忘れもしないアシュレイその人であった。
「あなたは人間か?」
アシュレイは自分を見つめたまま何かを確認するかのようにそう言った。
この人は何を聞いてくるのだろう? 私また咳き込みだした合間にそう思った。
……案山子の次は人間かとこの男はよくよく失礼な人だ。でも、一応保護してくれたことも、今助けてくれたこともお礼を言わなければならない。
私が顔を上げるとアシュレイが信じられないというふうに私の顔を手で撫でてきたと思ったらそのまま、顔を寄せてきて唇を重ねてきた。
突然のことに私は身を捩って逃れようとしたが、その逞しいい腕に抱き締められていてどうすることもできなかった。
「な、何を」
困惑した言葉もアシュレイのキスに消されてしまい何度も角度を変えてそれは奪われた。
次第に自分の喉の奥から喘ぐような今まで出したことのないような甘い声が漏れていく。そして眩暈がしてきた。
アシュレイが私の衣服を探して差し出してくれた時に自分の体が震えていることに気がついた。体は膝から下が上手く力が入らなくなっていた。
どうしてこの人はこんなことをしてきたのだろうか?
他人をガリガリと嘲笑って、人間かと訊ねてくるほどなのに。
今は騎士然としているけれど盗賊が本当で王国騎士ではなかったのかもしれない。
私は震える手で衣服を身につけるとアシュレイから逃げたいと痛切に感じたがどうせ館に帰ると顔を合わすと思い諦めた。
「家は何処だ? 送っていこう」
アシュレイが呑気に言ってきたので、やっぱりこの男は自分をからかっているのかと思った。
――家はあなたが連れて行ったところでしょう? 私は何を一体どう説明したらいいのか唖然としていた。
「あの……」
私の言葉にアッシュレイは今まで見せたことのないような優しい微笑みを浮かべていた。それでつい怒るタイミングを失ってしまった。
「緑の貴婦人のところですが……」
アシュレイは私の言葉に目を見開いたけれど、それでは一緒にと言って馬を連れてきた。
その馬はあの時乗せてくれたものだった。
馬の方は私を憶えていたのだろうその鼻面を嬉しそうに擦り付けてきた。私はつい嬉しくてその頭を撫でてやった。それを見ていたアシュレイが不思議そうに馬に呼びかけた。
「シェル?」
馬はアシュレイの呼びかけにひひんと答えた。
賢い良い子だわ。主人より余程。
私はそう呟いくと館への道を歩き出した。
「待ってくれ、君は夫人のところに最近来た子かい?」
「ええ、まあ(あなたが連れてきましたけrど)」
「ふうん。そうか。それは……」
アシュレイの口調は何故か嬉しそうなものだった。
「大丈夫か?!」
盛大に咳き込む自分の背中を誰かが撫でている。そのとき自分が裸なのに気がついたがどうしようもなかった。
大丈夫だと言いたいが咳が止まらない。
男は黙って背中を撫で続けてくれた。
ようやく咳が止まってお礼を言おうとその人を見遣ると、忘れもしないアシュレイその人であった。
「あなたは人間か?」
アシュレイは自分を見つめたまま何かを確認するかのようにそう言った。
この人は何を聞いてくるのだろう? 私また咳き込みだした合間にそう思った。
……案山子の次は人間かとこの男はよくよく失礼な人だ。でも、一応保護してくれたことも、今助けてくれたこともお礼を言わなければならない。
私が顔を上げるとアシュレイが信じられないというふうに私の顔を手で撫でてきたと思ったらそのまま、顔を寄せてきて唇を重ねてきた。
突然のことに私は身を捩って逃れようとしたが、その逞しいい腕に抱き締められていてどうすることもできなかった。
「な、何を」
困惑した言葉もアシュレイのキスに消されてしまい何度も角度を変えてそれは奪われた。
次第に自分の喉の奥から喘ぐような今まで出したことのないような甘い声が漏れていく。そして眩暈がしてきた。
アシュレイが私の衣服を探して差し出してくれた時に自分の体が震えていることに気がついた。体は膝から下が上手く力が入らなくなっていた。
どうしてこの人はこんなことをしてきたのだろうか?
他人をガリガリと嘲笑って、人間かと訊ねてくるほどなのに。
今は騎士然としているけれど盗賊が本当で王国騎士ではなかったのかもしれない。
私は震える手で衣服を身につけるとアシュレイから逃げたいと痛切に感じたがどうせ館に帰ると顔を合わすと思い諦めた。
「家は何処だ? 送っていこう」
アシュレイが呑気に言ってきたので、やっぱりこの男は自分をからかっているのかと思った。
――家はあなたが連れて行ったところでしょう? 私は何を一体どう説明したらいいのか唖然としていた。
「あの……」
私の言葉にアッシュレイは今まで見せたことのないような優しい微笑みを浮かべていた。それでつい怒るタイミングを失ってしまった。
「緑の貴婦人のところですが……」
アシュレイは私の言葉に目を見開いたけれど、それでは一緒にと言って馬を連れてきた。
その馬はあの時乗せてくれたものだった。
馬の方は私を憶えていたのだろうその鼻面を嬉しそうに擦り付けてきた。私はつい嬉しくてその頭を撫でてやった。それを見ていたアシュレイが不思議そうに馬に呼びかけた。
「シェル?」
馬はアシュレイの呼びかけにひひんと答えた。
賢い良い子だわ。主人より余程。
私はそう呟いくと館への道を歩き出した。
「待ってくれ、君は夫人のところに最近来た子かい?」
「ええ、まあ(あなたが連れてきましたけrど)」
「ふうん。そうか。それは……」
アシュレイの口調は何故か嬉しそうなものだった。
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