完【R15】盗賊騎士と愛を知らない修道女

えとう蜜夏☆コミカライズ中

文字の大きさ
上 下
3 / 35
一章 醜いあひると盗賊

三 薬草小屋で

しおりを挟む
 私の部屋は修道院内にもあったが、薬草の乾燥や具合や種の採取の時間のため、この小屋も簡易な寝台を備えていた。

 グズで醜いと罵られようと先代院長から教えられた私の薬草の知識は重宝されていたからだ。




 崩れ落ちるように男性は粗末な寝台に身を沈めた。ぎしぎしと嫌な音を立てた。

 その姿を見てやっぱり無理をしていたのだと感じた。

 ――これだけ具合が悪そうなのに触られるのを避けられるほど私の姿は醜いのね。

 私は自虐の笑みを浮かべていた。

 今更、何を期待していたのだろうと諦めにも似た感情で自分を宥めた。

 私は治療に専念しようと小屋にある薬草で新たな解毒剤を調合して男に飲ませると水も頻繁に飲ませた。

 男は高熱を出したので仕方なく私は看病していた。薬草の手入れの合間に様子を見に戻る。

 ときおり呻き声を上げる男の体の汗も拭ってやった。

 男性の裸など見るのはこれが初めてだったが、恥ずかしいと思うより、助けなければという気持ちの方が大きかったから出来たことだった。

 初めて見る男性の体はやはり自分とは全然違って硬く引き締まっていて、ところどころにある傷痕もまるで自分とは別の生き物であることを強く感じさせた。




 夜更けには男の熱もようやく下がり始めて穏やかな眠りになったことを確認すると私もベッドの横にもたれて床に座りこむとそのまま眠ってしまった。

 その内、首やあちこちが痛くなり目を覚ました。

 慌てて男の様子を確認するとどうやら毒消しが効いて男の容体は安定していた。

 それでほっとしたので、早朝の祈りの時間のためにそっと音をたてないように私は小屋を出た。

 朝の祈りの時間は礼拝堂に集まらないと他の修道女か探しに来る。これはそれぞれの安否確認を兼ねているせいだった。

 それは煩わしいもので、手の離せない調合中の時などは困るのだけど規則だから仕方がない。

 そして朝の祈りを済ませると朝食になる。

 これは他に灯の番や見回りの当番もあるので一緒にできなくても特にうるさく言われない。

 私は自分の分を持ってそっと席を立って食堂から逃れた。

 朝食といってもほぼ三食同じものだった

 粗末な堅い黒パンと薄い味のスープ。

 それでも三回食べられるだけ感謝しなければいけない。

 時折それが二回や一回なるときもあり、その都度世の中には貧しい人は沢山いるのだと説教をされいたけれど私は外の世界を知らないので比べようが無かった。



    私はパンとスープを隠すようにして薬草小屋まで戻った。

 昨日は作業中だったからウィンベルをつい外していたので、今は部屋から取ってきたベールも被った。

 本来は着用することになっているのだけれど薬草園の作業中は邪魔になるので外しているときがある。それも他の修道女からの非難されることの一つで、醜い顔を晒すなと怒鳴られていた。

 辛うじてある割れた鏡で見たことがあるけれど私の顔も日差しに晒されて手と同じように赤黒く皺だらけだった。

 

 私が小屋に入るとくっと言う男性の苦笑いのようなものが聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

その神子は胃袋を掴まれている

成行任世
恋愛
ーーー私は出来損ないだから とある事情で、辺境の館に暮らす盲目の公爵令嬢シャーロット。家族からも使用人からも冷遇されていた彼女のもとに、ある日突然毛色の違う使用人達が現れる。 「今日は野菜スープが飲みたいです」 これは、心優しき盗賊と冷遇される神子の始まりの物語。 ※この物語は、身体に障害を持つ方を差別するような表現がありますが、そのような意図は一切ありません。 ご了承下さい。

【完結】氷の令嬢は王子様の熱で溶かされる

花草青依
恋愛
"氷の令嬢"と揶揄されているイザベラは学園の卒業パーティで婚約者から婚約破棄を言い渡された。それを受け入れて帰ろうとした矢先、エドワード王太子からの求婚を受ける。エドワードに対して関心を持っていなかったイザベラだが、彼の恋人として振る舞ううちに、イザベラは少しずつ変わっていく。/拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』と同じ世界の話ですが、続編ではないです。王道の恋愛物(のつもり)/第17回恋愛小説大賞にエントリーしています/番外編連載中

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

処理中です...