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一章 醜いあひると盗賊

三 薬草小屋で

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 私の部屋は修道院内にもあったが、薬草の乾燥や具合や種の採取の時間のため、この小屋も簡易な寝台を備えていた。

 グズで醜いと罵られようと先代院長から教えられた私の薬草の知識は重宝されていたからだ。




 崩れ落ちるように男性は粗末な寝台に身を沈めた。ぎしぎしと嫌な音を立てた。

 その姿を見てやっぱり無理をしていたのだと感じた。

 ――これだけ具合が悪そうなのに触られるのを避けられるほど私の姿は醜いのね。

 私は自虐の笑みを浮かべていた。

 今更、何を期待していたのだろうと諦めにも似た感情で自分を宥めた。

 私は治療に専念しようと小屋にある薬草で新たな解毒剤を調合して男に飲ませると水も頻繁に飲ませた。

 男は高熱を出したので仕方なく私は看病していた。薬草の手入れの合間に様子を見に戻る。

 ときおり呻き声を上げる男の体の汗も拭ってやった。

 男性の裸など見るのはこれが初めてだったが、恥ずかしいと思うより、助けなければという気持ちの方が大きかったから出来たことだった。

 初めて見る男性の体はやはり自分とは全然違って硬く引き締まっていて、ところどころにある傷痕もまるで自分とは別の生き物であることを強く感じさせた。




 夜更けには男の熱もようやく下がり始めて穏やかな眠りになったことを確認すると私もベッドの横にもたれて床に座りこむとそのまま眠ってしまった。

 その内、首やあちこちが痛くなり目を覚ました。

 慌てて男の様子を確認するとどうやら毒消しが効いて男の容体は安定していた。

 それでほっとしたので、早朝の祈りの時間のためにそっと音をたてないように私は小屋を出た。

 朝の祈りの時間は礼拝堂に集まらないと他の修道女か探しに来る。これはそれぞれの安否確認を兼ねているせいだった。

 それは煩わしいもので、手の離せない調合中の時などは困るのだけど規則だから仕方がない。

 そして朝の祈りを済ませると朝食になる。

 これは他に灯の番や見回りの当番もあるので一緒にできなくても特にうるさく言われない。

 私は自分の分を持ってそっと席を立って食堂から逃れた。

 朝食といってもほぼ三食同じものだった

 粗末な堅い黒パンと薄い味のスープ。

 それでも三回食べられるだけ感謝しなければいけない。

 時折それが二回や一回なるときもあり、その都度世の中には貧しい人は沢山いるのだと説教をされいたけれど私は外の世界を知らないので比べようが無かった。



    私はパンとスープを隠すようにして薬草小屋まで戻った。

 昨日は作業中だったからウィンベルをつい外していたので、今は部屋から取ってきたベールも被った。

 本来は着用することになっているのだけれど薬草園の作業中は邪魔になるので外しているときがある。それも他の修道女からの非難されることの一つで、醜い顔を晒すなと怒鳴られていた。

 辛うじてある割れた鏡で見たことがあるけれど私の顔も日差しに晒されて手と同じように赤黒く皺だらけだった。

 

 私が小屋に入るとくっと言う男性の苦笑いのようなものが聞こえてきた。
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