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一章 醜いあひると盗賊
一 グズで醜いあひる
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山の中にある苔むした古い修道院で修道女見習いの私はいつものように決められた床掃除をしていた。
「グズ、さっさとおし。あんたは本当にダメな子だねえ。それに醜いし」
監督の修道女にいつものように小言を言われながら作業をしていた。
グズな子、醜い子と言われるのはこの修道院で私だけで、どんなに頑張っても褒められることは無かった。寧ろ頑張れば頑張るほど一層嫌われていたように感じていた。
「さあ、いつまで床掃除してるの。さっさと次の作業をしなさい」
私は慌てて掃除道具を片付けると今度は教会の裏にある薬草園に向かった。
私はここで薬草の管理をしていた。
主に毒草ばかりだ。
毒草と言っても煎ずれば薬になるものだったけれど取り扱いに気を付けないと死に至るものが多かった。
掃除や毒草の世話で荒れてしまった自分の痩せた赤黒い手を見ながら草を抜いていく。
ここで作業するのは気が楽だった。他の人達は毒を嫌がってここには近寄らないので心静かにいられるからだ。
だから、嫌味も罵声も聞かなくて済む。それだけでもほっとする。
それに単純な草取りの作業は何も考えなくていい。
先代の院長がいらしたときは、ここまで苛められることはなかったけれど今の院長になってからいろいろと苛められるし、方針までも変わってしまい戸惑うことばかりだった。
先輩修道女達は昔から私を遠巻きにしてこそこそと話をしていたけれど、今はあからさまに邪険にしてくるようになった。
遠巻きに話をされていたときもそれはあまりいい話でないことは何となく分かっていた。
名前では呼ばれず、グズとか醜いのと呼ばれる。
何処かに出ていければいいのだけど。生まれてから私はここでしか生活をしたことがない。
まして、こんな山の中では外に出ることなどできはしない。
私は溜息をつきながら鬱蒼とした修道院から続く裏山を眺めた。
そんなことを考えていると山際の草むらがガサガサと揺れたので私は驚いてそちらを見た。
この修道院は山の中にあるので野生の動物がよく迷い込んできた。
野ウサギのようなものから時にはシカなんかも出てくる。
シカはまだましだがイノシシやクマは襲われると命の危険がある。
慌てて私は辺りを見回して何か身を守るものを探した。
ガサっと一際大きな音がして黒い塊が姿を現した。
――まさかクマとか!?
私は持っていた籠を振り上げて構えていると
「ううっ」
呻き声を上げた男性が眼前にどさりと倒れ込んだのだった。
「グズ、さっさとおし。あんたは本当にダメな子だねえ。それに醜いし」
監督の修道女にいつものように小言を言われながら作業をしていた。
グズな子、醜い子と言われるのはこの修道院で私だけで、どんなに頑張っても褒められることは無かった。寧ろ頑張れば頑張るほど一層嫌われていたように感じていた。
「さあ、いつまで床掃除してるの。さっさと次の作業をしなさい」
私は慌てて掃除道具を片付けると今度は教会の裏にある薬草園に向かった。
私はここで薬草の管理をしていた。
主に毒草ばかりだ。
毒草と言っても煎ずれば薬になるものだったけれど取り扱いに気を付けないと死に至るものが多かった。
掃除や毒草の世話で荒れてしまった自分の痩せた赤黒い手を見ながら草を抜いていく。
ここで作業するのは気が楽だった。他の人達は毒を嫌がってここには近寄らないので心静かにいられるからだ。
だから、嫌味も罵声も聞かなくて済む。それだけでもほっとする。
それに単純な草取りの作業は何も考えなくていい。
先代の院長がいらしたときは、ここまで苛められることはなかったけれど今の院長になってからいろいろと苛められるし、方針までも変わってしまい戸惑うことばかりだった。
先輩修道女達は昔から私を遠巻きにしてこそこそと話をしていたけれど、今はあからさまに邪険にしてくるようになった。
遠巻きに話をされていたときもそれはあまりいい話でないことは何となく分かっていた。
名前では呼ばれず、グズとか醜いのと呼ばれる。
何処かに出ていければいいのだけど。生まれてから私はここでしか生活をしたことがない。
まして、こんな山の中では外に出ることなどできはしない。
私は溜息をつきながら鬱蒼とした修道院から続く裏山を眺めた。
そんなことを考えていると山際の草むらがガサガサと揺れたので私は驚いてそちらを見た。
この修道院は山の中にあるので野生の動物がよく迷い込んできた。
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シカはまだましだがイノシシやクマは襲われると命の危険がある。
慌てて私は辺りを見回して何か身を守るものを探した。
ガサっと一際大きな音がして黒い塊が姿を現した。
――まさかクマとか!?
私は持っていた籠を振り上げて構えていると
「ううっ」
呻き声を上げた男性が眼前にどさりと倒れ込んだのだった。
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