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第一章 覚 醒

十七 魔術暴走

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 ――あれ? これってもしかして暴走しちゃったとか?

 礼拝堂内が光に満ちる。制止しようとしていたファルク様がやや狂気じみた感嘆の声を上げて動きを止めた。

「ライトボールでこの威力、素晴らしい!」

「くっ。危ない!」

 壁際で護役をしていたアスラン様が駆け寄ってきて何かを呟いていた――。唐突に光の威力が衰えた。アスラン様が私の手を取り怪我の有無を確認してくれている。

「ふう。お怪我はないみたいだ。しかし、司祭は光の威力をご存じないのか」

「これは申し訳ない。まさか発現まで至るとは思わなかったもので。先程のは光属性の故の反応でございました。我がエイリー・グレーネ王国でも長らく光の使い手は現れませんでしたので、喜びのあまりについ見惚れておりました」

 ――え? フォルティスお兄様とかマドラだって使えますよね?

 私の問い質したい様子に、ファルク様は、

「光の術はそれなりに使いこなせても、本来の属性でない者は最上級の技を習得できません。フォルティス王子様は光属性の素質はありそうですが、発現まではまだ今少し成長を待たないとなりません」

 そう言えばお兄様が光の勇者の認定されたのは公式設定では十五歳のときだし。そして、それが闇の神へと伝わり、闇の神の眷属達に命令しエイリー・グレーネ王国を攻め滅ぼすことになるのだった。

「光の魔術の使い手が現れた。早速司祭長に……」

「お待ちください。私はまだ使いこなせておりませんわ。だから違うかもしれないのでまだ申し上げないでくださいませ」

 やっぱりライトボールもろくろくできそうになかったもの。

「しかし、王女様。光の神の加護が失われたこの王国で再び王家の者に強く光の力が出現するような一大事。私の一存では決めかねることです。それにしても、あなたのような冒険者が王女様の魔術の暴走を止めることが出来るとは……」

「冒険者をやっているから、緊急事態には慣れているだけだ。それに……」

 アスラン様はそう言うと私をじっとご覧になった。

「ライトボールを剣のように振るおうとするならライトソードが正しい呪文形態だ。それを無理やり押し通そうとしたから反発してあのようになったのだろう」

「ほう、良く分かりましたね」

 アスラン様に庇われたままファルク様を見る。

 ――ライトソードはもう一段階上の呪文じゃない。薔薇伝のリルアが光の魔術でできる最高の技だったのよね。確か武器を光属性にできるの。でも、それ自体を光の剣のようにできないかしら。さっきのライトボールで攻撃系の威力からできそうな気がしもの。

やっぱり魔術は面白そう。危険も多そうだけど。

 ファルク様がアスラン様を見つめて口を開いた。

「あなたからはその、あまりこの国には相応しくない力を感じます。だから、先程の王女様の暴走も止められたのでしょう?」

 それって、そう言えばアスラン様の初期設定では闇魔術を使えていたはず。でも公式で闇と光の魔術が稀で相殺できるとかは無かった気がする。どのキャラ選んでもどの系統の魔術でも取得できたのよ。相反するものは同時に取得できないけどね。

「さて、何のことでしょう。たまたまですよ。何も闇魔術でなくてもあれくらいは消すことができます」

アスラン様の言葉にファルク様は黙り込んだ。

 難しい理論になると二人についていけそうにない。前世か何かのことを思い出しても私は所詮八歳ですからね。
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