18 / 20
十八 勝負はどちらに?
しおりを挟む
猥雑な酒場でもいつものようにゆったりとした雰囲気で不敵な笑みを浮かべていらっしゃるエドワード様のお姿に私の目から堪えきれず涙が溢れていました。
よく見るとエドワード様の隣にフードを被った美女が佇んでおりました。美しい金髪にブルーグレイの瞳。なんだか彼女に見覚えがあるような……。
その美女の首には奴隷の証である首輪がされていました。
「へへ、そっちも今夜の売り物かい?」
「まあそういうことになるかな。そちらの床に転がしてるもの商品なのか?」
「まあな。へへっ。今夜のとっておきの目玉商品だぜ。そっちの商品なんか目じゃないぜ。……おっとワンペアか」
「それにしては扱いが悪すぎるな。値が下がる」
「けっ。うるせぇ。こっちの勝手だろ」
男の言葉にエドワード様は眉根を寄せられました。幸い私の視界にエドワード様が来る位置なのでお姿を見ていると少しずつ私も安心して辺りの様子にも気を配れるようになりました。このテーブルには幾人か座っているようです。流石にここから出口まで私を抱えて走るには難しいのは分かります。護衛らしき者もいるみたいです。
「おっとフルハウスか。へへっ。な、何だと。お前ぇは……」
ゲームはエドワード様が一方的に勝つばかりではありませんでしたが、じわじわと追いつめているようでした。
「ちぇっ、もう、手持ちがねぇ……」
男がバラバラとカードをテーブルにほうりだしたました。
「あるじゃないか。その袋のもの」
「こ、これは、セリにだすやつだ……」
「そうかね。じゃ、仕方が無いな。こっちも手持ちが無いので、これを賭けにしようと思ってたんだが……」
エドワード様が肩を触るとフードからぱらりと金髪が零れ落ちました。とても綺麗な方です。どのようにして、手に入れたのでしょうか? 商会でも扱っているのかしら……。
「そいつも良い品だな。そいつを賭けるのか。あんたも博打が好きだな」
「ええ、とても」
エドワード様はそういうと不敵な笑みをされました。男は気迫に飲まれたようでした。
「ここで私に勝つと商品が二倍になる。どうだい? いい話じゃないか」
ごくりと嚥下する音が周辺からも聞こえました。どうやらエドワード様のやり取りを見物する人達が集まってきているようです。
「ほ、本当だな」
ちらりと男は足元の私に視線を遣りました。エドワード様は両手を顎の下で組まれて成り行きを見守っておりました。
「商品が二倍、良い話ですよ」
「じゃ、じゃあ」
男の言葉に運命のカードは配られました。しばらくぴりぴりとした雰囲気でしたが、男は手札を交換するとにやりと笑いました。なんだかご機嫌の様子でした。
「俺の勝ちだ。フォーカードだぜ!」
だんとカードをテーブルに叩きつけました。エドワード様は静かにカードを開きました。
「こ、こんなばかな。ロイヤルストレー……」
男は呆然として立ち上がりカードを眺めていました。
「では、そちらの品は私の物だな。証人は見物の方々だ。よろしいな?」
エドワード様の言葉に周囲からは概ね賛同の声が上がっていました。エドワード様が立ちがったので私の視界からは見えなくなりましたが、直ぐに目の前に来て抱きかかえてくれました。
「……怖かっただろう。待たせたね」
エドワード様の言葉に私はただ肯くばかりでした。
「て、て前ぇ。こんなの間違いだ! そうでないと……」
「勝負はついている。見苦しいぞ」
エドワード様は男に一瞥をくれると出口の方に向かいました。出口付近まで来たところまだあの男が追ってきました。
「きっとイカサマしてやがったんだ! あいつらはイカサマして、商品をかっさらいやがった。兄貴どもやっちまえ!!」
「……面倒な。今度はお前の出番だな。頑張れよ」
「分かりました。父上。お任せください」
フードを着ていた美女はかつらごと脱ぎ捨てるとそこにはロラン様が現れました。
「あの美女はロラン様だったのですか……」
迫りくる悪漢達をロラン様が次々と武術を使って沈める姿を私は驚きながら眺めておりました。自分より大きな男どもを軽々と叩きのめしておりました。
よく見るとエドワード様の隣にフードを被った美女が佇んでおりました。美しい金髪にブルーグレイの瞳。なんだか彼女に見覚えがあるような……。
その美女の首には奴隷の証である首輪がされていました。
「へへ、そっちも今夜の売り物かい?」
「まあそういうことになるかな。そちらの床に転がしてるもの商品なのか?」
「まあな。へへっ。今夜のとっておきの目玉商品だぜ。そっちの商品なんか目じゃないぜ。……おっとワンペアか」
「それにしては扱いが悪すぎるな。値が下がる」
「けっ。うるせぇ。こっちの勝手だろ」
男の言葉にエドワード様は眉根を寄せられました。幸い私の視界にエドワード様が来る位置なのでお姿を見ていると少しずつ私も安心して辺りの様子にも気を配れるようになりました。このテーブルには幾人か座っているようです。流石にここから出口まで私を抱えて走るには難しいのは分かります。護衛らしき者もいるみたいです。
「おっとフルハウスか。へへっ。な、何だと。お前ぇは……」
ゲームはエドワード様が一方的に勝つばかりではありませんでしたが、じわじわと追いつめているようでした。
「ちぇっ、もう、手持ちがねぇ……」
男がバラバラとカードをテーブルにほうりだしたました。
「あるじゃないか。その袋のもの」
「こ、これは、セリにだすやつだ……」
「そうかね。じゃ、仕方が無いな。こっちも手持ちが無いので、これを賭けにしようと思ってたんだが……」
エドワード様が肩を触るとフードからぱらりと金髪が零れ落ちました。とても綺麗な方です。どのようにして、手に入れたのでしょうか? 商会でも扱っているのかしら……。
「そいつも良い品だな。そいつを賭けるのか。あんたも博打が好きだな」
「ええ、とても」
エドワード様はそういうと不敵な笑みをされました。男は気迫に飲まれたようでした。
「ここで私に勝つと商品が二倍になる。どうだい? いい話じゃないか」
ごくりと嚥下する音が周辺からも聞こえました。どうやらエドワード様のやり取りを見物する人達が集まってきているようです。
「ほ、本当だな」
ちらりと男は足元の私に視線を遣りました。エドワード様は両手を顎の下で組まれて成り行きを見守っておりました。
「商品が二倍、良い話ですよ」
「じゃ、じゃあ」
男の言葉に運命のカードは配られました。しばらくぴりぴりとした雰囲気でしたが、男は手札を交換するとにやりと笑いました。なんだかご機嫌の様子でした。
「俺の勝ちだ。フォーカードだぜ!」
だんとカードをテーブルに叩きつけました。エドワード様は静かにカードを開きました。
「こ、こんなばかな。ロイヤルストレー……」
男は呆然として立ち上がりカードを眺めていました。
「では、そちらの品は私の物だな。証人は見物の方々だ。よろしいな?」
エドワード様の言葉に周囲からは概ね賛同の声が上がっていました。エドワード様が立ちがったので私の視界からは見えなくなりましたが、直ぐに目の前に来て抱きかかえてくれました。
「……怖かっただろう。待たせたね」
エドワード様の言葉に私はただ肯くばかりでした。
「て、て前ぇ。こんなの間違いだ! そうでないと……」
「勝負はついている。見苦しいぞ」
エドワード様は男に一瞥をくれると出口の方に向かいました。出口付近まで来たところまだあの男が追ってきました。
「きっとイカサマしてやがったんだ! あいつらはイカサマして、商品をかっさらいやがった。兄貴どもやっちまえ!!」
「……面倒な。今度はお前の出番だな。頑張れよ」
「分かりました。父上。お任せください」
フードを着ていた美女はかつらごと脱ぎ捨てるとそこにはロラン様が現れました。
「あの美女はロラン様だったのですか……」
迫りくる悪漢達をロラン様が次々と武術を使って沈める姿を私は驚きながら眺めておりました。自分より大きな男どもを軽々と叩きのめしておりました。
1
お気に入りに追加
196
あなたにおすすめの小説
月が隠れるとき
いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。
その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。
という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。
小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団の異色男子
ジャスティン・レスターの意外なお話
矢代木の実(23歳)
借金地獄の元カレから身をひそめるため
友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ
今はネットカフェを放浪中
「もしかして、君って、家出少女??」
ある日、ビルの駐車場をうろついてたら
金髪のイケメンの外人さんに
声をかけられました
「寝るとこないないなら、俺ん家に来る?
あ、俺は、ここの27階で働いてる
ジャスティンって言うんだ」
「………あ、でも」
「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は…
女の子には興味はないから」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト
待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。
不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった!
けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。
前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。
……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?!
♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる