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九 快適な旅路
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右手側の二番と書かれたドアを開けて入った。
普通に開けると中は寝台付きの部屋だった。造り付けのクローゼットもあって、六畳くらいの感じだけどまるでちょっとしたホテルの部屋のよう。
小さな机と椅子もあって、簡単な書き物とか食事もできそうだった。
とてもあの幌馬車の中だとは思えない。
外から見た時は窓など無かったように思うけど小さな窓もあって外が見えた。カーテンで開け閉めもできる。
もう月明かりで周囲はほの明るかった。
とりあえず私は寝台に座るとほっとした。
「君好みの豪華じゃないけど気に入ったかな?」
「い、いえ、そんなことはございません。充分過ぎるほどです」
今までのアゼリアじゃ、こんな貧相なところなんてと癇癪起こしたかもしれない。
でも、野宿より断然良いと思う。普通の部屋だしね。
レイノルド様は私の答えに満足そうに笑みを浮かべた。
「……そうか、じゃあ、俺はアドニスと交代で御者をしてくる。簡単な物だけど食べ物もここで置いておくから、ゆっくり休んでくれ」
「あ、はい」
そして、レイノルド様はバケットに野菜やハムを挟み込んだ物を置いていかれた。
公爵家の高級そうな食器とかではなく、シンプルな木の食器にのせられていた。とても美味しそうだった。
私はとりあえずこの派手なドレスを着替えることにした。
豪華なドレスでも脱ぐことは一人でできた。着ることは無理そうだった。
用意してくれたワンピースドレスは一人でも着替えることができた。
それからハム野菜サンドを食べながら流れる景色を眺めていた。
レイノルド様が良いと言ったけどやっぱり後でドレスやコートは返すことにしよう。
今までのアゼリアならこんなことは思わないだろうけど、助けてもらったお礼とかいろいろと考えてしまう。
楽な姿になって、部屋にも慣れたせいか少し疲れを感じ始めたので寝台でごろりと横になっていたらいつの間にか眠ってしまった。
アドニスさんが夜明けに部屋に見に来てくれた時には驚いて悲鳴を上げるとこだった。
「ひっ、すみません。寝ぼけてしました」
「大丈夫ですか? お疲れだったのでしょう」
アドニスさんはレイノルド様とは違った爽やか系のイケメンだった。
「はい。ちょっと……。いろいろとありがとうございました」
私の言葉に少し驚いたようだけどアドニスさんは洗面所の部屋を教えてくれた。
アドニスさんはレイノルド様の乳兄弟なのでいろいと絆があるのだろう。
こんな時も一緒に逃げてくれるほどの確かな信頼があるのでなんだか少し羨ましく思えた。
普通に開けると中は寝台付きの部屋だった。造り付けのクローゼットもあって、六畳くらいの感じだけどまるでちょっとしたホテルの部屋のよう。
小さな机と椅子もあって、簡単な書き物とか食事もできそうだった。
とてもあの幌馬車の中だとは思えない。
外から見た時は窓など無かったように思うけど小さな窓もあって外が見えた。カーテンで開け閉めもできる。
もう月明かりで周囲はほの明るかった。
とりあえず私は寝台に座るとほっとした。
「君好みの豪華じゃないけど気に入ったかな?」
「い、いえ、そんなことはございません。充分過ぎるほどです」
今までのアゼリアじゃ、こんな貧相なところなんてと癇癪起こしたかもしれない。
でも、野宿より断然良いと思う。普通の部屋だしね。
レイノルド様は私の答えに満足そうに笑みを浮かべた。
「……そうか、じゃあ、俺はアドニスと交代で御者をしてくる。簡単な物だけど食べ物もここで置いておくから、ゆっくり休んでくれ」
「あ、はい」
そして、レイノルド様はバケットに野菜やハムを挟み込んだ物を置いていかれた。
公爵家の高級そうな食器とかではなく、シンプルな木の食器にのせられていた。とても美味しそうだった。
私はとりあえずこの派手なドレスを着替えることにした。
豪華なドレスでも脱ぐことは一人でできた。着ることは無理そうだった。
用意してくれたワンピースドレスは一人でも着替えることができた。
それからハム野菜サンドを食べながら流れる景色を眺めていた。
レイノルド様が良いと言ったけどやっぱり後でドレスやコートは返すことにしよう。
今までのアゼリアならこんなことは思わないだろうけど、助けてもらったお礼とかいろいろと考えてしまう。
楽な姿になって、部屋にも慣れたせいか少し疲れを感じ始めたので寝台でごろりと横になっていたらいつの間にか眠ってしまった。
アドニスさんが夜明けに部屋に見に来てくれた時には驚いて悲鳴を上げるとこだった。
「ひっ、すみません。寝ぼけてしました」
「大丈夫ですか? お疲れだったのでしょう」
アドニスさんはレイノルド様とは違った爽やか系のイケメンだった。
「はい。ちょっと……。いろいろとありがとうございました」
私の言葉に少し驚いたようだけどアドニスさんは洗面所の部屋を教えてくれた。
アドニスさんはレイノルド様の乳兄弟なのでいろいと絆があるのだろう。
こんな時も一緒に逃げてくれるほどの確かな信頼があるのでなんだか少し羨ましく思えた。
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