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二 悪役令嬢に転生した朝
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私は今朝目覚めると、このシエナ王国のロータス公爵家の令嬢アゼリアになっていた。
「ああ! どうして……」
起きて鏡を見るとつい叫んでしまった。
思わず大声を出してしまったが、侍女達もびくりと怯えていた。
だって起きて鏡を見ると金髪の美少女になっていたのだ。
私は昨日までは地味な普通の事務員のはずだった。
昨日は上司の指示ミスで顧客を怒らせてしまい。
その後始末に奔走して、夜中を過ぎた頃に帰社して報告書を作っていたはずなのに。
それにしてもこうして鏡を見ても、このようなキャラが出てくるゲームや小説に心当たりはなかった。
とりあえず今までのアゼリアの記憶はあるので生活とかには困らなさそうだけどこれからどうしたらよいのか。
一人娘なこともありアゼリアはかなり我儘な貴族令嬢に育っていた。
公爵家だから、両親は社交に忙しくてかまってはくれなかったけれど使用人に傅かれ、浴びるような贅沢をしてきたから、我慢や忍耐を知らない子だった。だから、使用人に影ではとても嫌われている。
まあ、よくあるテンプレの悪役令嬢キャラのようね。
どうやら今日の王宮での集まりに私も出席することになっていた。
だけどそのことでアゼリアは精神的に不安定になっていた。
こんな不安感を抱くのはアゼリアにとって初めてだったみたい。
そして、その不安感からどうやら怪しげな薬を飲んでしまい、意識が私と入れ替わってしまった。
要は死んでしまったのだ。恐らくあれは毒だったのだろう。
「お嬢様。急ぎませんと間に合いません」
怯える侍女に急かされて寝台を降りると侍女達が私を次々に飾り付けていく。
煌びやかな赤いドレスは金や銀の糸で更には宝石が縫い込まれているとても豪華な物だった。
――とてもお高そう。
ドレスに合わせたネックレスやイヤリングも赤と金を基調としていた。まるで燃え盛る焔を思わせる物だった。
婚約者のリーダイ王子が火の魔法の持ち主だからそれに合わせて作らせているみたい。
アゼリアはすぐに侍女達を怒鳴り散らして着付けていた。
でも、私は自分の姿がどうなっていくのか、好奇心で鏡越しに見ていた。
「いかかがでしょうか?」
侍女が恐る恐る尋ねてきた。
「ありがとう。これでいいわ」
私のありがとうの言葉に何故か侍女は不思議がっていたが、直ぐにてきぱきと片づけをして出て行った。
侍女達のメイクで、儚げな美少女が今は目が吊り上がり、キツイ感じの立派な悪役令嬢になっていた。
元は儚い系の美少女だったのにもったいない。
でもアゼリアは儚い弱々しい自分の姿が嫌で、キツイ感じのメイクをさせていたようだった。
私はため息をつきつつ、
「……今日はリーダイ王子様がいらっしゃるはず」
リーダイ王子様とはこの王国の第二王子で私の婚約者だった。
幼い頃に婚約というのはよくあるお話。
しかしながら最近のリーダイ王子は私をエスコートすることもなく、ドレスやアクセサリーを贈ってくれることもなく、どこかの男爵家の令嬢と仲良くしていた。
それでアゼリアは度々悋気を起こして暴れていた。だから王子からや周囲の者達からも更に遠巻きにされるようになっていた。
――でも、アゼリアだけが悪いとは思えないけどね。
両親は最初からアゼリアを眼中に入れていない。
婚約者も政略結婚で愛はない。
両親も政略結婚でそもそも最低限の付き合いしかない。
使用人からも必要最低限の扱いしかなかった。
まあ、だからアゼリアは寂しくて執着心が強くなったのだろう。
あの手この手でリーダイ様と仲良くなろうと頑張っていた。
ちょっと間違っている方向だけど家族から愛情を受け取ってないアゼリアは愛情表現の仕方が分からなかったみたい。
アゼリアが癇癪を起して暴れるほど相手にされなくなっていったものね。
そして、昨晩、侍女を通じて手に入れた魔女の媚薬とやらの怪しげな薬を飲んでしまったのだ。
何でも魅力的な女性になれると巷で流行っていたものだった。
どうもそれがよろしくなかったみたい。
アゼリアはそれを飲んで意識を失ってそのまま……。
アゼリア、もっと気をつけようね。怪しげな物には手を出してはいけない。
もう届かないかもしれないけれど。
「ああ! どうして……」
起きて鏡を見るとつい叫んでしまった。
思わず大声を出してしまったが、侍女達もびくりと怯えていた。
だって起きて鏡を見ると金髪の美少女になっていたのだ。
私は昨日までは地味な普通の事務員のはずだった。
昨日は上司の指示ミスで顧客を怒らせてしまい。
その後始末に奔走して、夜中を過ぎた頃に帰社して報告書を作っていたはずなのに。
それにしてもこうして鏡を見ても、このようなキャラが出てくるゲームや小説に心当たりはなかった。
とりあえず今までのアゼリアの記憶はあるので生活とかには困らなさそうだけどこれからどうしたらよいのか。
一人娘なこともありアゼリアはかなり我儘な貴族令嬢に育っていた。
公爵家だから、両親は社交に忙しくてかまってはくれなかったけれど使用人に傅かれ、浴びるような贅沢をしてきたから、我慢や忍耐を知らない子だった。だから、使用人に影ではとても嫌われている。
まあ、よくあるテンプレの悪役令嬢キャラのようね。
どうやら今日の王宮での集まりに私も出席することになっていた。
だけどそのことでアゼリアは精神的に不安定になっていた。
こんな不安感を抱くのはアゼリアにとって初めてだったみたい。
そして、その不安感からどうやら怪しげな薬を飲んでしまい、意識が私と入れ替わってしまった。
要は死んでしまったのだ。恐らくあれは毒だったのだろう。
「お嬢様。急ぎませんと間に合いません」
怯える侍女に急かされて寝台を降りると侍女達が私を次々に飾り付けていく。
煌びやかな赤いドレスは金や銀の糸で更には宝石が縫い込まれているとても豪華な物だった。
――とてもお高そう。
ドレスに合わせたネックレスやイヤリングも赤と金を基調としていた。まるで燃え盛る焔を思わせる物だった。
婚約者のリーダイ王子が火の魔法の持ち主だからそれに合わせて作らせているみたい。
アゼリアはすぐに侍女達を怒鳴り散らして着付けていた。
でも、私は自分の姿がどうなっていくのか、好奇心で鏡越しに見ていた。
「いかかがでしょうか?」
侍女が恐る恐る尋ねてきた。
「ありがとう。これでいいわ」
私のありがとうの言葉に何故か侍女は不思議がっていたが、直ぐにてきぱきと片づけをして出て行った。
侍女達のメイクで、儚げな美少女が今は目が吊り上がり、キツイ感じの立派な悪役令嬢になっていた。
元は儚い系の美少女だったのにもったいない。
でもアゼリアは儚い弱々しい自分の姿が嫌で、キツイ感じのメイクをさせていたようだった。
私はため息をつきつつ、
「……今日はリーダイ王子様がいらっしゃるはず」
リーダイ王子様とはこの王国の第二王子で私の婚約者だった。
幼い頃に婚約というのはよくあるお話。
しかしながら最近のリーダイ王子は私をエスコートすることもなく、ドレスやアクセサリーを贈ってくれることもなく、どこかの男爵家の令嬢と仲良くしていた。
それでアゼリアは度々悋気を起こして暴れていた。だから王子からや周囲の者達からも更に遠巻きにされるようになっていた。
――でも、アゼリアだけが悪いとは思えないけどね。
両親は最初からアゼリアを眼中に入れていない。
婚約者も政略結婚で愛はない。
両親も政略結婚でそもそも最低限の付き合いしかない。
使用人からも必要最低限の扱いしかなかった。
まあ、だからアゼリアは寂しくて執着心が強くなったのだろう。
あの手この手でリーダイ様と仲良くなろうと頑張っていた。
ちょっと間違っている方向だけど家族から愛情を受け取ってないアゼリアは愛情表現の仕方が分からなかったみたい。
アゼリアが癇癪を起して暴れるほど相手にされなくなっていったものね。
そして、昨晩、侍女を通じて手に入れた魔女の媚薬とやらの怪しげな薬を飲んでしまったのだ。
何でも魅力的な女性になれると巷で流行っていたものだった。
どうもそれがよろしくなかったみたい。
アゼリアはそれを飲んで意識を失ってそのまま……。
アゼリア、もっと気をつけようね。怪しげな物には手を出してはいけない。
もう届かないかもしれないけれど。
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