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四 学園での出会い
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学園に着くと寮は幸いながら二人部屋で、私はほっとして荷物を解いた。指定された期間内での入寮だから、初日に入るのは私ぐらい。入学手続きを済ませて先生方や寮母さんに挨拶すると意外と静かな日々を過ごすことができた。
そして、侍女から身の回りの世話をされなくなって判明したことは、私の髪はストレートだった。ゲームのイラストのようにライバル役のテンプレの縦巻きドリルロールはコテでかなり癖をつけていたのが判明した。
――毎朝のあれはそうだったのね。凄い時間の無駄だったわ。早朝からの長時間の苦行、熱いわ、長いわで大変だったのに。
鏡に映る黒髪ストレートな自分の姿を見るとある意味ほっとした。中身はそれなりの精神年齢になるので、流石にあの巻き巻きロールを今の自分に見るにはキツかった。これならそう違和感は無いね。この方が見慣れているかな。自分の切れ長の綺麗な黒銀の瞳を見返した。
こうしてみると自分の顔も色白でそれなりに顔も整っている。まあ、乙女ゲームのライバルキャラだしね。
体型もすらりと背が高い。胸もそれなりにあってそこは文句など無く谷間を見て感動している。
今日も学園内の探検でもしようと私はクローゼットに向かった。そして、ドレスではなく、兄のフロックコート一式を取り出した。学園には決められた制服もあるが、式典以外は好きな服装でも認められている。流石超お嬢様学校。正直ね、ごてごてしたドレスよりこちらの方が一人で着易いし動き易い。
この服は六歳上の兄の小さい頃のお古をこっそりとってきた。やっぱり、ドレスより動きやすいのよね。それにお古といってもさすがお貴族さま。数回着るとすぐ新調するから綺麗なままなのよねぇ。
お母様のドレスなんて一回着るともう公式では絶対袖を通さないし、気に入らないといって着ないものさえあるんだから、うーん、なんてもったいない。
私は腰まで届く髪をリボンで一つに束ねた。そうすると気分まですっきりする。
改めて姿見の中の自分を見返した。うん。まあまあ。男装の麗人っぽいかも。実は私は前世では某音楽歌劇団のコスチュームプレイは大好きだった。それを思い出して気分も上々になった。ドレスは、嫌いではないけれど正直一人で着るのは面倒くさい。
もう一度鏡の中の自分の姿に満足げに見遣ってから生徒の身分証を首から下げた。そして、私は散策のために部屋を出た。
学校内に寮があり、校舎とは廊下で繋がっている。
学校外もそのうち出てみよう。なにげに一人でお出かけは初めてかもしれない。今までは侍女から護衛や家族までぞろぞろ引きつれて出かけていたのよね。
学園外に出るには申請をしなくてはならない。良家の子女を預かっているといことから学園の警備は厳重だった。ガードマンが常に敷地内を巡回して、門には事務所もあり人の出入りを厳しくチェックしている。
一通り校舎の周囲を歩くと私は中庭の噴水の所でしばし休憩した。
その周囲には白い薔薇が咲き始めていた。
「へえ、いい匂いね」
そういって私は薔薇に顔を近づけた。そのとき、かさりと向こうの茂みがゆれた。
「……」
そこには金髪でスカイブルーの瞳の持ち主の文句なしの美少女が佇んでいた。つい私は彼女に見惚れていた。
いやいや、別に私は百合とかではないけれど……。
ここまで完璧に美しいと同性でも見惚れるだけの話である。彼女は完璧な容姿で形の良い口を開くとその美しい声が天上の学の楽の音のように響いた。
「あなたはもしや白薔薇の精のお方ですか?」
それは澄んだソプラノの声で心地よく思わず聞き惚れていた。
美人で声もいいなんて! 声優は誰? とか思っているとそれが自分に向かって言われたのだと、私は気がつくのに時間が少しかかった。
――だってね。今までに見た誰よりも目の前の彼女の方が美人だもの……。その人から自分が妖精なんかと言われるとは思ってもみないじゃない?
彼女の方が白薔薇の妖精とやらがぴったりよ。いや、女神様でも……。
それでも私はなんとか微笑みを浮かべることができた。
「私が? ……自分より貴女の方こそ薔薇の女神ではありませんか? ……いや、薔薇の花も貴女には適うまい。薔薇もそう感じて、今すぐ散り急いでしまうかもしれませんね」
私がそう彼女に話しかけると何故か彼女はその美しい頬をピンクに染めていた。
――え? 何? 私、もしかして何かのフラグ立てちゃた? まあ、いいかー。
「私は新入生のアーシア・モードレットと申します。どうぞよろしく」
私はそう言って手を差し伸べてみた。自己紹介は今後の人間関係にはとても大切だしね。
「まあ、失礼しましたわ。私も同じく新入生でジョーゼット・ローレンと申しますわ。こちらこそよろしくお願いいたします」
その名前で私は彼女があの王太子妃候補の公爵令嬢だと分かった。一応これでも私も侯爵令嬢として育てられたから有力貴族の名前ぐらいは知っている。
――でも、まるでこれこそ運命的な出会いってものよね。
私はそう考えつつ最上級の礼をとった。
勿論それは女性の型のものよ。薔薇の騎士様とやらみたいに膝をついたりしないからね!
すると彼女は可愛らしく目を丸くしていた。
……まあ、なんて、愛らしいのかしら、それも美女は絵になるわよね。眼福、眼福。
「私、てっきり先輩かと思いました。同じクラスで嬉しいわ」
ふふっと彼女はそう言うと華がほころぶように微笑んだ。
美人過ぎるわ~。美人はなにしても絵になるわ。
私はくらりと眩暈を感じながら、できれば全力で彼女のお友達になろうと思った。
そして、侍女から身の回りの世話をされなくなって判明したことは、私の髪はストレートだった。ゲームのイラストのようにライバル役のテンプレの縦巻きドリルロールはコテでかなり癖をつけていたのが判明した。
――毎朝のあれはそうだったのね。凄い時間の無駄だったわ。早朝からの長時間の苦行、熱いわ、長いわで大変だったのに。
鏡に映る黒髪ストレートな自分の姿を見るとある意味ほっとした。中身はそれなりの精神年齢になるので、流石にあの巻き巻きロールを今の自分に見るにはキツかった。これならそう違和感は無いね。この方が見慣れているかな。自分の切れ長の綺麗な黒銀の瞳を見返した。
こうしてみると自分の顔も色白でそれなりに顔も整っている。まあ、乙女ゲームのライバルキャラだしね。
体型もすらりと背が高い。胸もそれなりにあってそこは文句など無く谷間を見て感動している。
今日も学園内の探検でもしようと私はクローゼットに向かった。そして、ドレスではなく、兄のフロックコート一式を取り出した。学園には決められた制服もあるが、式典以外は好きな服装でも認められている。流石超お嬢様学校。正直ね、ごてごてしたドレスよりこちらの方が一人で着易いし動き易い。
この服は六歳上の兄の小さい頃のお古をこっそりとってきた。やっぱり、ドレスより動きやすいのよね。それにお古といってもさすがお貴族さま。数回着るとすぐ新調するから綺麗なままなのよねぇ。
お母様のドレスなんて一回着るともう公式では絶対袖を通さないし、気に入らないといって着ないものさえあるんだから、うーん、なんてもったいない。
私は腰まで届く髪をリボンで一つに束ねた。そうすると気分まですっきりする。
改めて姿見の中の自分を見返した。うん。まあまあ。男装の麗人っぽいかも。実は私は前世では某音楽歌劇団のコスチュームプレイは大好きだった。それを思い出して気分も上々になった。ドレスは、嫌いではないけれど正直一人で着るのは面倒くさい。
もう一度鏡の中の自分の姿に満足げに見遣ってから生徒の身分証を首から下げた。そして、私は散策のために部屋を出た。
学校内に寮があり、校舎とは廊下で繋がっている。
学校外もそのうち出てみよう。なにげに一人でお出かけは初めてかもしれない。今までは侍女から護衛や家族までぞろぞろ引きつれて出かけていたのよね。
学園外に出るには申請をしなくてはならない。良家の子女を預かっているといことから学園の警備は厳重だった。ガードマンが常に敷地内を巡回して、門には事務所もあり人の出入りを厳しくチェックしている。
一通り校舎の周囲を歩くと私は中庭の噴水の所でしばし休憩した。
その周囲には白い薔薇が咲き始めていた。
「へえ、いい匂いね」
そういって私は薔薇に顔を近づけた。そのとき、かさりと向こうの茂みがゆれた。
「……」
そこには金髪でスカイブルーの瞳の持ち主の文句なしの美少女が佇んでいた。つい私は彼女に見惚れていた。
いやいや、別に私は百合とかではないけれど……。
ここまで完璧に美しいと同性でも見惚れるだけの話である。彼女は完璧な容姿で形の良い口を開くとその美しい声が天上の学の楽の音のように響いた。
「あなたはもしや白薔薇の精のお方ですか?」
それは澄んだソプラノの声で心地よく思わず聞き惚れていた。
美人で声もいいなんて! 声優は誰? とか思っているとそれが自分に向かって言われたのだと、私は気がつくのに時間が少しかかった。
――だってね。今までに見た誰よりも目の前の彼女の方が美人だもの……。その人から自分が妖精なんかと言われるとは思ってもみないじゃない?
彼女の方が白薔薇の妖精とやらがぴったりよ。いや、女神様でも……。
それでも私はなんとか微笑みを浮かべることができた。
「私が? ……自分より貴女の方こそ薔薇の女神ではありませんか? ……いや、薔薇の花も貴女には適うまい。薔薇もそう感じて、今すぐ散り急いでしまうかもしれませんね」
私がそう彼女に話しかけると何故か彼女はその美しい頬をピンクに染めていた。
――え? 何? 私、もしかして何かのフラグ立てちゃた? まあ、いいかー。
「私は新入生のアーシア・モードレットと申します。どうぞよろしく」
私はそう言って手を差し伸べてみた。自己紹介は今後の人間関係にはとても大切だしね。
「まあ、失礼しましたわ。私も同じく新入生でジョーゼット・ローレンと申しますわ。こちらこそよろしくお願いいたします」
その名前で私は彼女があの王太子妃候補の公爵令嬢だと分かった。一応これでも私も侯爵令嬢として育てられたから有力貴族の名前ぐらいは知っている。
――でも、まるでこれこそ運命的な出会いってものよね。
私はそう考えつつ最上級の礼をとった。
勿論それは女性の型のものよ。薔薇の騎士様とやらみたいに膝をついたりしないからね!
すると彼女は可愛らしく目を丸くしていた。
……まあ、なんて、愛らしいのかしら、それも美女は絵になるわよね。眼福、眼福。
「私、てっきり先輩かと思いました。同じクラスで嬉しいわ」
ふふっと彼女はそう言うと華がほころぶように微笑んだ。
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