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3.王宮

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途中、宿に泊まりながらも王都には1週間かからずに行くことが出来た。合間にルードリッヒ様に姉のことを聞いてみたが、ルードリッヒ様は最近まで隣国へ留学に行っていたらしく、姉について詳しくは知らないのだと言う。

王宮に着くと、最初にルードリッヒ様だけ入り、話を通してくると言われた。それから2時間後に入ることを許可されたが、さすがにただの平民であるダンおじさんは許可されず外で待つことになった。

まず初めに通されたのは姉の住んでいた部屋だった。ルードリッヒ様と姉付きのメイドだったと言う女性と騎士が何人か付いてきた。

全体的に赤と金で統一された大袈裟な装飾の部屋は姉の趣味とは思えないほどゴテゴテとしていた。これがご貴族様の暮らしなのか、と思いながら部屋を見渡した。
それからゆっくり部屋を一周しながら置いてある物に目をやった。窓に近付く。そうしてゆっくりと私を案内した姉付きだったというメイドに声を掛けた。

「それで、姉が過ごしていた部屋はどこですか?」

「はぁ?ここですが!」

平民に話しかけられるのが気に食わないのか乱暴な口調でメイドは答える。

「姉が過ごした部屋はどこですか?」

「だーかーらー!!」

「…私には姉の痕跡が見えるのです」

「はぁ?」

「私には聖女の力はありません。それは司祭様によって8年前に証明されています。ですが、私には姉の聖なる力が金色のキラキラした光として見えるのです。そして、姉がいた場所にも聖なる力はあるためキラキラが見えるはずなんですが、ここには姉のキラキラが見えません。本当はどこで姉が過ごしていたんですか?」

「………」

罰が悪そうにメイドは目を背けた。

「…姉の居場所を今すぐ知りたいんですよね?王都にはもう結界がない。魔物が入り込むのも時間の問題ですよ?隠していていいんですか?」

そう言うとメイドは悔しそうに「こちらへ」と言って、地下へと案内してくれた。


◆◆◆◆◆◆


そこは言わば使用人の部屋が並ぶ場所だった。何となく予想はついていたため、特に驚くこともなく後をついて行った。

案内された部屋は、地下なので窓はなく、ベッドとサイドテーブル、それにクローゼットが置いてあるだけのシンプルな部屋だった。それでもパッチワークされた膝掛けとサイドテーブルに置いてある空の牛乳瓶に差した小さな花を見ると、ここに姉が住んでいた、と先程よりもしっくりきている自分がいた。

「確かに、ここに姉が住んでたいたようですね」

私はメイドにそう言うと、クローゼットを開けた。中にはシンプルな白いワンピースが2着かけてあった。

「洋服はこれで全部ですか?」

「えぇ、それだけよ。恐らく、メイド服を盗んでメイドに紛れて出て行ったのでしょうね」

それに相槌を打ちながら、サイドテーブルに付いている引き出しの中や、ベッドの下など確認してみたが特に手掛かりになるような物は見つからなかった。

「失礼します!陛下がお呼びです!」

しばらくすると騎士が来てそう言ったため、私達は部屋を出ることになった。

『ガチャッ』

ちょうど部屋を出ると向かい側の部屋からメイドが出てきた。

「あなたこの時間に何してるの?」

姉付きのメイドが諌めるように言うと

「違うんです!リゼが熱を出してて、それで休憩時間に様子を見に来ただけなんです!サボっていたわけではないんです!」

慌てたように言うメイドの後ろに確かに寝込んでいる女性の姿が見えた。

「そう。それじゃあ、早く持ち場に戻りなさい」

姉付きメイドが言うと一礼してメイドが去って行った。




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