〜猟奇的な犯罪家族の異世界渡航〜

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〜大組織の依頼〜

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 「え!? シャーキーズですか??」
 「ええ! シャーキーズって裏組織に関しての依頼はないかと思いまして」

 「あることはあるんですが,今の所,誰がやっても成功者ゼロの難しい依頼なんですよ」
 「どんな内容なんですか?」
 「シャーキーズのボスを殺す依頼ですね。ですが,シャーキーズのボスの名前,顔や姿,居場所すら分かってなくて,誰もまだ達成出来ていない依頼なんです」

 「難易度は確実にブラックランクなんですが,ランク不問で依頼を受ける事は出来ます。ですが,今まで受けた人全員がボスに行き着くヒントすら掴めないまま終わってしまった依頼なんで,誰も受ける事がなくなってしまったんですが,哲治さん本当に受けるんですか??」

 「ええ! ララさん俺が受けますよ」
 「わかりました……ではこの依頼を受け付けました。哲治さん頑張って下さい」
 「じゃあララさんまたね!!」

 哲治はギルドを後にした。
 すぐに情報収集をする。アジトはすぐに見つかった。シャーキーズは有名な組織であるみたいだった。いい噂と悪い噂両方聞こえてきた。
 街やスラムに住む悪い奴らを上手く制御したりしていたり,表向きは普通に商いをして恵まれない子供達に寄付までしているようだった。

 しかし,裏では麻薬,人身売買や売春婦まで幅広く手を伸ばしている組織のようだった。ただそれ以上の情報,特にボスについての情報は一切出てくる事はなかった。

 哲治はアジトに潜入する事にした。
 アジトは市街地から少し離れた場所にあった。
 かなり大きな屋敷でそこら中に見張りや監視している人がいた。
 哲治は持ち前の身体能力と技でいとも簡単に監視の目を潜った。

 中に入ると,屋敷の中は沢山の人で溢れていた。
 哲治は屋敷の中を 隈無くまなく探す。

 すると一つの部屋が哲治の目に止まった。部屋自体が厳重に鍵がかけられていた。哲治は部屋の鍵を全て解錠し,中に忍びこむと,金庫があった。この世界に来て初めて金庫を見る。

 哲治は金庫を開けて中を見る。
 お金でも金塊や高価な宝飾品でもなく,書類の山がそこにはあった。

 金庫に入れるほどだから大切な書類である事は間違いないのだが,哲治はこの世界を字を読むことは出来なかった。
 哲治は書類をすべて袋に詰めて盗み出し,金庫も綺麗に閉めてアジトを後にした。

 そのまま哲治はとある場所へと向かう。
 扉を開けるとカランカランと音が鳴る。
 「いらっしゃいませ~」
 レオナルドが挨拶をする。

 「あの~あやっていますか??」
 「あやですか? またですか? ちょっと待ってて下さい」
 レオナルドがあやを呼びに行く。あやが現れた。

 「あれ? どうしたの?」
 「お~あや! あやってもう字が読めるのか?」
 「そうね。大体は分かるようになったよ」
 「そうか。ちょっと解読してほしい書類があってな。お願い出来るか?」

 「分かったわ。それじゃあこっちに上がってきて?」
 あやに言われ建物の二階へと向かう。

 「こっちの部屋に入って」
 入ると質素な部屋だった。机が一つあった。

 「お父さん。楽にしてていいよ。それで? 解読してほしいってのは?」
 「この書類の山なんだけど。内容を教えて欲しいんだ。シャーキーズのボスの居場所のヒントがあればそれを教えてほしい」

 「ん~結構あるわね。ちょっと時間かかるからキッチンでご飯でも食べて待ってたらどう?」
 「いいのか? じゃあそうさせてもらおうかな」
 哲治は二階にあるキッチンに向かう。するとアンジーがキッチンで料理を作っていた。

 「あれ? どなたですか?」
 「あやの知り合いなんだが,あやにここのキッチンでご飯でも食べて待っててくれって言われたんだが」

 「そうなんですか,じゃあ座って待ってて下さい! 今用意しますから」
 「ありがとう」
 手慣れた手付きでアンジーが準備をする。

 「君はあやの友達なのか?」
 「友達とは少し違うかもしれませんが,ここの店の店主の娘でよくしてもらってます」
 「そうなのか」
 哲治の前に飲み物と食べ物が用意された。

 「どうぞ召し上がって下さい」
 「ありがとう。頂きます」
 哲治がアンジーの料理を堪能していると……


 「分かった!! 分かった!!」
 凄い勢いでキッチンに現れたあや。興奮気味に哲治に話す。

 「どうした??」
 「ボスの居場所が分かったかもしれない」
 「本当か??」
 「ええ!」

 「ここじゃあちょっと話せないから,ウチの部屋に来て」
 「分かった」
 あやに言われ部屋に向かう。

 「お父さんこれ見て!!」
 あやが見せたのはこの街の地図だった。

 「地図のこの八ヶ所をシャーキーズのボスは転々としてると思うわ」
 「間違いないのか??」

 「ええ! この書類だけど,文字だけじゃなく,暗号化もされてたわ。まさか暗号化されてると思わなかったけど,簡単な暗号文だったからすぐに解けたわ。間違いなくここのどこかにいると思おう」

 「本当か!? ありがとうあや!」
 「いいけど,場所覚えられる??」
 「大丈夫大丈夫。あやの地図が正確だから覚えやすい」

 「他には書類で分かった事はあるのか?」
 「他の書類は暗号化されてなかった。店の権利書だったり,納品書,売上などそういった書類だったよ。後は貴族の人と繋がりを匂わすような署名があったけど,他にあったのはその位だったかな」

 「なるほど! その八ヶ所全部回ればどれかにはボスが居るってことだろう?」
 「多分そうだと思うよ。もし居なかったらごめんね」
 「その時はその時に考えるよありがとうな!」

 「いいよ! 私が頼んだ依頼でもあるしね」
 「じゃあ早速行ってくるわ」
 あやと哲治は部屋を出る。キッチンの前を通るとアンジーに話しかけられる。

 「あや,このおじさんの食事途中だけどどうするの??」
 「食べて行ったら??」

 「え!? そうだなせっかくだし残りを頂くよ!」
 「この子はアンジーって言うのよ。よろしくね!」
 「アンジーか。俺は哲治だ! よろしく」

 「よろしく」
 「せっかくだからウチも貰おうかな? アンジーも一緒に食べよ?」
 「そうだな! 一緒に食べよう」
 あやと哲治,アンジーは一緒に食事をした。

 「さてと,アンジー食事ありがとう! 美味しかったよ。じゃあそろそろ俺は行くよ! 外も暗くなってきたしな」
 「わかった。またね!」
 「おう」
 哲治はトマトを後にする。

 あやが地図で示した八ヶ所はあちこちに散らばっていた。
 宿屋,大きな敷地の屋敷,酒場,孤児院,売春宿,色々な場所だった。

 哲治はすぐに片っ端から建物を見て回った。
 いつもの如く人目につかないように建物の中に入り,部屋を探した。
 しかし,どこを回っても普通に営業しているだけだった。

 屋根裏や,隠し扉がないか,地下がないかなど隅々まで探したが特に変わった所は見つからなかった。あやが言うのは転々としてるというから,今日は違うのもしれない。あやが解読した書類自体ももしかしたらフェイクなのかもしれない。

 哲治は一つ一つの場所を隈無く探した。大きな屋敷は厳重に警備されていたにも関わらず,特に何も得られなかった。怪しいと感じた場所から探してみたが,哲治はとうとう最後の場所に訪れた。

 街外れも外れにある,あばら家が最後だった。ボロボロの家で,中の様子を伺うと,テーブルが一つ置かれていて,二人の男が座って酒を飲んでいた。

 中を確認した哲治はドアをノックする。
 テーブルに座っていた男が音に反応し,ヨロヨロした歩きでドアを開く。ドアが開いた瞬間にまずは一人の男を殺した。すかさず部屋に入り,もう一人の男をとり抑えた。

 声が出せないようにし,手と足を縛った。
 哲治はその男を拷問にかけ始めた。全ての爪を剥いで,指も切り取り,耳も剥いで,目をくり抜こうとした時やっと吐いた。最後に男を殺した。ボスの居場所と名前が分かった。
 どうやらここの地下にいるようだった。特に地下に通じるような場所はないが,鞘で地面を突いてると音が軽い場所が見つかり,近辺をいじっていると地面が開き地下へと続く階段が現れた。

 地下へと降りていくと,一本道で哲治は奥へと進んでいく。
 突き当りの頑丈そうなドアの前に一人の男が立っていた。

 「だれだ??」
 地下に灯っている松明の灯りに慣れ,近くなると声をかけてきた人物の姿が見えてきた。
 体格は 隆々りゅうりゅうとしていて,身長は190センチ位あるだろうか。歴戦の勇者のように傷が顔や腕や脚のあちこちに見えていた。さらに彼は鎧をも纏って背中に大きな剣を背負っていた。
 「お前が誰だが分からないが,俺の敵だろ!?」
 「…………」
 「まあいい,とりあえずお前を殺す」
 哲治は双剣を抜いた。相手も剣を抜いた。
 一本道の場所で戦いが始まった。


 哲治は華麗に踊り舞い始めた。ふと気付いた瞬間に一瞬で姿を消す。壁から壁上から下,右から左へと縦横無尽に駆け巡り相手を翻弄し捉えさせない。相手の男は構えから一切動けないでいる。眼だけは動いている。
 
 哲治は相手の息遣い,タイミングを見ていた。人間には動けないタイミングというものが存在する。分かっていても身体がどうしても反応出来ないという現象があり,哲治はそのタイミングを図っているようだった。

 勝負は一瞬だった。時間にしたら戦闘が始まって,十秒も経っていないだろう。
 哲治が攻撃を繰り出した瞬間,男は構えたまま首を切られ大量に血が吹き出し,地面に倒れた。

 男にもう一度剣を突き刺しとどめを刺した。

 奥にあるドアへと向かう。ゆっくりとドアを開ける。
 分厚い鉄のドアでとても頑丈な作りだった。

 少し開くと中から女性の声が漏れてくる。何人かの女性の色っぽい声が漏れてきた。
 そのままドアを開けると,大きな部屋があり,中に大きなベットに男が一人と数人の女性が絡まっていた。

 「ん?? なんだ!? ルドルフか? 邪魔するでない!」
 「お前がピストか??」

 「ああ!? 誰だ――」
 聞く前に哲治は首をはねた。
 すぐに女の悲鳴が響き渡る。

 「おい! コイツがシャーキーズのピストか??」
 女性達は首を縦に振る。

 「そうか,ありがとう」
 一言お礼を言うと,哲治は全員の首をはねた。

 そしてシャーキーズのボス,ピストの首を持ち帰る。
 哲治は地下を出て,あばら家を後にした。

 哲治はギルドへと向かった。
 夜のギルドは騒がしい。ギルドは冒険者の為に宿泊施設,食事,酒場としても役目を同時に担っている事もあり,夜になるとどんちゃん騒ぎしている事が多々ある。

 哲治はいつものように人喰いて揶揄されながら,カウンターへと向かう。そこにはギルドマスターのランベルクがいた。

 「哲治じゃねえか。なんだ依頼達成の報告か!?」
 「ランベルクさんこんばんは。そうです! 依頼を達成しました」
 そう言いながらランベルクの前に首を差し出した。

 「ん? 誰の首だ??」
 「シャーキーズのボス……ピストの首です」
 「あの!? シャーキーズのか!?」
 「ええ! 本物だと思いますよ」

 「全く消息を掴めない,名前も姿もヒントすら掴めなかったのに哲治お前は倒したっていうのか!?」

 「まあ俺だけの力じゃありませんが」
 「わかった。しかし確認が取れるまで時間がかかる。これが本物のボスかどうかわからないからな」
 「わかりました。いつでもいいですよ! じゃあランベルクさん俺はこれで」

 「なあ哲治,お前どうやって突き止めたんだ??」
 哲治はランベルクの質問に笑顔を返しただけだった。

 「ま,いいけどよ!」
 「じゃあランベルクさん俺はこれで」

 哲治はギルドを後にし,宿へと戻って行った。
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