小学6年生、同級生30人全員を殺した日本の歴史史上最凶最悪の少年殺人鬼が、異世界の12歳に乗り移り、異世界を駆ける!

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第三章

残された魔法

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 エリーゼの地図を頼りに、三日かけて目的の場所に到着。
 山脈を二つ越え、田舎のさらに田舎にある山を登り、山頂に来ていた。
 
 周りを見渡しても、人が住んでいるような場所は一切見当たらない。気配があるのは野生動物だけ。そもそも人が住むには不便過ぎる場所だ。


 「ジャン様、本当にこんな場所にあるのでしょうか?」
 「ん~どうだろう? でもこの場所で合っているはずだよ」
 「いい天気で、いい眺めだねジャン君! 戦いなんて忘れてさ、ゆっくりしようよ」
 ゲルテ伯爵は、気持ち良さそうに大の字になって寝そべった。

 (地図には他になんて書いてあるんだ?)
 「顔位の大きさの石に顔が彫ってあると。その中で女性が掘られてた石像を見つけ、魔力を注げ。と書いてある」

 (石像ってこんな場所にか?)
 「探してみようか」

 山頂を散策すると、確かに顔程ある大きさの石があちこちに転がっていた。
 その石を見てみると、人の顔が彫ってあったが、どれもが男の顔。
 そのままグルっと女の顔を探し回る。沢山ある中で一つだけ女性の顔をした石をやっと見付けた。

 「本当にあったね」
 (とりあえず魔力を注いでみろよ)
 「うん」
 ジャンはその石に魔力を注ぎ始めたが、何も反応しない。

 (何も起きねぇな……)
 「ユウタが魔力を流してみてよ」
 (俺が? 分かった)

 俺が魔力を流すと、突然石が光り出し、目の前が真っ白に。
 気付くと知らない場所に。

 誰かの部屋? だろうか。机にベッド。本棚などが置かれた部屋。
 部屋の中を見渡すが、誰かが居るような気配も様子もない。ホコリが溜まり、ホコリっぽい独特のニオイと、長年使われていないであろう部屋。

 机の上に置いてある巻物のような物が気になった。それだけが異様に綺麗だったからだ。
 巻物に近づいて手に取ると、ヒラリと一枚の紙が落ちた。俺は紙を拾って中身を見る。

 『この場所に訪れた偉大な者へ』

 『私は、とある国で魔法の研究をしていた。時空魔法についてだ。長年結果を出せなかった私は、国を追い出されてしまった。それでも私はこの場所で研究を続けた。私はどうしても過去に戻りたかったのだ』

 『私が求めた時空魔法は完成しなかった。ただ研究していく中で生まれた新たな魔法がある。それが時を操れる魔法だ。私が創った魔法をあなたに授けよう。スクロールを開けると魔法を覚える事が出来る。もし私の我儘を聞いてもらえるなら、時空魔法の研究を受け継いで欲しい。そして過去に戻り、私の娘と妻に謝って欲しい。すまなかったと』

 『もうじき私は死ぬ。そなたに託したい。魔法使いマロン』 

 「時を操れる魔法だって? 本当かよ」
 (不可能だと言われている魔法研究の一つだよ)
 「とにかくこいつを開いてみるぞ?」

 俺は少し緊張しながら、縛られた紐を緩めてスクロールを開いていく。
 中身には何も書いていなかった。ただのイタズラか。騙されただけか?
 そう思っていると、スクロールから光り輝く文字が浮かび始めた。何の文字で、なんと書かれているのかは分からない。文字は空中に舞い始め、文字達が俺の中へと入り込んできた。

 不思議な感覚だった。なんと表現すればいいのか分からない。
 ただ一つ分かるのは、時を操る魔法をこうすれば使える。という感覚が宿った。

 「ジャンも感じたか?」
 (うん。なんか変な感じだけど、確かに時魔法を使える感覚はあるよ)

 「戻ったら試してみるか……それよりもどうやってここから出ればいいんだ?」
 部屋にはドアや窓らしいものは一切なく、出入り口らしきものは見当たらない。

 (あっち、部屋の奥に進んでみて? 何か魔力を感じる)
 「えっ!? どっち!?」
 (あっちだよあっち!)

 俺はフラフラと部屋をさまよい歩いていると、床に魔法陣が現れて光に包まれた。
 
 ――。
 「ジャン様!? ジャン様!?」
 ジェイドの声に俺は目を覚ました。

 「ジャン様! 無事ですか? 急に姿を消したらと思ったら今度は倒れていたんです。びっくりしましたよ……」
 「倒れていた? そうか……」

 光に包まれてからの記憶がない。俺は倒れていたのか。
 「ジャン君……大丈夫かい?」

 「よっと!」
 …………。

 「おいジャン。本当に時間が止まっているぞ」
 さっそく俺は時魔法を使ってみた。すると、ジェイドとゲルテ伯爵の動きが完全に止まった。近くに生えている草も全てが止まっていた。

 「これ凄すぎじゃないか?」
 (凄いなこの魔法……)
 時間が止まっている間に、二人の背後に移動する。

 「ほいっと!」
 魔法を解くと、止まっていた時間が再び動き始める。

 「あれ? ジャン君?」
 「こっちだよ!」
 ジェイドとゲルテ伯爵は振り返り、何か不思議そうに俺の顔を見つめる。

 なるほどな。反則級に使える魔法だなこれは。
 「もう用は済んだ。帰るぞ二人共」

 エリーゼの言う通り、戦況を変えられるだけの魔法を受け取った俺は、皆が待つ場所へと急いで戻る事にした。
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