小学6年生、同級生30人全員を殺した日本の歴史史上最凶最悪の少年殺人鬼が、異世界の12歳に乗り移り、異世界を駆ける!

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第三章

滅びゆく中で

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 降り注いだ何かは、爆弾? いやロケットか?
 雨のように降るロケットによって、首都の建物が破壊、吹っ飛んでいく。
 逃げ切れていない仲間達がまだ中にいる。

 「テディ!! 仲間を助けろ!!」
 俺の声に反応したテディは、仲間を守るようにドーム状の屋根を魔法で展開した。作り出した屋根にミサイルが降ってくる。

 守るといっても数が多すぎる。屋根が破壊されていく。
 「堪えろテディーー!」

 「じょーーーーーーーーー!!」
 凄まじい魔力が注がれていく。
 俺が回復魔法で使う量の十倍はあるだろう。

 首都に降り注ぐミサイルの雨は止まない。
 それらは全てを無に帰す。

 「ドクター! もう持ちません!」
 守っていた屋根が持ち堪えられず破壊され崩れていき、その下敷きになっていく仲間達。
 さらにそこに再びミサイルが追い打ちをかけるように降ってくる。

 凄まじい爆風と熱風が俺の所まで届く。
 風によって砂が舞い、砂に隠れて状況が見えない。
 一体どうなった?

 「ドクター。終わりの時間が来たようです。さようなら!」
 「さようならって何だよ」
 テディの体が光り出し、巨体が一瞬で消えていく。
 肩に乗っていた俺は、そのまま地面に落下していく。

 「おーーーー!」
 「あっ! ドクターだじょー! ギャハハハハ」
 
 「テディ助けてくれーー!!」
 「ポポポポポポポポポポポポポポポポ!」
 
 落ちていく中、テディは地面に両手を向けた。
 すると土が動き出して、俺達の落下を受け止めてくれた。
 
 「助けったよテディ」
 「オイラは何で落ちてんだじょ? ドクターと遊んでたぁ?」
 「遊んでないよ。私達は戦っていたんだ」
 
 「それは大変だじょー! 皆は無事?」
 「分からない……とにかく今は皆を助けるんだ」
 「分かったんじょーーー!」
 テディは急に駆け出して、砂埃の中に消えていった。

 「砂埃のせいで身動きが取れない……」
 「主様ー! 主様ー!」
 遠くから声が聞こえる。

 「リリアー!? こっちだー!」
 「主様ーー!!」
 見えない状況下で、どうにかリリアと合流する事が出来た。

 「他の状況はどうなってるか分かるか?」
 「申し訳ありません。私にも何が何だか……」
 
 しばらくすると、何も見えないような状態から回復し、状況が分かるようになった。
 ついさっきまであった首都テンダールは、全て跡形もなくなっていた。

 街並みも、頑丈だった要塞も全てが破壊され、ただの瓦礫の山。

 「とにかく皆が無事かどうか確認し、怪我人は全員私の所に集めてくれ」
 「直ちに!」

 ジャンもリリアの後を追って仲間を救出しに行く。
 探している中でジェイドにシャオ、エルガルドも無事だった。エルガルドには食料を探してもらい、その他は救出に尽力した。

 ずっと端っこで隠れていたゲルテ伯爵を見つけ、ルークも無事だった。隊長格は無事だったが、他の部下達がどうなっているのか……。一体何人生き残っているのか?

 救出作業は、日が暮れるまで続いた。
 汗と砂だらけで疲れ切った体。陣地に戻るといい匂いが漂う。
 匂いのする方へとジャンは走り出した。そこには外で料理をしているエルガルド達が。

 「その食料どうしたんだ!?」
 「地下倉庫を見つけたんだドクター。三十日位ならもちやすぜ」
 「大手柄だなエルガルド!」

 「ウヒョー美味しそうだじょー!」
 「押すな押すなお前ら! 並べバカ野郎!」

 (エルガルドのおかげで助かったなジャン)
 「それでも、そう長くは続かないと思うけどね」
 
 食事を終えたジャンは、怪我人が集められた場所へと移動する。
 怪我人の人数が多く、外にそのまま寝かされている。
 
 俺とジャンは日が昇ってくるまで怪我人達に魔法を使い続けた。
 最終的に疲れ果ててぶっ倒れた。

 ――。
 「ジャン様……ジャン様……」
 ジェイドの声にジャンは目を覚ました。
 魔法の使いすぎか、頭がグワングワン回っている。

 「今の時間、分かるか?」
 「お昼頃になります」

 「救出は……どうなっている?」
 「テディのおかげで作業ははかどっていますが、生きている人は多くありません」

 「分かった……シャオとリリアを呼んできれくれ。怪我人はどんどん連れてきて。全力で治す」
 「かしこまりました」

 起きてすぐに回復で怪我人を治していくジャン。
 (おいおい無理するなよ?)
 「ユウタもだよ! 僕が力尽きたら交代してよ!」

 「お呼びでしょうか?」
 「旦那、どうしたんだい?」
 やってきた二人共、泥まみれの姿だった。
 ジャンが寝ている間も、ずっと作業をしてくれていたんだと思う。

 「二人に頼みたい事がある。ロア王国に戻って報告をして来てほしい。それと共に指示と食料をもらってきてほしい。連れて行く人数は二人に任せる」

 「主様、シャオと一緒ですか?」
 「そうだ。リリア頼んだ」
 リリアが明らかに嫌な顔をした。

 「旦那ー。食料って事は酒貰ってきてもいいのかい?」
 「貰えるなら好きなだけ貰ってきていいよ!」
 「なら行ってこよう。楽しみだ」

 「そんな嫌そうな顔するなよリリア。旦那の指示だぜ?」
 「分かっているそんな事は!」
 「ホラホラ、さっさと行くぞ」
 「おい待て貴様!!」

 額に汗を掻きながらジャンは必死に部下達を治してく。
 休憩も食事もせず、ぶっ続けで魔法を使い続けた。治せる人もいれば、そのまま命尽きる人も大勢いた。

 全員を助ける事は出来ないのは分かっている。それでも全員を救いたいというジャンの気持ちが痛い程伝わってきた。
 俺はそんな気持ちに動かれていく。

 日が暮れる頃には、俺自身も魔力の限界でフラフラになっていた。
 食事を終えて、自分の天幕にジェイドを呼び寄せた。

 「今分かっている被害はどの位なんだ?」
 「死傷者の数が全体の三割です」
 
 「死者は?」
 「そのうち二割位かと……」

 (二割か、かなり微妙な所だ)
 (えっ!? たったの二割なら大丈夫だろ? それに怪我人は治せるだろ?)
 (そうでもないんだよ……シャオとリリアが帰ってくるまで、とりあえず待機だね)

 「ジャン様? 大丈夫ですか?」
 「平気だよ。シャオとリリアが帰ってくるまでここで待機する。他の皆にもそう伝えておいてもらえるか?」
 「分かりました」

 ジェイドが立ち去り、一人になったジャンは考え込み始めた。
 
 (何考えてんだよ)
 「首都テンダールは壊滅したけど、魔法国テンダールが壊滅した訳じゃない。本物の国王もどこに居るのか。ナバーロの動向も気になる……今攻められたら厳しいよ」

 (まあ大丈夫だろ?)
 「とにかく今は、シャオとリリアが帰ってくるのを待つしかない」

 二人が帰ってくるまでの間、仲間達を救出し、治せる仲間はすぐに治し、治せない……死んでしまった仲間は土に埋めて弔った。
 シャオとリリアが帰って来たのは、二人が出発してから十七日が経過していた。
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