小学6年生、同級生30人全員を殺した日本の歴史史上最凶最悪の少年殺人鬼が、異世界の12歳に乗り移り、異世界を駆ける!

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第三章

戦場のフルーツ

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 「おいおい。何だこりゃあ……ひでぇなおい!」
 戦場であるアズーラ城に到着して見たのは、屍の山、山、山。

 その殆どが、ロア王国軍のものだった。
 「ジャン様、これは……戦いが続いているんですかね?」
 「分からない。とにかく自陣に行ってみよう」

 シャイデン軍が居るであろう自軍に向かった。
 「ジャン・アウル子爵でしょうか?」
 「あなたは?」

 「シャイデン軍で副将を務めていましたルークと言います」
 左手を無くし、目も一つ無くしているルーク。
 そんな状態でも闘志は消えず、歴戦の虎将と呼べる雰囲気を醸し出していた。

 「来てくれた事に感謝します。こちらに来て貰えますか?」
 「分かった」

 「ジェイド、軍を休ませてくれ。何かあったらすぐに私に報告してほしい。ゲルテ伯爵も一緒に」
 「分かりましたジャン様」
 「待ってよジャンく~ん」
 
 今にも泣き出しそうなゲルテ伯爵を連れて、ルークに付いて行く。
 周りを見ると、疲弊しきった兵士達で溢れかえっていた。
 怪我人も多く、士気が完全にない。

 案内された天幕の中へと入る。
 テーブルと椅子が置いてあり、ジャン達は座った。

 「単刀直入に聞きたい。現状どうなっているんだ?」
 ルークが重い口を開き、説明してくれた。

 「正直言って私達にも何が何だかハッキリ分かっていません。実際に見て経験した現実だけを話させてもらいます」

 「開戦前からおかしいとは思っていたんです。見た事がない武器や動く鉄の塊などがあり、テンダール魔法国の新兵器だと思いました。なのでシャイデン様も慎重でした。ですが、開戦と共に訳の分からない攻撃を受け、隊長職が次々に狙われ、やられていきました」

 「その攻撃は、魔法ではなかったと?」
 「魔法ではないと思います。その時に大きな魔力は感じられませんでしたし、かなり離れた場所だったので、少量の魔力攻撃では届く訳がないと」

 「その後は? どうなった?」

 「すぐに軍を編制し、歩兵を使って突撃させました。すると進んだ地面から爆発が起こったり、こちらの攻撃範囲外から攻撃を喰らったり、アズーラ城に近づく事も出来ませんでした。完全に押されて苦戦していました。そこでシャイデン様は、士気を上げようと自ら先頭に立って戦いに出たのですが……」

 「シャイデン様は、他の隊長と同じように一瞬でやられてしまったんです……」

 (ユウタどう思う?)
 (見てみないとなんとも言えないな~)
 (ユウタ、出来るだけ回復頼めるか?)
 (また~? ああもう! 仕方ないな!)

 「テンダール魔法国は、こちらに攻めてくる様子は、今の所ありません。きっとこちらが諦めるまで城からほとんど動かないつもりでしょう」
 「分かりました。怪我人を一か所に集めてもらえますか? 重症の方から治します!」

 「それは本当ですか!?」
 「私の得意な魔法は、回復魔法ですからね……まずは、ルークあなたから治します! こちらに来てもらえますか?」

 (頼んだよユウタ)
 (はいよ)

 ルークの体に触れて魔法を使う。徐々に左手が治り、目が治っていく。
 「おおお! ありがとうございます! ありがとうございます!」
 
 「いいよー別に! それよりおっさん。早く集めてくれ! 回復魔法って使うとかなり疲れるから出来るだけ早く終わらせたいんだ」
 「わ、分かりました! 直ちに行います」
 ルークが走って外へ出ていく。

 「ジャンく~ん! 僕帰っていい!? 帰っていいかな!?」
 「今更帰るのか!? あれだけカッコいい事言っておいて帰ったらダサいぜ!?」

 「ちょっと待ってジャン君! 今なんて!?」
 「だからダサいって」

 「いや、その前!!」
 「カッコいい事言っておいて――」
 「本当に!? カッコいい!?」
 両手で肩を強く掴まれ、凄い形相で俺の事を見ている。

 「あの時、年下の俺を行かせたら伯爵家として名が廃るって言っていた時はカッコ良かったよ」
 「だあぁぁぁぁぁぁ!!」

 「僕はモテるかなぁ~?」
 あまりにも真剣な顔に、俺はたじろぐ。

 「この戦いで活躍したら、モテるんじゃないか? 負けそうなんだ……活躍したら目立つし! さらに活躍すれば名声もお金だって貰えるからモテるんじゃないか?」

 「なるほどジャン君! キミの気持ちは受け取った! 僕は頑張るよ! やったー!」
 よく分からないが、ゲルテ伯爵がやる気になったようで良かった。

 「ジャン子爵! 準備が整いました!」
 「分かった行こうか」
 外で出て、陣の奥へと進んでいく。

 そこにはテントが、並びで四つ張られていた。
 「まさかこのテント全部怪我人??」
 「そうです……」

 「おいおいマジか。大丈夫かよ……」
 「左から重症者になっています」
 「チッ! よっしゃ! やるかぁー!」

 一番左のテントに入る。
 「うぅ~~~~」
 「あぁぁぁぁぁぁ」
 かなり重症な人達が、所狭しと並べられていた。

 手が無い者、足が無い者、腹から内臓が飛び出している者。
 今ギリギリで命を繋ぎ留めている者までいる。

 死体が大量に置かれた場所とは、戦場で沢山死んでいる場所とはまた違い、この場所は独特の臭いが漂う。
 生きることに諦めている奴、諦めてない奴で臭いが違うんだと俺は勝手に思っている。

 そんな事はどうでもいい。
 「おらいくぞーーー!!」

 回復魔法をとにかくかけ続ける。
 「どゅああああああ! もう限界!」
 俺は倒れ込んだ。汗が止まらない。

 (お疲れユウタ)

 「お疲れ様ですジャン子爵。子爵のおかげで救われた命が多くあります」
 「そんな事より今は夕方? 夜? 朝?」
 「もう夜も更けています」

 「あ~マジか~。もう動けないから俺のテントまで運んでくれる?」
 「かしこまりました。おい! ジャン子爵を運ぶの手伝ってくれ!」

 「「「ウェーイ!!」」」
 体が治って息を吹き返した兵士達に担ぎ上げられ、運ばれていく。

 「「「ウェーイ!!」」」
 俺のテントに到着しそのままベッドに降ろされる。

 「「「ありがとうございましたーー!」」」
 「ウェーイ……」

 「何だか愉快に帰ってきたな旦那。ヒック!」
 「あれ? なんで俺のテントにシャオが?」
 
 「大した用事じゃないんだけどな。旦那、この戦いやれるのか?」
 「どういう意味だ?」

 「シャイデン・クロウがやられた戦いなんだろ? 俺でも知ってる名だ。運で死んだ。油断してやられたって事は絶対にない。だからテンダール魔法国との戦いは、かなりマズイって到着してすぐに感じた」

 「俺だったら逃げ出してる。自分の命の方が大事だからな。ジェイドとリリアもそう感じてるみたいだ。今までで一番の死闘になるってな……旦那に救われた命だ。死ねって言われれば死ぬ覚悟はいつでも出来てる。ただ俺にも部下がいる。犬死だけは避けてぇ」
 酒を呷るシャオ。テキトーそうに見えてちゃんと隊長なんだと思い俺はフッと笑った。

 「戦う前に負ける事を考えるバカがいるかよシャオ! 俺は、いや俺達は勝つ為にはここに来たんだ。勝って美味い酒をシャオにも部下にも飲ませてやるよ!」
 
 「ハハハ! そいつは楽しみだ旦那! 何かあれば俺を頼ってくれ」
 「ああ、分かったよ」
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