小学6年生、同級生30人全員を殺した日本の歴史史上最凶最悪の少年殺人鬼が、異世界の12歳に乗り移り、異世界を駆ける!

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第三章

好きこそものの上手なれ

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 何だこれは?

 距離を取って再び斬りかかる。
 アダムスが持つ杖が反応し、自動的に魔法のバリアが張られ、アダムスを守っている。

 「馬鹿な人。今まで何人の暗殺者が私を狙ってきたと思っているの? それでも全員が私を殺す事が出来なかった! この聖女の杖がある限り私への物理、魔法攻撃は効かないわ」
 杖の先が光り出して、俺に向かって光線が放たれた。

 俺はギリギリで避ける。
 光線は床を一瞬で溶かし、マンホール程の穴が出来上がった。
 
 喰らったら一発でゲームオーバーだな……。
 だが、避けられない訳じゃない。

 「この攻撃を避けるなんて、中々やるわね! これはどうかしら?」
 アダムスが杖を掲げると、杖の周りに眩い光が何十個と現れ、鉄砲玉のように俺に向かって発射された。

 俺は自分の感覚に従ってギリギリで避けていく。
 一つの光が、脇腹を擦《かす》る。

 服と表面の皮が溶けた。
 「これも避けきるなんて、大したものよ。褒めてあげる!」

 肉をムシャムシャと食べながら、ギリギリ人間の形をしたアダムスが喋る。
 壁に飾られた剣を手に取り、アダムスに投げつけた。

 ガキン!
 やはり阻まれる。

 「そんな事をしても無駄よ。私が杖を持っている限り攻撃を当てる事は出来ないわ」

 (ユウタどうするんだ? 思ったよりも厄介な相手だよ? それに攻撃も油断出来ない……)
 (一つ分かった事がある)

 (なに?)
 (あの魔法、バリアが張られるまで僅かだけど時間がある。どういう条件で張られるのか分からないけど、常に張られている訳じゃない。今は張られてないだろ?)

 (それがどうしたって言うのさ)
 (つまり、杖が反応して魔法が張られる前に攻撃を届かせりゃあ良いって事)

 (そんな、むちゃくちゃな!)
 「脳筋上等ーー!!」
 俺は、さっきよりも力を入れて斬りかかった。

 攻撃は阻まれる。
 しかし、やっぱりタイムラグがある。本当に一瞬だが!

 暗殺で殺すつもりだったから、時間をかけていられない。
 いくら周りの兵士達を倒したと言っても、これだけ派手に暴れたのだから、もう少ししたらきっと街に居る警備兵などが集まるに違いない。

 ワンチャンスといったところか……。
 中々どうして楽しい。緊張感とヒリつく感じがたまらない!

 「ふぅー。スゥーッ」
 俺は深く息を吐き、息を吸った。

 アダムスが放つ魔法を、俺は避けていく。
 見てから避けるのでは遅い。

 あえて攻撃出来るタイミングを与え、それを予測して俺は避けていた。
 部屋を時計回りに周りながら、壁まで使って。

 このままだとジリ貧だな。俺は覚悟を決めた。

 俺は進む! アダムスに向かって!
 的を絞らせない為に、ジグザグに動きながら。
 
 避けきれない攻撃は、ギリギリで擦めさせる。
 深い傷は、強引に回復魔法で回復させながら突っ込む。

 俺の間合いまで距離を詰めた。
 そして俺は、その場でしゃがみ、天井に向かって真上に全力で跳んだ。

 「こっちだ!!」
 声に反応したアダムスは、天井を見上げる。

 ボールを強くドリブルした時、手に引っ付いている時間が長いように、天井に足が付いている時間が一瞬長い。
 天井がぶっ壊れる程強く、アダムスに向かって俺は再び跳んだ!
 その瞬間、右手に持っているダガーをアダムスの顔、目を狙って投げつけた。

 同時に空中で高速前宙し、ダガーの柄頭《つかがしら》にかかと落としをブチ込み、ダガーの勢いをさらに加速させた。
 
 これ以上加速させた攻撃は、俺の手札にはない!

 「ビギョエァァァァァ」
 人間の悲鳴とは思えない、怪物の断末魔のような叫び声を上げ、アダムスは杖を床に落とした。
 手から離れた瞬間、さっきまで感じていた魔力の気配が無くなる。

 バリアに阻まれる事なくアダムスの身体に着地する事が出来た。
 胸よりも出ている腹を足場にし、胸ぐらを右手で掴み、左手に持っているダガーを、もう一方の目に差し込んだ。

 「バギャァァァァァァァァァァァ」
 アダムスは、ヨダレを撒き散らしながら叫ぶ。

 俺は刺さった二本のダガーを抜き取り一言。
 「残念ながらお前は、この世界ではここで退場だ!」

 そして首を斬り落とした。
 スプリンクラーのように噴き出すはずの血が、アダムスの血はドロドロと溢れ出てきた。
 一つも美味しそうに感じない。

 聖女と呼ばれるような人間だから俺は期待していた。
 極上の女をこの手で殺せるのではないかと……。
 現実はこんなものか。

 外が何やら騒がしくなってきた。
 (ユウタ早く逃げよう)
 「ああ、分かってる」

 その場からすぐに撤収し、聖都を後にした。
 二日かけて自軍の陣地まで戻った。

 「失礼します!」
 「ジャンですか? 入って下さい」

 「事情は聞きました。仕事は上手くいったんですか?」
 「滞りなく……終わらせてきました」

 「後はテレジア様待ちという事ですか?」
 「全てが順調に上手くいけば、無血でミリア聖国を手に入れる事が出来るでしょう」

 「お手柄ですジャン! 後はゆっくり休んで下さい!」


 それから五日後。
 ミリア聖国の新しい代表者テレジアによって、正式に国をロア王国に明け渡した。

 この時をもって、ミリア聖国という国は無くなった。
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