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第三章
大将レオン
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「面白い作戦?」
「言葉が悪かったですね。とにかくこれを見て下さい」
テーブルに膨大な資料を広げた。
「これがどうしたっていうの?」
「長くなりますが、話を聞いて下さい」
「戦争が始まる事を知ってから部下にミリア聖国に潜入してもらい、出来るだけ情報を集めさせました。戦力よりも国の歴史や現状などについてです」
「そして分かった事があります。ミリア聖国では現在、権力闘争が勃発している最中なんです」
「それが今回の戦争とどう関係しているのよ?」
「順番に説明します。ミリア聖国は元々、ミリア教と呼ばれる宗教を信仰している人達とミリア教のトップである聖女と呼ばれる女性によって興した国なんです。初代聖女は祈りで人々の傷や病を癒やし、干ばつした地域で祈ると雨を降らし、祈ることで畑は豊作になったのだとか。そんな場所に人が集まり、聖女の力と慈悲深さに魅せられた人々がミリア教を信仰し、国として成長してきたそうです」
「そんな奇跡のような魔法使いだったのかしら?」
「嘘なのかおとぎ話なのかは確かめようもありませんですが、本当だとしたらとんでもない魔法使いです」
「しかし、国の運営となると面倒な事が起きてきます。二代目聖女は誰にするのか? 初代と同じような事が出来るのか? とか色々とです。初代聖女が脚色された聖女だったとしても国を興し成長させた事実はある訳ですから、人を惹き付け動かし、国のトップとして実力があったのは間違いありません」
「ですが、ここ三代の聖女の行いを見ると、それはそれは酷いものでした。金と権力に溺れ、信仰心という言葉を使って税を取り上げ、贅沢三昧しているそうです。民や国に何かが起きても、それは信仰心が足らないからと言って何もしてくれないそうです」
「それは……酷いですね」
「その通りです。ですが、聖女の権力は絶対的で強く、逆らえないそうです。そんな酷い中で、ミリア聖国に新たな宗教が生まれました。ディムス教です。ミリア教に賛同出来ない人達が集まって創られました」
「辛抱強くコソコソと信仰者を集め、創始者だった人の孫が現在、ディムス教のトップとして活動しているそうです。初代ミリア教の聖女再来と呼ばれ、各地で奇跡と呼ぶに相応しいと力を使っているとか」
「祈る事で雨を降らし、畑を豊作にし、人々の病を救っていると。そんなディムス教は、信じられない早さで信仰者を増やし、一気にミリア教とミリア聖国に影響力を持つ権力を手に入れました。ディムス教の現トップでるテレジアは、権力や富には興味がなく、民が安心して豊かに暮らせる国を目指しているそうです」
「だからこそ権力者として政治に参加して、国のやり方を変えようとしているみたいです」
「ミリア聖国の内情は分かったけどそれでどうしようと?」
「ディムス教のトップであるテレジアを説得します!」
「「えっ!?」」
ジャンとロベルタの二人はハモった。
「テレジアを説得出来れば、ミリア聖国はきっと国を明け渡してくれます」
「なんでそんな事を言い切れるのよ!!」
「今現在ミリア聖国での一番の権力者が事実上ディムス教のテレジアである事。そして権力者も次々にディムス教に改宗している事実。ミリア聖国をロア王国に吸収されても、ルイス国王は決して蔑ろにはしないはずです。むしろ手を取り合って協力し平和を望んでいるでしょう。それはきっとテレジアも同じ気持ちのような気がします」
「ここに集められた報告書全てに目を通して感じた事ですが、ディムス教のテレジアという女性は、本当に慈悲深く人々の為に力を使い、活動していたんだと分かります。それにテレジアの事を悪く言う人が誰一人として居なかったそうです。そんな人間普通は存在しません」
「もしこれら全てが計算で、国を乗っ取るためにやっていたとしたら完敗です! 拍手を送りたいぐらいです。ただ、私が考えているような人物であれば説得する価値があります。そしてその作戦を実行に移せる人物が目の前に居るというのもあります」
レオンの目線がジャンに注がれた。
「私がですか……!?」
「ジャンの能力なら誰にも気付かれずにひょっこりテレジアの居る場所に侵入し、話す事など簡単ではないでしょうか?」
「どこに居るのかご存知なんですか?」
「この戦場に来ているはずです! 今日見たあの力……テレジア以外考えられないでしょう」
「もし説得出来なかった場合は……」
「殺して下さい」
「相手の士気を上げるような事をしていいんですか?」
「私の予測としては、最初は士気がとてつもなく上がり、苦戦すると思いますが、徐々にテレジアのいないミリア聖国に未来なんてあるのだろうか? と思い始める人達が現れ、味方に引き入れ易くなり、寝返り易くなると思っています」
「そんな都合良くいきますか?」
「いいえ、思ってませんよ! だから説得して下さい」
(マジで言ってんのかよ! そんな簡単にいくのか?)
(分からない……でもレオンが何となくで発言するはずがない。少なからず可能性があると思って言っているとは思うよ)
「私にはハッキリ言って分からないわ! 説得? 国を明け渡す? ありえない」
「ぼ、僕はその作戦賛成です。戦わないならそっちの方がいい」
「今の説明だけではないんですよロベルタ。ミリア聖国はさらに問題を抱えていて――」
レオンが次々に、情報と考えを口に出していく。
絶対とは確かに言い切れないが、頭の悪い俺でも説得する価値はある。
と思わせるには十分な説明だった。
「確かにやる価値はありそうね。それに説得する為に兵を動かす訳でもないし! 説得が上手くいったら私が活躍する場がなくなるのは癪だけど、上手くいかなくても安心していいわよジャン。私が大いに活躍してあげるから!」
「頼もしい限りです!」
「では準備をするので作戦実行は七日後に! 皆さんお願いします!」
次の日から戦場では睨み合いが続く。
万を超える軍勢が平原にてほぼ動かない。
こちらから手出ししなければ、ミリア聖国から攻めてくる事がないからだった。
全く戦わないのは明らかに怪しいから時々交戦したが、牽制のようなもので、お互いにほとんど負傷者は出なかった。
そして七日が経過した。
――バサッ!
「こんばんは……あなたは……一体どなたですか?」
「言葉が悪かったですね。とにかくこれを見て下さい」
テーブルに膨大な資料を広げた。
「これがどうしたっていうの?」
「長くなりますが、話を聞いて下さい」
「戦争が始まる事を知ってから部下にミリア聖国に潜入してもらい、出来るだけ情報を集めさせました。戦力よりも国の歴史や現状などについてです」
「そして分かった事があります。ミリア聖国では現在、権力闘争が勃発している最中なんです」
「それが今回の戦争とどう関係しているのよ?」
「順番に説明します。ミリア聖国は元々、ミリア教と呼ばれる宗教を信仰している人達とミリア教のトップである聖女と呼ばれる女性によって興した国なんです。初代聖女は祈りで人々の傷や病を癒やし、干ばつした地域で祈ると雨を降らし、祈ることで畑は豊作になったのだとか。そんな場所に人が集まり、聖女の力と慈悲深さに魅せられた人々がミリア教を信仰し、国として成長してきたそうです」
「そんな奇跡のような魔法使いだったのかしら?」
「嘘なのかおとぎ話なのかは確かめようもありませんですが、本当だとしたらとんでもない魔法使いです」
「しかし、国の運営となると面倒な事が起きてきます。二代目聖女は誰にするのか? 初代と同じような事が出来るのか? とか色々とです。初代聖女が脚色された聖女だったとしても国を興し成長させた事実はある訳ですから、人を惹き付け動かし、国のトップとして実力があったのは間違いありません」
「ですが、ここ三代の聖女の行いを見ると、それはそれは酷いものでした。金と権力に溺れ、信仰心という言葉を使って税を取り上げ、贅沢三昧しているそうです。民や国に何かが起きても、それは信仰心が足らないからと言って何もしてくれないそうです」
「それは……酷いですね」
「その通りです。ですが、聖女の権力は絶対的で強く、逆らえないそうです。そんな酷い中で、ミリア聖国に新たな宗教が生まれました。ディムス教です。ミリア教に賛同出来ない人達が集まって創られました」
「辛抱強くコソコソと信仰者を集め、創始者だった人の孫が現在、ディムス教のトップとして活動しているそうです。初代ミリア教の聖女再来と呼ばれ、各地で奇跡と呼ぶに相応しいと力を使っているとか」
「祈る事で雨を降らし、畑を豊作にし、人々の病を救っていると。そんなディムス教は、信じられない早さで信仰者を増やし、一気にミリア教とミリア聖国に影響力を持つ権力を手に入れました。ディムス教の現トップでるテレジアは、権力や富には興味がなく、民が安心して豊かに暮らせる国を目指しているそうです」
「だからこそ権力者として政治に参加して、国のやり方を変えようとしているみたいです」
「ミリア聖国の内情は分かったけどそれでどうしようと?」
「ディムス教のトップであるテレジアを説得します!」
「「えっ!?」」
ジャンとロベルタの二人はハモった。
「テレジアを説得出来れば、ミリア聖国はきっと国を明け渡してくれます」
「なんでそんな事を言い切れるのよ!!」
「今現在ミリア聖国での一番の権力者が事実上ディムス教のテレジアである事。そして権力者も次々にディムス教に改宗している事実。ミリア聖国をロア王国に吸収されても、ルイス国王は決して蔑ろにはしないはずです。むしろ手を取り合って協力し平和を望んでいるでしょう。それはきっとテレジアも同じ気持ちのような気がします」
「ここに集められた報告書全てに目を通して感じた事ですが、ディムス教のテレジアという女性は、本当に慈悲深く人々の為に力を使い、活動していたんだと分かります。それにテレジアの事を悪く言う人が誰一人として居なかったそうです。そんな人間普通は存在しません」
「もしこれら全てが計算で、国を乗っ取るためにやっていたとしたら完敗です! 拍手を送りたいぐらいです。ただ、私が考えているような人物であれば説得する価値があります。そしてその作戦を実行に移せる人物が目の前に居るというのもあります」
レオンの目線がジャンに注がれた。
「私がですか……!?」
「ジャンの能力なら誰にも気付かれずにひょっこりテレジアの居る場所に侵入し、話す事など簡単ではないでしょうか?」
「どこに居るのかご存知なんですか?」
「この戦場に来ているはずです! 今日見たあの力……テレジア以外考えられないでしょう」
「もし説得出来なかった場合は……」
「殺して下さい」
「相手の士気を上げるような事をしていいんですか?」
「私の予測としては、最初は士気がとてつもなく上がり、苦戦すると思いますが、徐々にテレジアのいないミリア聖国に未来なんてあるのだろうか? と思い始める人達が現れ、味方に引き入れ易くなり、寝返り易くなると思っています」
「そんな都合良くいきますか?」
「いいえ、思ってませんよ! だから説得して下さい」
(マジで言ってんのかよ! そんな簡単にいくのか?)
(分からない……でもレオンが何となくで発言するはずがない。少なからず可能性があると思って言っているとは思うよ)
「私にはハッキリ言って分からないわ! 説得? 国を明け渡す? ありえない」
「ぼ、僕はその作戦賛成です。戦わないならそっちの方がいい」
「今の説明だけではないんですよロベルタ。ミリア聖国はさらに問題を抱えていて――」
レオンが次々に、情報と考えを口に出していく。
絶対とは確かに言い切れないが、頭の悪い俺でも説得する価値はある。
と思わせるには十分な説明だった。
「確かにやる価値はありそうね。それに説得する為に兵を動かす訳でもないし! 説得が上手くいったら私が活躍する場がなくなるのは癪だけど、上手くいかなくても安心していいわよジャン。私が大いに活躍してあげるから!」
「頼もしい限りです!」
「では準備をするので作戦実行は七日後に! 皆さんお願いします!」
次の日から戦場では睨み合いが続く。
万を超える軍勢が平原にてほぼ動かない。
こちらから手出ししなければ、ミリア聖国から攻めてくる事がないからだった。
全く戦わないのは明らかに怪しいから時々交戦したが、牽制のようなもので、お互いにほとんど負傷者は出なかった。
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