小学6年生、同級生30人全員を殺した日本の歴史史上最凶最悪の少年殺人鬼が、異世界の12歳に乗り移り、異世界を駆ける!

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第三章

世界の異物

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 ――さらに三年の月日が流れる。
 ジャンは二十歳になった。

 そしてルイス国王も二十歳の誕生日を迎えた事で、今はその誕生会に向かっている。

 ――あと六年。
 

 「今回の護衛に選んで頂きありがとうございます主様!! ですが……なんでこの男も一緒なんですか!!」

 「うい~! なんだよ? 俺がそんなに嫌なのかリリア!」
 「当たり前だろ! 仕事中に酒を飲むな!」

 大真面目と超不真面目。全く相容れない二人だが、一緒に居て飽きない。
 
 「旦那の護衛をちゃんとすればいいんだろ? 任せておけって!」
 「シャオはどうせ王城に出てくる酒目的だろ?」
 「まあまあ旦那! 細かい事はいいじゃないですか」

 「態度と言葉を改めろシャオ! 主様の品位が疑われてしまうんだぞ!」
 「その位分かってるよ! 馬車の中で剣を抜こうとするなよリリア」
 今回の道中は、退屈せずに済みそうだ。

 王都へ到着し、一日休むと誕生会が開かれる王城へと向かう。
 会場へ案内された俺は、早速食事を堪能していた。

 以前はジャンに全く関心のなかった貴族達だったが、今日はやけに視線を感じる。
 「あんたは相変わらずね!」
 振り返るとそこにはロベルタが。

 「&$%^#&#@@^$&!!」
 「飲み込んでから喋りなさいよ……」
 「久しぶりだなロベルタ」
 
 久しぶりに見たロベルタが醸し出す雰囲気は、この場に居るような御令嬢とは全く違っていた。
 鍛え抜かれた歴戦の剣士。そのものだった。

 上手く隠そうとしているが、手のひらに出来たマメが全てを物語っている。
 「ロベルタ……見ない間に相当腕を上げたな」
 「あんたもね! だから嫌なのよあんたは!」
 「二人共、変わらず元気そうで何よりです」
 会話に入ってきたのはレオンだった。

 「久しぶりねレオン。最近ずっと家に引きこもってるって聞いていたけど、来たのね」
 「ルイス国王の誕生会ですからね」

 そうこうしている内に、今日の主役が階段から降りてくる。
 ルイス国王は、さらにイケメン度に磨きがかかっていた。
 国王だが、王子様という言葉が似合う風貌だ。

 しかし……。

 「なあ、あの女だれだ?」
 俺が二人に質問する。
 階段から降りてくる時に側にいる女性が。今まで一度も見たことがない。

 「最近ちょっと噂になっている女性よ。まさかルイスの誕生会にまで出席させるとは思わなかったわ」

 「噂に聞くと、ルイス国王と最近仲良くしている平民の女性みたいですよ。孤児院で働いている女性だとか……」
 「初めて聞いたぞ。それにそれって……良くないよな!?」

 「勿論よ。ロア王国の国王が、まだ正妻も居ないのに平民の女性と仲良くしているなんて前代未聞よ」

 「そのせいもあって、王城内では色々とゴタゴタがあるって聞いてます。ルイス国王が目指す世界は階級を無くす事も含まれています。だから自ら率先しているのかもしれませんが」
 「野望を成し遂げた後ならまだしも、今の状況でこの行動は、得策ではないのは確かね」

 「ふ~ん」
 そんな会話をしていると、ルイス国王が言葉を述べ始める。

 「皆の者! 本日は私の誕生日に集まってくれて感謝する! 父上が亡くなって早五年が経過した。ロア王国が今日までやってこれたのは、ここにいる皆と民のおかげである! ロア王国はさらなる発展の為に、我々は今後、戦を仕掛けていく!」

 「この場にて宣言する! ロア王国は大陸統一を目指す!」
 ルイス国王のその言葉に、俺ら三人も含めて全員が呆気にとられていた。

 パチパチパチパチ。
 例の平民の女性が、一人だけ拍手する。

 その拍手につられて、周りの人達も拍手をしていく。
 パチパチパチパチ! パチパチパチパチ!

 突然明かりが全て消え、会場が真っ暗になった。
 パリーン! パリーン!

 ガラスが割れる音が聞こえる。
 暗い影が、割れた窓から何十人と会場に入ってきた。

 「リリアー! シャオ! 刺客をぶっ殺せ!」
 「はい」
 「りょーかい!」
 俺はすぐさま、ルイス国王の元へと向かった。

 「キャーーー!!」
 悲鳴が会場を包み込む。

 「ルイス国王大丈夫ですか?」
 「ジャンか!? 助かる!」
 黒い影の多くは、こっちに向かってくる。

 「殺していいんですよね?」
 「出来れば何人かは生け捕りしてほしい」
 「了解」
 ダガーを抜き取り、会場に入ってきた刺客を殺していく。

 こんな場所に入り込んでくるから強いのかと思ったが弱い……弱すぎる。
 俺は次々に殺していく。そして何人かは気絶させた。

 誰かが魔法を放ち、会場を照らした。
 黒い格好をした刺客達は、会場から逃げ出していく。

 「ルイス国王ーー!!」
 兵士達がルイス国王の下へと駆け寄ってくる。

 「ジャンありがとう。助かったよ!」
 「いえいえ」

 まだ息のある刺客は縛られ、捕えられていく。
 「ぐあぁぁぁぁぁ! オエェェェェェェ!」
 捕らえれた刺客は、何故か口から血を大量に吐き出し、死んでいく。

 「怪我人がいれば治療を! 会は終わりだ! 部屋まで送ろうエリーゼ」
 あの平民の女、エリーゼって言うのか。
 「ジャン!? 一緒に来てもられるか?」
 「分かりました」

 ルイス国王はエリーゼを支えるように寄り添い部屋に案内していく。
 「それじゃあエリーゼゆっくり休んで」
 「はい。分かりました国王様」
 エリーゼと別れ、再び会場へと戻る。
 
 「一つ聞いてもいいですか?」
 「どうした?」
 「犯人は誰か分かっているんですか?」

 「いや、今すぐには思いつかない。調べていけば分かってくると思うが」
 「そうですか……」
 
 会場に戻ると、床は血だらけに。
 「ルイス国王、刺客達なんですが……全員死にました」
 「何故だ??」
 
 「毒を口に仕込んでいたみたいで、意識を取り戻すとすぐに毒を飲んで死んでいきました」
 「そうか。分かった」

 「主様!」
 「リリアか。良くやったぞ!」

 「はっ!」
 「シャオは?」
 シャオを探すと、残された食べ物を食べながら酒を飲んでいた。

 「シャオ何やってるんだよ!」
 「旦那~。ここの飯も酒もすっげー美味いぞ!?」


 「ハハハ! ジャンの部下は、相変わらず面白いな。部屋を用意するから泊まっていくといい。それに……そっちの方が私は安心だ」
 「お言葉に甘えます」

 俺とリリア、シャオはそれぞれ部屋に案内され、やっと一息つく事が出来た。
 「ルイス国王、そんなに嫌われているのか? 国民からは人気だよな?」
 (国民からはね。貴族と宗教団体に厳しくしているからその辺からの反感が凄いんだと思う)

 「なるほどなぁ。それとあの平民の女……なんか臭う」
 (臭うって?)

 「あんな状況だったのに、平然としてやがった。普通の平民の女がありえるか?」
 (そういった経験が豊富なのかも?)

 「だったら余計に怪しいだろ? ルイス国王の命を狙ってるのかもしれない」
 (ユウタ!? 何をするつもりなの?)

 「あの女の部屋の天井裏に忍び込んで探りを入れてくる」
 俺は誰にも気付かれないように部屋から出て、女の部屋を目指した。

 天井裏からエリーゼの部屋を覗き込む。
 ランプの光だけで部屋は灯され、エリーゼはソファに座っていた。

 「やっぱそうだよ! さっきの白い髪の男、ジャン・アウルだ。超珍しいから忘れてた!」
 
 「ジャン・アウルがまだ生きてるって事は、これベリーイージーモードだ。簡単過ぎてやらなかったモードだこれ!」

 ジャン・アウルが生きてる? ベリーイージーモード?

 「って事は、ルイスはこの後うつ病になるから~。落とすの超簡単じゃん! その後は後で考えるとして今はルイスを落とすことに集中しよう」

 うつ病? ルイスが?
 この女は何を言っているんだ?

 コンコン。

 エリーゼの部屋に誰かが……訪れたのはルイス国王だった。
 俺はそっとその場を後にした。

 (さっきのエリーゼが言っていた事は一体何? ユウタ分かる?)
 「俺にもハッキリとは分からねぇ。ただもしかしたらだけど、俺と同じ世界からやってきた人間かもしれない」

 (ユウタ以外にも居たって事?)
 「もしかしたらな。本人に聞いてもどうせ答えてくれないだろうけどな」

 (結局はあのエリーゼは危ない女性なのか?)
 「どうだろう……今の所放っておいても大丈夫だと思う。もし何かあってもルイス国王が殺される事はないと思う。そんな戦闘力はない」

 それにしてもあのエリーゼが言っていた内容は気になるな。
 いつかあの女と話し、色々と聞き出してやる。
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