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第三章
変貌を遂げた故郷ダラムと姉御
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ロア王国へと戻った三人は、ルイス国王が抜け出した事に気が付いた人達に正座させられ、何時間もカンカンに怒られた。
事情聴取なども行われ、結局開放されるまでに三日が経った。
「二人には……言わなくても分かるな。それじゃあ二人共、道中気をつけて」
「「はっ」」
やっとダラムへと戻る事が出来る。
「戻ったらやる事がいっぱいだ」
(何をするんだ?)
「兎にも角にも軍備の増強だね。それはそうと、あそこダラムだよね?」
故郷のダラムが変貌を遂げていた。
あちこちから湯気が立ち込め、天に昇るが如くお湯が噴射していた。
ダラムへの入り口には、列をなして馬車や人々が並んでいる。
「僕って領主だからいいよね……」
並ばずに馬に乗って列の横を移動していると、並んでいる人々に睨まれた。
「おい!! 誰だよ!! ちゃんと列に並べよ!!」
見た目も悪く、ドスの利いた声で門番に文句を言われる。
「やあ、久しぶりだね!」
ジャンがそう声をかける。
「ド、ドクターじゃねえですか! 一体どこに行ってんだよ! 皆心配してますぜ!」
「悪かったね。緊急で皆にも説明する暇がなかったんだよ」
「そうですかい。ここは通って下さい! ヘレナの姉御は特にずっと心配してたぜ! 未来の嫁なんだろ? さっさと会ってやりなよ」
「姉御って……分かったありがとう」
(一体僕が居ない間に何があったんだよ!)
(クックック。面白そうだな)
少し見ない間にダラムの町は驚愕の変貌を遂げていた。
人が大勢行き交い、お店があちこちに出来て、活気づいていた。
「カンパーイ!!」
外にテーブルを出す程、酒場なども繁盛しているようだ。
「ガハハハ!」
(あれ……シャオじゃないか?)
「あれは~確かにシャオだな」
「おいシャオ! 昼間から何酒飲んでいるんだ!?」
「おーおー! 旦那じゃねえか! 久しぶりだな! 旦那も一杯やっていくか?」
「いや! 屋敷に帰るよ」
「ざ~んねん! また今度だな」
自分の家、屋敷に到着した。
「ねえユウタ……ここって僕の屋敷だよね?」
(あ~多分そうじゃね?)
壊れて剥がれていた外壁などが全て綺麗に、そして屋敷がリフォームされていた。
「ジャン様ーー!」
屋敷の中からジェイドが走ってきた。
「久しぶりだねジェイド。ダラムは一体どうなってしまったんだ?」
「それは……」
「私がご説明しますジャン様。ご無事で何よりです……」
屋敷の中へと入り書斎の椅子に座ると、リリアとジェイド、ベイルとヘレナを呼んだ。
トドル帝国に旅立つ前にダラムを託した四人が集まる。
「それで? この状況は一体どういう事なんだ?」
「全ては私の責任にあります! 申し訳ありません」
開口一番にヘレナが謝る。
「別に謝って欲しい訳じゃない。状況を説明して欲しいだけなんだ」
ジャンが優しい口調で話すと、空気が穏やかになっていきそれぞれが話し出す。
要するにジャンが旅立った後、温泉を一般開放し人を呼び込み始めた。
それが想像を超える大盛況となり、連日忙しすぎて大変だったという。
美肌効果もあるという噂も立ち、あちこちの貴族の奥様やお嬢様が来るようになっていき、噂が噂を呼んでとんでもない人数が押し寄せるようになったのだとか。
宿や店をどんどん増やし、住人も収入も増えていった。
領主であるジャンに挨拶したいという人達も日に日に増えていき、このままの屋敷では威厳を保てないと判断した為にリフォームまで行った。
領主であるジャンの判断を聞かずにどんどん開拓してしまった事に皆が謝る。
そんな忙しい時に居なかったジャンが悪いし、ダラムを四人に託したのはジャン自身。
それに、悪い方向にいったのはいざ知らず、活気に湧いている自分の領土を見て怒る領主なんているはずもない。
「そうか……皆ありがとうね! 助かったよ。それじゃあ今日一日はダラムを見て回ろうかな。ヘレナ嬢僕を案内してもらえますか?」
「分かりました」
町を周りながらヘレナが説明してくれた。
「温泉に入る事が出来る宿は数カ所あります。それぞれの湯には、独特の効能があり泊まる宿で違う温泉を楽しむ事が出来ます。貴族用に作った宿は、一度に全ての温泉を楽しめるように作られており、値段も高い設定をつけて運営しています」
「温泉以外でもダラムには様々なお店を構えて、観光地としてダラムにお金をより多く落としてもらうような事も同時に行っております」
「ヘレナ嬢が色々と考え、行動してくれたんですか?」
「……余計な事だったでしょうか?」
(コイツってこんな行動的なやつだったか?)
「あ! ヘレナお姉ちゃんだ!」
「皆さんこんにちは」
町を歩いていたら子供達がヘレナに抱きつく。
「ねぇねぇ今日も遊ぼうよ!」
「今日はちょっと遊べないんだ。また遊ぼうね!」
「え~。絶対だよ! 約束だよ!?」
「勿論です!」
子供達は走ってどこかへ行ってしまった。
「次へ行きましょうか」
ヘレナにダラムを案内されていると、町にいる人々が次々にヘレナに話しかける。
いつの間にか町の人達に信頼され、仲良くなったようだ。
二人はダラムを見渡せる、風通しがいい丘の上へとやってきた。
「ヘレナ嬢、今日は案内ありがとうございます」
「いえ……どうでしたか?」
「とても活気づいていました。町の皆も楽しそうだったね」
「これからもっと活気づいて豊かになっていきますよ」
「そうですね! 領主としてこれからもっと頑張っていかないと」
「ジャン様ならきっと出来ます! 誰よりも」
「ヘレナ嬢、僕はアウル家の復活を目指しています。その為に必要な事は何でもやっていき、国に貢献して爵位を貰い、偉くなろうと思い日々努力してきました」
ヘレナは真っ直ぐジャンを見つめ、ジャンの話す言葉に耳を傾けている。
「だけどうちの国のトップ、ルイス国王はさらなる困難を僕に押し付けてきたんです。侯爵になる方がよっぽど簡単だと思えるような事をしようとしているのです。これからこの国は……大きく動いていく事はでしょう! その時僕は、最前線に居ると思います。ダラムに居ない事が多くなると思うのです。だからダラムには信頼出来る、任せられる人物が居ると助かります」
「その役割をヘレナ嬢に任せたいと僕は思いました。手伝ってもらえませんか?」
「えっ!? それはつまり――」
「僕と結婚しようヘレナ!」
(マジか!!!!)
「――。はい……よろしくおねがいします」
ヘレナは顔を両手で隠し、涙を流していた。
ジャンは、へレアの背中に手を回して胸に寄せて抱く。
それから涙を指で拭った。
――。
二人が屋敷へと戻ると、大勢の部下達に迎えられた。
「旦那ーー! 今日は大宴会だってよ!」
「ドクターおかえり」
「ジャン様、ヘレナ様こちらに」
屋敷の庭には沢山のテーブルと食事が並べられ、酒樽も用意されていた。
台のような所に立たされ、ジョッキを持たされる。
「皆よく聞け! ジャン様が帰還されて、さらにヘレナ様とご結婚が決まった! こんなに嬉しい日はない!」
「「「うぇーーーーーい!」」」
野太い男達の歓声が上がる。
「なんで知ってるんだ!?」
「申し訳ありません。私が聞いてしまい興奮して言いふらしました」
ヘレナの側にいつもいる侍女が答えてくれた。
「皆に一言お願いしますジャン様」
「え~と……」
(ごめんユウタ。替わって)
(こういうのは、勢いだけでいいんだよ)
「お前らー! ダラムは好きかー!?」
「「「うぇーーーーい!」」」
「俺の事が好きかー!?」
「「「うぇーーーーい!」」」
「酒が好きかー!?」
「「「うぇーーーーい!」」」
「宴は好きかー!?」
「「「うぇーーーーい!」」」
「カンパーイ!!」
「「「カンパーイ!」」」
宴会が始まった。
ジャンの隣にはヘレナが座り、代わる代わる皆がジャンに酒を注ぎに来る。
テディがゴーレムを使って庭の中央に丸太を組み上げ始め、キャンプファイヤーが始まった。
食事と酒、音楽と踊りと宴会は盛り上がり、皆が楽しそうに笑っている。
もしかしたらこういう一時が、『幸せ』というものなのかも知れない。
そんな言葉とは無縁だった俺がそう感じたのだから、きっとそうなのだろう。
大宴会は朝まで続き、朝日が昇ってくる。
目を背けたくなるほど眩しい光。
「ジャン様、そろそろ寝ないんですか?」
「皆が楽しそうな姿を見ていたら朝になってしまったよ」
「こんな日常が、一生続くといいですね」
「そうだね」
事情聴取なども行われ、結局開放されるまでに三日が経った。
「二人には……言わなくても分かるな。それじゃあ二人共、道中気をつけて」
「「はっ」」
やっとダラムへと戻る事が出来る。
「戻ったらやる事がいっぱいだ」
(何をするんだ?)
「兎にも角にも軍備の増強だね。それはそうと、あそこダラムだよね?」
故郷のダラムが変貌を遂げていた。
あちこちから湯気が立ち込め、天に昇るが如くお湯が噴射していた。
ダラムへの入り口には、列をなして馬車や人々が並んでいる。
「僕って領主だからいいよね……」
並ばずに馬に乗って列の横を移動していると、並んでいる人々に睨まれた。
「おい!! 誰だよ!! ちゃんと列に並べよ!!」
見た目も悪く、ドスの利いた声で門番に文句を言われる。
「やあ、久しぶりだね!」
ジャンがそう声をかける。
「ド、ドクターじゃねえですか! 一体どこに行ってんだよ! 皆心配してますぜ!」
「悪かったね。緊急で皆にも説明する暇がなかったんだよ」
「そうですかい。ここは通って下さい! ヘレナの姉御は特にずっと心配してたぜ! 未来の嫁なんだろ? さっさと会ってやりなよ」
「姉御って……分かったありがとう」
(一体僕が居ない間に何があったんだよ!)
(クックック。面白そうだな)
少し見ない間にダラムの町は驚愕の変貌を遂げていた。
人が大勢行き交い、お店があちこちに出来て、活気づいていた。
「カンパーイ!!」
外にテーブルを出す程、酒場なども繁盛しているようだ。
「ガハハハ!」
(あれ……シャオじゃないか?)
「あれは~確かにシャオだな」
「おいシャオ! 昼間から何酒飲んでいるんだ!?」
「おーおー! 旦那じゃねえか! 久しぶりだな! 旦那も一杯やっていくか?」
「いや! 屋敷に帰るよ」
「ざ~んねん! また今度だな」
自分の家、屋敷に到着した。
「ねえユウタ……ここって僕の屋敷だよね?」
(あ~多分そうじゃね?)
壊れて剥がれていた外壁などが全て綺麗に、そして屋敷がリフォームされていた。
「ジャン様ーー!」
屋敷の中からジェイドが走ってきた。
「久しぶりだねジェイド。ダラムは一体どうなってしまったんだ?」
「それは……」
「私がご説明しますジャン様。ご無事で何よりです……」
屋敷の中へと入り書斎の椅子に座ると、リリアとジェイド、ベイルとヘレナを呼んだ。
トドル帝国に旅立つ前にダラムを託した四人が集まる。
「それで? この状況は一体どういう事なんだ?」
「全ては私の責任にあります! 申し訳ありません」
開口一番にヘレナが謝る。
「別に謝って欲しい訳じゃない。状況を説明して欲しいだけなんだ」
ジャンが優しい口調で話すと、空気が穏やかになっていきそれぞれが話し出す。
要するにジャンが旅立った後、温泉を一般開放し人を呼び込み始めた。
それが想像を超える大盛況となり、連日忙しすぎて大変だったという。
美肌効果もあるという噂も立ち、あちこちの貴族の奥様やお嬢様が来るようになっていき、噂が噂を呼んでとんでもない人数が押し寄せるようになったのだとか。
宿や店をどんどん増やし、住人も収入も増えていった。
領主であるジャンに挨拶したいという人達も日に日に増えていき、このままの屋敷では威厳を保てないと判断した為にリフォームまで行った。
領主であるジャンの判断を聞かずにどんどん開拓してしまった事に皆が謝る。
そんな忙しい時に居なかったジャンが悪いし、ダラムを四人に託したのはジャン自身。
それに、悪い方向にいったのはいざ知らず、活気に湧いている自分の領土を見て怒る領主なんているはずもない。
「そうか……皆ありがとうね! 助かったよ。それじゃあ今日一日はダラムを見て回ろうかな。ヘレナ嬢僕を案内してもらえますか?」
「分かりました」
町を周りながらヘレナが説明してくれた。
「温泉に入る事が出来る宿は数カ所あります。それぞれの湯には、独特の効能があり泊まる宿で違う温泉を楽しむ事が出来ます。貴族用に作った宿は、一度に全ての温泉を楽しめるように作られており、値段も高い設定をつけて運営しています」
「温泉以外でもダラムには様々なお店を構えて、観光地としてダラムにお金をより多く落としてもらうような事も同時に行っております」
「ヘレナ嬢が色々と考え、行動してくれたんですか?」
「……余計な事だったでしょうか?」
(コイツってこんな行動的なやつだったか?)
「あ! ヘレナお姉ちゃんだ!」
「皆さんこんにちは」
町を歩いていたら子供達がヘレナに抱きつく。
「ねぇねぇ今日も遊ぼうよ!」
「今日はちょっと遊べないんだ。また遊ぼうね!」
「え~。絶対だよ! 約束だよ!?」
「勿論です!」
子供達は走ってどこかへ行ってしまった。
「次へ行きましょうか」
ヘレナにダラムを案内されていると、町にいる人々が次々にヘレナに話しかける。
いつの間にか町の人達に信頼され、仲良くなったようだ。
二人はダラムを見渡せる、風通しがいい丘の上へとやってきた。
「ヘレナ嬢、今日は案内ありがとうございます」
「いえ……どうでしたか?」
「とても活気づいていました。町の皆も楽しそうだったね」
「これからもっと活気づいて豊かになっていきますよ」
「そうですね! 領主としてこれからもっと頑張っていかないと」
「ジャン様ならきっと出来ます! 誰よりも」
「ヘレナ嬢、僕はアウル家の復活を目指しています。その為に必要な事は何でもやっていき、国に貢献して爵位を貰い、偉くなろうと思い日々努力してきました」
ヘレナは真っ直ぐジャンを見つめ、ジャンの話す言葉に耳を傾けている。
「だけどうちの国のトップ、ルイス国王はさらなる困難を僕に押し付けてきたんです。侯爵になる方がよっぽど簡単だと思えるような事をしようとしているのです。これからこの国は……大きく動いていく事はでしょう! その時僕は、最前線に居ると思います。ダラムに居ない事が多くなると思うのです。だからダラムには信頼出来る、任せられる人物が居ると助かります」
「その役割をヘレナ嬢に任せたいと僕は思いました。手伝ってもらえませんか?」
「えっ!? それはつまり――」
「僕と結婚しようヘレナ!」
(マジか!!!!)
「――。はい……よろしくおねがいします」
ヘレナは顔を両手で隠し、涙を流していた。
ジャンは、へレアの背中に手を回して胸に寄せて抱く。
それから涙を指で拭った。
――。
二人が屋敷へと戻ると、大勢の部下達に迎えられた。
「旦那ーー! 今日は大宴会だってよ!」
「ドクターおかえり」
「ジャン様、ヘレナ様こちらに」
屋敷の庭には沢山のテーブルと食事が並べられ、酒樽も用意されていた。
台のような所に立たされ、ジョッキを持たされる。
「皆よく聞け! ジャン様が帰還されて、さらにヘレナ様とご結婚が決まった! こんなに嬉しい日はない!」
「「「うぇーーーーーい!」」」
野太い男達の歓声が上がる。
「なんで知ってるんだ!?」
「申し訳ありません。私が聞いてしまい興奮して言いふらしました」
ヘレナの側にいつもいる侍女が答えてくれた。
「皆に一言お願いしますジャン様」
「え~と……」
(ごめんユウタ。替わって)
(こういうのは、勢いだけでいいんだよ)
「お前らー! ダラムは好きかー!?」
「「「うぇーーーーい!」」」
「俺の事が好きかー!?」
「「「うぇーーーーい!」」」
「酒が好きかー!?」
「「「うぇーーーーい!」」」
「宴は好きかー!?」
「「「うぇーーーーい!」」」
「カンパーイ!!」
「「「カンパーイ!」」」
宴会が始まった。
ジャンの隣にはヘレナが座り、代わる代わる皆がジャンに酒を注ぎに来る。
テディがゴーレムを使って庭の中央に丸太を組み上げ始め、キャンプファイヤーが始まった。
食事と酒、音楽と踊りと宴会は盛り上がり、皆が楽しそうに笑っている。
もしかしたらこういう一時が、『幸せ』というものなのかも知れない。
そんな言葉とは無縁だった俺がそう感じたのだから、きっとそうなのだろう。
大宴会は朝まで続き、朝日が昇ってくる。
目を背けたくなるほど眩しい光。
「ジャン様、そろそろ寝ないんですか?」
「皆が楽しそうな姿を見ていたら朝になってしまったよ」
「こんな日常が、一生続くといいですね」
「そうだね」
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