小学6年生、同級生30人全員を殺した日本の歴史史上最凶最悪の少年殺人鬼が、異世界の12歳に乗り移り、異世界を駆ける!

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第二章

特急回復魔法

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 「バルナ様、王都に行かせて下さい」
 「ほほう、何故だ!?」

 「ガルスパーが言っていた事がもし本当であるならば、ルイス国王の身に危険が迫っている為です。そして今すぐに自由に動ける状況なのは他でもない私だと思うからです」

 「ジャンあんた馬鹿なんじゃないの? アウル軍を動かして王都に向かうっていうの!?」
 「いや、私一人だけで行きます。私の兵達はここに残していきます。好きに使って下さい」

 「ますます分からないわね! 一人だけ戻ってどうすんのよ!?」
 「敵と戦う為ではなく、ルイス国王を護り逃がすのであれば、少数の方が動きやすいからです。人数が多くなれば多くなるほど動きが制限されてしまいますから」

 「ガルスパーの言っていた事が本当だと思ってるの?」
 「嘘なら嘘でいいです。だけどもし、本当の事だったとしたら今こうしている時間さえ惜しいのです。ルイス国王を今討たれる訳にはいかない! これからのロア王国には絶対に必要です!」

 「なら私も付いて行くわ。お父様いいでしょ!?」
 「二人して何を勝手に……ロベルタは一度言い始めたら言うこと聞かないしな。はぁ~仕方ない! 分かった二人にルイス国王を任せよう。何もなければそれはそれでいい!」

 「我儘を聞いてくださりありがとうございます」
 ジャンは頭を下げた。

 「それで? いつここを出るの?」
 「すぐにです! 休憩無しで王都まで突っ走ります!」

 「分かった。準備してくるわ」
 ロベルタは外に出ていった。

 「私の兵は置いていくので使ってやって下さい」
 
 「分かった。娘をよろしく頼む……ジャン子爵。実力はある方だが自信過剰な所があり、それが娘の強さでもあり弱点でもある。本当の強者と相対した時に足元をすくわれかねない! 娘がピンチの時は救ってやってくれないか?」

 「勿論ですともバルナ様。力の限り手助けします!」
 「ガッハッハ! それでこそアウル家の人間だ! ルイス国王の事も頼んだぞ!」

 「お任せ下さい」
 ジャンは自分のテントに戻ると、すぐに分隊長を呼びだした。
 事情を説明し、ロベルタと王都に向かうことを告げる。
 ジェイドに全軍の指揮を任せ、バルナ様の下に付いて戦ってもらう事も話した。

 「それでは皆、よろしく頼む! 全てが片付いた後、ダラムにて大宴会を開こう」
 「お! いいねぇ~旦那! いい酒頼むぜ」
 
 「オイラは~、おっきなお肉が食べたいなぁ~。ドクター」
 「ドクター! 出来たら新しい調理器具が欲しいな」

 「分かった、分かったお前ら! 用意しよう。だからお前達はバルナ様とジェイドを困らせるなよ? そして活躍してこい」
 「「「おーー!」」」

 ジャンは外に出ると馬に跨り、ロベルタの元へと向かう。
 ロベルタもすでに出られる準備が整っているようだった。

 「すぐと言ってた割には遅かったじゃない!」
 「すいません……部下達に説明していたものですから」

 「まあいいわ……行くわよ」
 「はい」

 もう日が暮れようという時間帯にジャンとロベルタは出発した。
 

 すでに辺りは暗くなり、今は森の中を全速力で駆けている。
 「ジャン! ジャン! 馬が疲弊してきている。ペースを落としたいわ」

 「ロベルタ様、私の隣に来て併走して下さい」
 ロベルタはスピードを上げてジャンと併走する。

 「一体どうしたの?」
 「回復魔法を使います」
 「えっ!? どうして!?」
 「すぐに分かります」
 ジャンは回復魔法を使い始める。

 誰にではなく、ジャンの馬とロベルタの馬に回復魔法を掛ける。
 回復魔法は傷を治す為に使う事が一般的だが、例えば疲労の回復や臓器の回復にも効果があった。

 簡単に言えば、全力疾走し続ける事が出来るという事。
 回復魔法を使い続ければ、短距離のスピードでマラソンの距離を走る事が出来る。

 俺の回復魔法は、効果が強い代わりに持続力がない。
 しかし、ジャンの回復魔法は効果が弱い代わりにも持続力と広範囲での効果を持っていた。
 回復魔法を掛け続ける事で、王都まで一気に走り切るつもだった。

 「馬が急に元気になり始めたわ!」
 「このまま行きます! スピードを緩めないで併走して下さい!」
 一切休憩も取らないまま走り続ける。

 肌寒い夜が過ぎ去り、太陽が東から昇り始め、世界と身体を暖める。
 太陽が空の頂点に到達しても、変わらずジャンとロベルタは休まず駆けていく。

 もう一度夜を迎え、再び朝を迎えた。
 かなり無理をしたおかげで、あっという間に王都に到着した。

 (ユウタ……もう無理だ)
 ジャンがよろけて馬から落ちる。

 「おっと!」
 俺は前宙をして地面に足を着けた。

 「ちょっとジャン! 大丈夫?」
 「大丈夫、大丈夫。魔法を使い続けたせいで疲れただけだから!」
 「なら、いいけど」
 
 「それより王城の中に早く入ってルイス国王を探そうぜ」
 「そうね……」
 
 「ロベルタこれ!」
 俺は姿が隠せるローブをロベルタに投げる。
 「何よこれ!」

 「何って姿を隠す為だよ。俺も一応隠すが、ロベルタは市民にだって顔が割れてるだろ!? 王都に潜入してきてる敵にバレたら動きづらくなるし厄介だろ?」
 「なるほどね」

 俺とロベルタはローブを羽織り、出来るだけ姿と顔を隠した。
 「それじゃあ行こうか」
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