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第二章
それよりも
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「ジャン様本当なんですか!? こんな男を分隊長にするんですか!?」
「そうだよ!」
「旦那ぁ~。俺隊長やるの? 嫌なんだけど!」
シャオはそう言いながら酒を飲み、顔を真っ赤にしていた。
テントに分隊長達を集め、シャオの紹介と今後について話している。
「こんな奴が強いんですか!? 仮に強かったとしても隊長に向いてるとは思いません!」
「俺もこいつの意見に賛成だよ旦那。俺は個人で勝手に動きたいね」
テディがシャオを下から覗き込むようにして近づいていく。
じぃーと顔を見つめた後、鼻をつまんだ。
「ドクター! この人お酒くちゃ~い!」
腰をフリフリしながらテディがおちゃらける。
「旦那? こいつも隊長なの?」
「れっきとした隊長だよ。アウル軍のお笑い担当兼特攻隊だな」
「リリアもジャン様に何か言ってやってよ」
「確かにシャオは鬼神の如き強さでした。ですが隊長に向いているかどうかはまた違う話かと思います主様」
「そんな向いてる向いてないって話だったら、俺だって向いてはないし! それにテディとエルガルドだって元々は隊長って柄じゃないでしょ」
「そりゃひでーぜドクター! 俺はこう見えても頑張ってるぜ?」
「ハハハ。悪い悪い! でも隊長にしたから個性の強い部隊になってる。俺はシャオが部隊を率いて隊長やった方がおもしれぇーと思うんだけどな」
「はぁ。ジャン様の中ではどうせ決まっている事なんでしょう? 何を言っても駄目なのでしょう……」
「分かってくれた?」
「いえ、全く分かりません。ですが……そんな風に部隊を作っていき、ジャン様はアウル軍を活躍させて大きくしてきました。不安もありますが付いていきます」
「私も主様の意見に賛成します」
「ちょ、ちょ、ちょっと待てって! 本当に俺を隊長にするのか!? 旦那本気かよ!」
「本気だよシャオ。俺はお前をアウル軍の分隊長に任命する」
「めんどくせぇーなおい! でも旦那は命の恩人だからな……おかげでこうやって酒を飲んでられるんだ。仕方ないやるしかないか」
頭を掻きながら隊長の任を引き受けてくれた。
「明日の戦から部隊を率いて隊長をやらせるのは流石に難しいので、今回の戦中はジャン様の護衛をやらせるのはどうでしょう?」
「ならそうしよう。頼むぞシャオ」
「旦那の護衛か! そんな楽な仕事はないな! 任せろ」
「ジャン様に何かあったらお前の責任だからなシャオ」
「真面目な奴だなージェイド。お前ら旦那の部下だろ? 旦那の強さ知ってるんだろ? 旦那がそんな簡単にやられっかよ! くぅー! 酒うめぇーなおい」
「シャオが側に居たら安心だな! ただシャオ、これだけは言っておく」
「酒は飲んでもいい。だけど、酒飲んで負けました。酒のせいでやれました。酒のせいで部下を殺されちゃいましたは無しだ! いいな?」
酒を飲んでいた手を止めるシャオ。
「なんだよ、意外だな旦那。思ったより優しいんだな!」
リリアが突然シャオの前に立つ。
「貴様に教えといてやる! 主様……ジャン・アウル様は、ロア王国で最も慈悲深い貴族であり、そして強い。さらに今後、この大陸で最も偉大で有名に御方だ! お前が馴れ馴れしく話していい御方ではないぞ!」
「いま、今後って言ったか? 旦那の爵位ってなんだ?」
「子爵だけど」
「旦那って子爵なのかよ! もっと偉いと思ってたぜ」
「貴様、主様が子爵で不満なのか?」
「不満……? いや待て! 逆だな! ああそうだよ旦那!」
急にシャオの表情が明るくなる。
「旦那は今後出世するって事だよな! 子爵の時から分隊長をやっていたなら、旦那が偉くなれば必然的に分隊長の俺も偉くなる! だんだん仕事しなくて良くなる。結果朝から酒飲めるって事じゃねえか? そうだよな旦那!?」
「貴様はただサボりたい――」
「それによー! 最初から旨い酒を飲むより、徐々に旨い酒を飲むのも悪くねぇ! 偉くなってくれよ旦那。そうすれば俺も旨い酒が飲めるってもんだ」
「ならその為に力を貸せシャオ!」
「そういう事ならお安い御用だ旦那。交渉成立だな!」
俺は立ち上がってシャオと拳を合わせた。
――次の日、戦場の開戦前にて。
「今日もいい天気だなぁ。ジェイドもそう思わないか?」
「ええ、私もそう思います」
「オロオロオロオロ! オロオロオロオロ!」
「オロオロオロオロオ、ロオロオロオロ」
シャオを筆頭にテディとエルガルドの部隊の大半が気分悪そうに吐いていた。
「旦那~。これから戦うのか? オロオロオロオロ」
「いや、お前らホント何してんの??」
「二日酔いだよ……エルガルドが作る料理があまりにも美味くて酒が進んじゃってさ。それよりも怪物のせいだよ怪物……オロオロオロオロ」
「怪物ってなんだよ」
シャオは馬の上から何度も吐きまくっていた。
「テディの事でっせドクター」
顔色が土色したエルガルドが答えた。
「おいエルガルド大丈夫か?」
「テディと飲み比べしてこうなっちまったんです――オロオロオロオロ」
「テディが?? でもテディはいつも通りだぞ?」
テディに目を向けるといつものと何も変わらずジャンプしてふざけていた。
「騙されちゃ駄目だぜ旦那。テディの酒の強さは異常でっせ。テディを潰そうとしたけど逆に俺達がこうなっちまったんだ」
「テディって酒強かったんだ」
「強いってもんじゃねえですぜドクター!」
「そんな事よりお前らちゃんと戦えるんだよな!?」
「「……」」
「おいおい! 頼むぜ全く」
「ジャン!」
声に振り向くと、そこにいたのはロベルタだった。
「何なのよ! あなた達はこんな時にふざけてるの!? 一体何なのよこれは!!」
ロベルタが指を差す方を見ると、呆れる程そこら中では吐く兵士達が。
「大丈夫だって。任せろロベルタ」
「ジャンその言葉ちゃんと覚えておくわよ! 駄目だった時は覚えてなさいよ。ジャンに責任取ってもらうから!」
ロベルタはそう吐き捨て、自分の配置へと戻っていく。
「お~おっかねぇ姉ちゃんだな。誰なんだ?」
「ロア王国の侯爵で、さらにはこの戦の総大将だよ」
俺とジャンの心配をよそに、開戦の合図が鳴る。
「そうだよ!」
「旦那ぁ~。俺隊長やるの? 嫌なんだけど!」
シャオはそう言いながら酒を飲み、顔を真っ赤にしていた。
テントに分隊長達を集め、シャオの紹介と今後について話している。
「こんな奴が強いんですか!? 仮に強かったとしても隊長に向いてるとは思いません!」
「俺もこいつの意見に賛成だよ旦那。俺は個人で勝手に動きたいね」
テディがシャオを下から覗き込むようにして近づいていく。
じぃーと顔を見つめた後、鼻をつまんだ。
「ドクター! この人お酒くちゃ~い!」
腰をフリフリしながらテディがおちゃらける。
「旦那? こいつも隊長なの?」
「れっきとした隊長だよ。アウル軍のお笑い担当兼特攻隊だな」
「リリアもジャン様に何か言ってやってよ」
「確かにシャオは鬼神の如き強さでした。ですが隊長に向いているかどうかはまた違う話かと思います主様」
「そんな向いてる向いてないって話だったら、俺だって向いてはないし! それにテディとエルガルドだって元々は隊長って柄じゃないでしょ」
「そりゃひでーぜドクター! 俺はこう見えても頑張ってるぜ?」
「ハハハ。悪い悪い! でも隊長にしたから個性の強い部隊になってる。俺はシャオが部隊を率いて隊長やった方がおもしれぇーと思うんだけどな」
「はぁ。ジャン様の中ではどうせ決まっている事なんでしょう? 何を言っても駄目なのでしょう……」
「分かってくれた?」
「いえ、全く分かりません。ですが……そんな風に部隊を作っていき、ジャン様はアウル軍を活躍させて大きくしてきました。不安もありますが付いていきます」
「私も主様の意見に賛成します」
「ちょ、ちょ、ちょっと待てって! 本当に俺を隊長にするのか!? 旦那本気かよ!」
「本気だよシャオ。俺はお前をアウル軍の分隊長に任命する」
「めんどくせぇーなおい! でも旦那は命の恩人だからな……おかげでこうやって酒を飲んでられるんだ。仕方ないやるしかないか」
頭を掻きながら隊長の任を引き受けてくれた。
「明日の戦から部隊を率いて隊長をやらせるのは流石に難しいので、今回の戦中はジャン様の護衛をやらせるのはどうでしょう?」
「ならそうしよう。頼むぞシャオ」
「旦那の護衛か! そんな楽な仕事はないな! 任せろ」
「ジャン様に何かあったらお前の責任だからなシャオ」
「真面目な奴だなージェイド。お前ら旦那の部下だろ? 旦那の強さ知ってるんだろ? 旦那がそんな簡単にやられっかよ! くぅー! 酒うめぇーなおい」
「シャオが側に居たら安心だな! ただシャオ、これだけは言っておく」
「酒は飲んでもいい。だけど、酒飲んで負けました。酒のせいでやれました。酒のせいで部下を殺されちゃいましたは無しだ! いいな?」
酒を飲んでいた手を止めるシャオ。
「なんだよ、意外だな旦那。思ったより優しいんだな!」
リリアが突然シャオの前に立つ。
「貴様に教えといてやる! 主様……ジャン・アウル様は、ロア王国で最も慈悲深い貴族であり、そして強い。さらに今後、この大陸で最も偉大で有名に御方だ! お前が馴れ馴れしく話していい御方ではないぞ!」
「いま、今後って言ったか? 旦那の爵位ってなんだ?」
「子爵だけど」
「旦那って子爵なのかよ! もっと偉いと思ってたぜ」
「貴様、主様が子爵で不満なのか?」
「不満……? いや待て! 逆だな! ああそうだよ旦那!」
急にシャオの表情が明るくなる。
「旦那は今後出世するって事だよな! 子爵の時から分隊長をやっていたなら、旦那が偉くなれば必然的に分隊長の俺も偉くなる! だんだん仕事しなくて良くなる。結果朝から酒飲めるって事じゃねえか? そうだよな旦那!?」
「貴様はただサボりたい――」
「それによー! 最初から旨い酒を飲むより、徐々に旨い酒を飲むのも悪くねぇ! 偉くなってくれよ旦那。そうすれば俺も旨い酒が飲めるってもんだ」
「ならその為に力を貸せシャオ!」
「そういう事ならお安い御用だ旦那。交渉成立だな!」
俺は立ち上がってシャオと拳を合わせた。
――次の日、戦場の開戦前にて。
「今日もいい天気だなぁ。ジェイドもそう思わないか?」
「ええ、私もそう思います」
「オロオロオロオロ! オロオロオロオロ!」
「オロオロオロオロオ、ロオロオロオロ」
シャオを筆頭にテディとエルガルドの部隊の大半が気分悪そうに吐いていた。
「旦那~。これから戦うのか? オロオロオロオロ」
「いや、お前らホント何してんの??」
「二日酔いだよ……エルガルドが作る料理があまりにも美味くて酒が進んじゃってさ。それよりも怪物のせいだよ怪物……オロオロオロオロ」
「怪物ってなんだよ」
シャオは馬の上から何度も吐きまくっていた。
「テディの事でっせドクター」
顔色が土色したエルガルドが答えた。
「おいエルガルド大丈夫か?」
「テディと飲み比べしてこうなっちまったんです――オロオロオロオロ」
「テディが?? でもテディはいつも通りだぞ?」
テディに目を向けるといつものと何も変わらずジャンプしてふざけていた。
「騙されちゃ駄目だぜ旦那。テディの酒の強さは異常でっせ。テディを潰そうとしたけど逆に俺達がこうなっちまったんだ」
「テディって酒強かったんだ」
「強いってもんじゃねえですぜドクター!」
「そんな事よりお前らちゃんと戦えるんだよな!?」
「「……」」
「おいおい! 頼むぜ全く」
「ジャン!」
声に振り向くと、そこにいたのはロベルタだった。
「何なのよ! あなた達はこんな時にふざけてるの!? 一体何なのよこれは!!」
ロベルタが指を差す方を見ると、呆れる程そこら中では吐く兵士達が。
「大丈夫だって。任せろロベルタ」
「ジャンその言葉ちゃんと覚えておくわよ! 駄目だった時は覚えてなさいよ。ジャンに責任取ってもらうから!」
ロベルタはそう吐き捨て、自分の配置へと戻っていく。
「お~おっかねぇ姉ちゃんだな。誰なんだ?」
「ロア王国の侯爵で、さらにはこの戦の総大将だよ」
俺とジャンの心配をよそに、開戦の合図が鳴る。
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