小学6年生、同級生30人全員を殺した日本の歴史史上最凶最悪の少年殺人鬼が、異世界の12歳に乗り移り、異世界を駆ける!

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第二章

策略家と過激派

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 「食事とお酒を堪能して頂けていますか?」
 辺境伯が食事と飲み物を部下達も含めて全員分、しっかりと用意してくれていた。
 ジャンと分隊長達は、辺境伯のテント内で、他の部下達は外で食事をしている。

 「食事を用意して頂いて感謝していますアウグスト辺境伯」
 「何を言っているんですか! 大仕事を成功させた英傑に、この位は当然ですよ」

 「ドクター見て見て。ドクターの真似~!」
 テディは食べ終わった骨で般若の角を作り、般若の顔を真似る。

 「ハハハ、テディ変な顔!!」
 「ドクターが笑った! 笑った!」

 「これ美味しいな~。一体誰がどうやって作ってんだ? 是非教えてくれ!」
 エルガルドは出された料理に興味津々だった。

 「お前達はしたないぞ!! 主様に恥をかかせるんじゃない!!」

 「やはりジャン子爵の部下達は愉快でユニークだ。実に面白い! ケッケッケ、ケッケッケ」
 「はぁ~面白い。それで子爵にお尋ねしたいのですが、一体どうやったのですか?」
 急に真剣な表情になり、辺境伯がジャンに尋ねる。

 「お答えしなければいけませんか? 正直に言うと、辺境伯に私の思考をあまり聞かせたくないのですが……」
 
 「ケッケッケ。私も嫌われたものですねぇ~。上から聞かれたときにどう答えればいいのか、困ってしまうんですがねぇ~」
 分隊長と周りにいる辺境伯の部下までもジャンに視線を注ぐ。

 「はぁ~。分かりました……仕方ありません。お答えします……」
 「是非お願いします」
 正面にいる辺境伯は真っ直ぐこちらを見て、目を爛々とさせていた。

 ジャンはナイフとフォークをテーブルに置いて、静かに語り始める。

 「ヴァリックを仕留める為に最も必要だと思った事は、如何に私が馬鹿で愚か者、戦争の戦い方を知らない子供だと思わせる所にありました。圧倒的に油断させる事でした。その油断を突くしかないと考えていました」

 「私は一度、彼の策略にまんまとハマっています。ですからヴァリックは、私の事を警戒する程の相手ではないと思っていたはずです。まずした事はヴァリックの兵士達を誘拐し、残酷な殺し方と死体を送りつける事で、精神攻撃をしていると見せかけました」

 「きっとヴァリックはこう思ったはずです。『こんなんで精神攻撃をしているつもりか? 戦を知らない馬鹿な奴らだ。開戦する前にこちらの士気を高めてくれてありがとう』と。更に言うと守りが堅いヴァリックからしてみたら、わざわざ本陣に攻撃してきてくれて手間が省けたとさえ考えていた事でしょう」

 皆が食事の手を止めてジャンの話を固唾かたずを呑んで聞いていた。

 「士気が高まっていっている時に、私達はあえて正面から本陣に攻撃を仕掛けました。軍略的にみたら私が行った事は全て間違っています。だからこそヴァリックに隙が生まれると考えていました」

 「一番の問題は、ヴァリック本人の元へ辿り着けるかどうかでした。彼は本陣にあるどこかのテントに居るのではなく、地下に隠れていました。自分の魔法で造った地下に隠れていたのです。最初に本陣を見に行った時に魔力に気付き、発見したのです」

 「それで、子爵はどうやってヴァリックの元へ忍び込んだのですか?」

 「ジェイドと他の数名でヴァリック軍の兵士を装い、ジャン・アウルを捕らえたという報告でヴァリックの元へと向かったのです」

 「ジャン様は……その時、ただ捕まったのではありません。自らの手足を切り落として、ヴァリック軍の兵士にしていた事を自分にも行ったのです」
 ジェイドがその時の事を伝えた。
 
 「そこまでした甲斐あってヴァリックは、ジェイド達と私を地下にある自分の部屋に招き入れました。ヴァリックは私の顔と体を確認すると気が緩み、隙きが生まれました。私はその隙きを見逃さず、回復魔法で手足を治し、背中から心臓を突き刺したのです」

 「……」
 時が止まったかのように、皆がジャンの事を凝縮していた。

 「ぶっ飛んだ発想と行動力ですね子爵。手足を切断する? ヒャヒャヒャ! 頭がおかし過ぎる。回復魔法で治ると分かっていたとしても普通は出来ない」
  
 「ヴァリックを倒すまで経緯を聞いて確信しました。子爵以外でヴァリックを倒せる者など私を含めて居なかったと」

 「過分な評価です。アウグスト辺境伯に一つ聞きたいのですが、シルビアという人物をご存知ですか?」

 「シルビアですか? ん~よくある名前ですね。あまりピンとくる人物はいないですね。あ! でも確かヴァリックの娘がシルビアって名前でしたよ」

 「なるほど……」
 「何かあるんですか?」

 「凄い腕前の弓矢の使い手に出くわしまして、名前がシルビアだったもので……」
 「子爵が気にする程の腕前ですか。全軍に伝えて気を付ける事にしましょう」
 
 パチンッ!
 辺境伯が突然手を叩く。

 「話はこの辺にしましょう! 皆さん疲れていますしね。今この瞬間は、ヴァリックを仕留めた事を祝いましょう。乾杯!」

 「「「「「乾杯」」」」」
 ジャン達は好きなだけ食事と酒を堪能し、束の間の休息を楽しんだ。


 そして数日後――。

 「それじゃあ本番に行きますよ!」
 アウグスト辺境伯の掛け声と共に全軍が動き出した。
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