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〜クルクルカールの金髪少女〜

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 俺達は数日とにかく進めるだけ進んでいた。
 今日もクルル山脈へ向かっている道中で突然――

 「おおおおおおおおおおおお!!」
 どこからか,人が叫ぶ声が聞こえた。

 「おいカナデあっちの方でなんか声がするぞ」
 「クロエ,先に行って様子を見てきてくれないか?」
 「余がか!? しょうがないの」
 空を飛んでクロエが向かっていく。

 「人が襲われてたら助けてやれ~~!!」
 俺は大きな声でクロエに叫んだ。

 「とにかく追いかけるぞ。行くぞロイ」
 「カナデ走るの遅いんだから無理すんなよ」
 ロイにそう言われる。ロイより走るのが遅いのは事実なんだ……

 俺が息を切らしながら,ロイの背中を追いかけると,甲冑を着た人が何人かそれに倒れている人が何人か居る中でクロエが佇んでいる姿が見えた。

 「はあはあ……それで? クロエどういう状況?」
 「なんか魔物に襲われておったのでな,助けたのじゃ!」

 「それで? この人達は一体誰なんだ?」
 「ん~分からないのじゃ」

 すると馬車の中から一人の女性が降りてきた。今まで会った人間の中で最も華やかな衣装に包まれた姿で,クルクルカールの金髪美少女が降りてきた。

 「私達を助けてくれてありがとうございます」
 深々と頭を下げる。

 「お嬢様,そのように簡単に頭を下げては――」
 「いいんです! 私達の命の恩人ですよ?」
 「しかしですね……」

 「クルクルの姉ちゃんきっと貴族だぜ」
 「ロイの馬鹿! そんな事を口に出さなくても分かるんだよ」
 「その貴族がこんな所で何をしてたんじゃ?」

 「ええ……後で詳しくお話させて頂きます。それよりもまずは守ってくれた騎士の手当をしてもよろしいでしょうか?」
 そう言って彼女は騎士達に手当を始めた。

 「クロエ,回復魔法とか使えないのか?」
 「ん~そういう魔法は苦手なんじゃ……」
 「そうなのか……」

 俺はヴァイオリンを取り出し,音楽を奏でる。
 傷を治す事はないが,音楽には心や神経を落ち着かせる効果があると言われているから俺は少しでも為になればと思いヴァイオリンを弾いた。

 「カナデの音楽は余の心を落ち着かせる。ちょいと試してみるか」
 クロエが両手をかざし呪文を唱えると,辺りが白い温かい光に包まれだした。

 すると怪我をしていた,騎士達の傷が治みるみるうちに治っていく。

 「おおお傷が治っていく」
 騎士達が声を上げた。

 何故だか俺の疲れも吹き飛んでいた。

 「クロエ魔法使ったのか?」
 「ちょっと試しに回復魔法を使ったみのじゃ! ハッハッハやれば出来るもんじゃな」
 倒れていた騎士達は起き上がる。全員無事だったみたいだ。

 一同が揃って俺達に頭を下げる。
 「助けて頂いただけではなく,回復魔法まで掛けてくださり感謝致します」
 「良いのじゃ良いのじゃ」

 「私の名前はスカーレット・マルガレータと申します。海沿いに位置するチェスターという街の領主の娘。爵位は子爵になります」

 「カナデと言います」
 「クロエじゃ」
 「ロイってんだ」

 「それでカナデさん,誠に勝手なんですが,私達は王都へ向かおうとしていたんですが,こんな事になってしまいました。騎士の皆さんも疲弊しており,私達の街に戻ろうと思っているんですが,その道中の護衛をしていただけませんか? 勿論街に到着すれば,今回のお礼も含めた相応のお礼をさせて頂きますので」

 「ん~……」
 正直あんまり貴族とかそういった人達とは関わりたくはないんだが……

 「おお! 酒か? 酒くれるのか?」
 「オイラは貴族飯食いたいぞ! 貴族飯」
 この二人はすでにやる気満々だった。それに貴族飯ってなんだよ!

 「わっかりました。受けましょう」
 「ありがとうございます。それではこちらの馬車にお乗り下さい」

 「出発致しますよ」
 俺達は馬車の中に通され,チェスターという街に向かって出発する。

 「なんで王都を目指していたんですか?」
 「それはですね……私の十八歳の誕生日会での披露会で集まる沢山の貴族達を楽しませる余興を探そうと思っていたんです」

 「なるほど……でも王都向かう途中で魔物に襲われて,それどころではないと」
 「そうだと思っていたんですが,カナデさんどうか,誕生日会で先程やっていた音楽を披露してもらえませんか?」

 「え!?」
 「私達は,王都に今話題になっている吟遊詩人を探しに行ったんです。ですけど先程のカナデさんの音を聞いてこれだ! と思ったんです」

 「まあ確かにカナデの音楽を聴いたらそうなるじゃろ」
 「確かにな。他の事は全てダメダメだけど,音楽は本当にすげーよな」

 「二人してなんだよ! それでも……俺はあまり演奏したくないです」
 「なんでじゃ! いいじゃないか。報酬もでるじゃろきっと」
 「クルクル姉ちゃん困ってるんだから手伝ってやれよ~」

 権力者と仲良くなったり,繋がりを持って良いことなんて何一つないと俺は経験してる。
 「誕生日会はそこまで華やかにやらないといけないんですか?」

 「貴族の間では,特に成人の誕生日会はとても重要です。自分達の財力や武力,もしくは,斬新性を披露する事で,貴族としての 矜持きょうじを示す場となっています。他の貴族達に舐められないように,対等に見てもらえるように,そして私のような女性は結婚相手に見初められるために必要な場となっています」

 「それに私の家は最近貴族になった新興貴族で,今回の誕生日会を失敗する訳にはいかないんです。良い家柄の結婚相手を見つけてさらに貴族として安定させないといけないんです」

 「政略結婚って事ですか?」
 「そういう事ですね。でもその為に誕生日会で上手くやらないといけないんです。力を貸しては頂けませんか?」
 深々と頭を下げられた。

 「カナデ,クルクル姉ちゃんの事を助けよやれよ」

 ライムがバッグの中でゴソゴソ動き出した。
 「なんだよライム。ライムも手伝えってか?」
 ライムがひょこっと俺に手紙を出した。

 それはさすけさんの手紙だった。
 「音楽を広めてほしい……音楽を楽しめと?」

 ライムがそうだと言わんばかりに動いた。
 確かに音楽は特にクラシックは地球では貴族が発展させた歴史がある。
 だから今回の貴族の前で演奏する事によって興味を持ってもらう事で,音楽が発展する可能性は大いにあるけど……

 「何をカナデ迷っておるのじゃ。乗りかかった船なんじゃから力を貸してやるのじゃ」    

 「ん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。よし分かった手伝うよ」
 「本当ですか? ありがとうございます」

 「良かったなクルクル姉ちゃん」
 「ちなみにロイ。スカーレットさんだ! クルクル姉ちゃんじゃない。むしろスカーレット様と俺達は呼ばないと行けない立場だぞ」

 「んだよ! いいじゃんか」
 「別に構いませんよ」
 「そうはいってもですね……」
 まあ言っても仕方ないかと俺は諦めた。
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