逆愛-gyakuai-

槊灼大地

文字の大きさ
上 下
87 / 101

逆愛Ⅷ《嵐side》5

しおりを挟む
「やめ…放せ!放せよ!放…!!」



足も使って必死に暴れて俺から逃げようとする。




なぜそんなに嫌がる?



今更、放すつもりは無いけど。





「や、だ…!大空ぁ…大空ぁっ!助け…」





嘆きの声はいつしか助けを求める泣き声に変わった。



涙を流して必死に俺の名を呼んで。



肩を震わせ、必死に抵抗して。



―…誰かと勘違いしてるのか?




俺は洸弍先輩の手を開放し、グイッと引き寄せて抱きしめた。



髪を撫でて、背中を摩って力強く先輩を包み込んだ。



「大丈夫。俺、ここに居ますから」


「大…空…」


「はい。居ますよ、ここに」




すると先輩はギュウッと俺の背中に両手を回した。



泣き過ぎて過呼吸になっている洸弍先輩を俺は落ち着くまで抱きしめた。




「落ち着きました?」



何分かして先輩が落ち着いたあと、洸弍先輩の顔を確認したくて俺の胸に埋めている顔を触ろうとした。



すると、先輩は更に顔を埋めて抵抗した。



「…顔見んな」



俺は先輩を抱きしめながら、先輩の頭の上に顔を乗せて先輩の体温を感じていた。




これだけでも幸せだと感じてしまう。



今までが今までだったから。




何分経ったか分からないぐらい沈黙が続いた。



洸弍先輩がその沈黙を破った。



「大空…」


「はい」


「俺は今からお前を困らせることを言う」




そして深呼吸をして言った。









「大空が好きだ」







好き?



ウソだろ、オイ。



だって『嫌い』って言ってたじゃないか。





「俺のこと嫌いなんじゃないんですか?」



俺の質問に洸弍先輩は黙る。



しばらく沈黙が続き、雨の音が増す。




「足利槞唯に、お前を好きになったらお前をこの学園から追放させるって言われた」



―…追放?



「だから言えなかった。好きって言えばお前が追放されるから」



待っ…



マサやんが言ってた『好きって言えない状況』ってこのことだったのか。



だったら納得が行く。



最後に抱いたとき、俺を求めていた理由が今なら分かる。



「本当は好きだったんだよお前が」


「何で本当のこと言わなかったんですか…俺、追放されても構わなかったのに」


「お前に会えなくなるくらいなら、俺は自分の気持ちを押し殺す…それぐらい好きなんだよお前が」



経理の担当がルイルイからマサやんに変わったのはこのせいだったのか。



俺を嫌いとしか言えずに、苦しんでいたのか洸弍先輩は。





「俺も好きです」




俺の発言に、顔を埋めていた先輩が顔を上げて俺を見つめた。



「本当に…?だってお前には帝真が…」


「竜は先輩の身代りになってくれただけで、恋愛感情は無い親友ですよ。図書室以来、してないです」




ウソだろと言わんばかりの顔をして俺を見つめて。



――…あぁ、愛しい






そんな先輩の唇を再び奪った。



そんな中、洸弍先輩の携帯電話が鳴る。



きっと神威だろう。



「いいんですか?携帯鳴っ…」



俺がキスを止めてそう言うと、今度は先輩からキスをし始めた。




―…神威より俺を選んで



舌を絡めて、抱き合って。



我慢できない。



「先輩、俺の部屋行きましょう」



「バカ…鍵が無ぇだろ。綾くんに折り返し…」



俺はポケットから過去資料室の鍵を取り出し、部屋の鍵を開けた。



「お前っ…持ってたのかよ鍵」


「先輩と一緒に居たかったんで」



そして俺の部屋へと向かい、過去資料室を後にした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

その瞳の先

sherry
BL
「お前だから守ってきたけど、もういらないね」 転校生が来てからすべてが変わる 影日向で支えてきた親衛隊長の物語 初投稿です。 お手柔らかに(笑)

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。 ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。 「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」 と、親友の父から衝撃の告白。 なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。 母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。 「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」 と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。 でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。 同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。 「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」 「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」 腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡ ※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

処理中です...