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逆愛Ⅶ《雅鷹side》8
しおりを挟む洸弍くんはかなり息を切らしてぐったりし、俺に寄り掛かってきた。
相当疲れたんだろう。
俺は洸弍くんを抱きしめて髪を撫でながら質問した。
「俺とアヤちゃんのどっちが気持ち良かった?」
アヤちゃんも上手いけど、俺も結構負けない自信はあったりする。
マゾの気持ちを理解してるサドは最強のサドだからね。
そして洸弍くんは俺の胸に顔を埋めて笑いながら質問に答えた。
「…相手が大空じゃないなら、誰とヤッても同じ」
「え、嵐くん?」
「大空がいい。大空じゃなきゃ嫌だ。大空としたい。大空が……好き」
嵐くんが好き?
さっき嫌いって言ってたのに、嵐くんとしたいってどういうことだろう。
「嫌いじゃないの?嵐くんのこと」
「好きだよ。大空が好き。だけどもうダメなんだ。好きでいても苦しいだけ…」
洸弍くんは泣いてる。
顔を埋めて表情は確認できないけど、震えてる。
「嵐くんに好きって言ったの?もしかして振られた?」
「言えないんだ。好きって言ったら大空は追放されるから」
…追放?
経理が狂った場合、会計部リーダーが責任を取り、資産を奪われるっていううちの学園に記載されてる生徒会規約のあの『追放』のこと?
確かに嵐くんは生徒会会計部リーダーだし、当て嵌まる。
でも、誰がそんなこと?
「追放なんて、簡単に出来ることじゃないよ」
「足利槞唯ならそれが簡単に出来るんだ…」
「ルイちゃん?」
ルイちゃんはMY学園で経理の担当をしている。
最終権限はリーダーにあるけど、彼なら裏の手を使っても経理を狂わせることが可能だろう。
「俺が大空を好きになったら、大空を学園から追放させるって…だから、言ってない」
「なにそれ…最低」
「大空は俺を好きだって言ってくれたのに、俺は応えてやれなかった…本当は好きなのに」
両想いだったのに、ルイちゃんのせいで引き裂かれたってわけね。
洸弍くんと嵐くんが、愁ちゃんとアヤちゃんにでも見えたのかな。
結構、敵に回すと厄介だからね彼。
「俺がなんとかしてあげるから、嵐くんに自分の気持ち……!?」
やっと顔を上げた洸弍くんは、首を振りながら俺の言葉を聞いてボロボロと涙を零した。
「ダメなんだっ。もう大空は帝真竜のモノだから」
「竜くんと嵐くんは仲良しだけど、嵐くんはまだ洸弍くんを好きかもし…」
「一昨日、二人が図書室でヤッてるの見たっ!もうダメなんだ…」
俺にしがみついて泣きながら体を丸くして。
好きな人に応えてもらえない、まるで昔の俺を見てるようで胸が痛い。
「ねぇ、先生…」
助けてあげなきゃ。
「純粋に人を好きなだけのに、どうしてこんなに苦しまないといけないのかな…」
俺が、助けてあげなきゃ――
そして再び俺の胸に顔を埋めて泣き出した。
俺は、泣き止むまでずっと洸弍くんを抱きしめていた。
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