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逆愛Ⅵ《嵐side》1
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夏休みが終わり、新学期が始まった。
時間が経っても好きな人に言われた『嫌い』という言葉が未だに頭から離れない。
「なあ、竜」
「なに?」
「お前、嫌いな奴に嫌いって言える?」
昼休み。
同じクラスの竜と、来週提出する課題用の資料探しに図書室に来た。
俺は机に座りながら資料を読み、竜は背伸びして資料を取っている。
「なに、誰かに嫌いって言われたの?」
竜が振り返って俺を見る。
「いや、別にそういうわけじゃ…」
洸弍先輩を抱きながら俺は何度も何度も『好きだ』と繰り返したのに、先輩からは『嫌いだ』としか言われなかった。
「最近、嵐が元気ないのって…それと関係してるの?」
鋭いな、竜。
洸弍先輩は俺じゃなくて神威を好きだし、俺のこと嫌いだってのは分かってたことなんだ。
洸弍先輩はセックス出来れば誰でもいいみたいだったし。
俺はただ神威の代わりだったんだよな結局。
俺だって、先輩をただ犯して俺への仕打ちを止めて欲しかっただけじゃないか。
それなのに、体の関係になって本気になった俺がバカなんだ。
「…もう過去の事だからいいんだ」
生徒会室で一緒になっても仕事の話しかしないし、お互いに避け合ってるし。
あの頃に戻りたくても戻れない。
俺が好きなんて言ったから、だからウザったいと思ったのか?
ああ、
こんなことなら洸弍先輩を犯さなきゃ良かった。
好きだなんて言わなきゃ良かった。
「嵐?」
「俺だって嫌いな奴はいるよ。でも、そいつに嫌いだなんて言えない」
嫌いな人間に『嫌いだ』って言うことは、心の底から嫌いってことじゃないのか?
その言葉を俺に言った洸弍先輩は、俺の事が相当嫌いってことになる。
あぁ、なんだ。
どう考えてもやっぱり嫌われてんじゃん俺。
考えれば考える程、自分が惨めになっていく。
「また哀しい顔してるよ嵐」
資料を読む俺の背後から、竜が俺を抱きしめた。
「最近の嵐ずっと哀しい顔してる。そんな顔しないで」
「竜…」
竜に心配されるなんて、俺そんなに弱ってたのか?
竜だって、家族が病気で辛いのに―…
ダメだな、俺。
ふと、竜のつけてる香水の匂いが懐かしい感じがした。
凄く懐かしくて、愛しい人がつけていた香水。
林間学校以来のこの香り。
「洸弍先輩…」
洸弍先輩に後ろから抱きしめられてるような錯覚に陥って、竜の腕をギュウッと掴んだ。
「先輩…」
俺が呟いた言葉に竜が反応した。
「洸弍先輩って…生徒会の寺伝さんのこと?」
「いや…あ、悪い」
竜の一言でハッと我に返った。
バカだ俺。
香水ひとつで親友と先輩を間違えるなんて…
「もしかして嵐、寺伝さんとそういう関係だったの?」
竜が痛い部分を探り出す。
竜に本当のことを言ったところで何にもならない。
だって俺と先輩はもう―…
「もう終わったことだから。嫌われてたし…俺だけ舞い上がってたみたい」
思い出したくない過去。
洸弍先輩とキスして、洸弍先輩と抱き合って、それだけで幸せでいられた過去。
それが今では、会話すらない。
もういい、
もういいんだ
―…忘れよう
沈黙の中、昼休み終了の予鈴が鳴った。
「次の授業って何だっ…」
席を立って図書室を出ようとした瞬間、竜が俺の唇を奪った。
時間が経っても好きな人に言われた『嫌い』という言葉が未だに頭から離れない。
「なあ、竜」
「なに?」
「お前、嫌いな奴に嫌いって言える?」
昼休み。
同じクラスの竜と、来週提出する課題用の資料探しに図書室に来た。
俺は机に座りながら資料を読み、竜は背伸びして資料を取っている。
「なに、誰かに嫌いって言われたの?」
竜が振り返って俺を見る。
「いや、別にそういうわけじゃ…」
洸弍先輩を抱きながら俺は何度も何度も『好きだ』と繰り返したのに、先輩からは『嫌いだ』としか言われなかった。
「最近、嵐が元気ないのって…それと関係してるの?」
鋭いな、竜。
洸弍先輩は俺じゃなくて神威を好きだし、俺のこと嫌いだってのは分かってたことなんだ。
洸弍先輩はセックス出来れば誰でもいいみたいだったし。
俺はただ神威の代わりだったんだよな結局。
俺だって、先輩をただ犯して俺への仕打ちを止めて欲しかっただけじゃないか。
それなのに、体の関係になって本気になった俺がバカなんだ。
「…もう過去の事だからいいんだ」
生徒会室で一緒になっても仕事の話しかしないし、お互いに避け合ってるし。
あの頃に戻りたくても戻れない。
俺が好きなんて言ったから、だからウザったいと思ったのか?
ああ、
こんなことなら洸弍先輩を犯さなきゃ良かった。
好きだなんて言わなきゃ良かった。
「嵐?」
「俺だって嫌いな奴はいるよ。でも、そいつに嫌いだなんて言えない」
嫌いな人間に『嫌いだ』って言うことは、心の底から嫌いってことじゃないのか?
その言葉を俺に言った洸弍先輩は、俺の事が相当嫌いってことになる。
あぁ、なんだ。
どう考えてもやっぱり嫌われてんじゃん俺。
考えれば考える程、自分が惨めになっていく。
「また哀しい顔してるよ嵐」
資料を読む俺の背後から、竜が俺を抱きしめた。
「最近の嵐ずっと哀しい顔してる。そんな顔しないで」
「竜…」
竜に心配されるなんて、俺そんなに弱ってたのか?
竜だって、家族が病気で辛いのに―…
ダメだな、俺。
ふと、竜のつけてる香水の匂いが懐かしい感じがした。
凄く懐かしくて、愛しい人がつけていた香水。
林間学校以来のこの香り。
「洸弍先輩…」
洸弍先輩に後ろから抱きしめられてるような錯覚に陥って、竜の腕をギュウッと掴んだ。
「先輩…」
俺が呟いた言葉に竜が反応した。
「洸弍先輩って…生徒会の寺伝さんのこと?」
「いや…あ、悪い」
竜の一言でハッと我に返った。
バカだ俺。
香水ひとつで親友と先輩を間違えるなんて…
「もしかして嵐、寺伝さんとそういう関係だったの?」
竜が痛い部分を探り出す。
竜に本当のことを言ったところで何にもならない。
だって俺と先輩はもう―…
「もう終わったことだから。嫌われてたし…俺だけ舞い上がってたみたい」
思い出したくない過去。
洸弍先輩とキスして、洸弍先輩と抱き合って、それだけで幸せでいられた過去。
それが今では、会話すらない。
もういい、
もういいんだ
―…忘れよう
沈黙の中、昼休み終了の予鈴が鳴った。
「次の授業って何だっ…」
席を立って図書室を出ようとした瞬間、竜が俺の唇を奪った。
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