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純愛FINAL《咲輝side》
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それから2ヶ月後の10月16日、誕生日の前日に緋禄は亡くなった。
竜から「ひー兄の遺影の写真、咲輝さんが撮った写真を使いたいです」と連絡がきた。
俺は遺影の写真を選ぶために画像を見返すとそこには緋禄の笑顔がたくさんあって、どの写真の笑顔も良すぎてどれを選んでいいか分からないぐらい緋禄で溢れている。
―…こんなことのために撮った写真じゃないのにな
写真を選びながらそう思った。
数日後、納棺に立ち会わせてもらえた。
棺に入った緋禄は、まるで出会った時と同じで園庭の芝生で寝ているかのような安らかな顔をしている。
花に囲まれて、とても綺麗だ―…
気付くと俺の目から涙が零れ落ちていた。
なぁ緋禄…
お前はどんな気持ちで独りでこの世を去ったんだ?
本当は、面会謝絶なんてしないで欲しかった。
最期の最期まで緋禄の傍にいたかった。
弱っていく緋禄を独りになんてしたくなかった。
でも緋禄がそれを望まなかったから、俺はそれを受け入れた。
でも本当は、お前の傍にいたかったよ。
ごめん。
泣くなと言われたのに。
涙が止まらないんだ。
目の前に緋禄はいるのに。
もう動かない―…
笑わない。
話さない。
話せない。
抱きしめることすら、もうできない。
あぁ、
こんなにも、こんなにも、
緋禄は大きな存在だったのか。
今すぐ逢いにいきたい。
後を追いかけたくなるほどに。
そんなこと緋禄が望んでいないと分かるのに。
こんなところで泣くことしか出来ない。
怒ってるよな。
でもダメなんだ。
今日だけは泣くのを許して欲しい。
緋禄、
―…どうか、安らかに
それから3ヶ月が過ぎて、北風が吹く中いつもの園庭で一人で座って空を眺めていると竜に声をかけられた。
「咲輝さん、探しました」
「竜。バンド復活できたんだってな。よかった」
竜は緋禄が亡くなってからしばらく歌が歌えなくなってバンド活動を休止していたが、最近また歌えるようになった。
「ひー兄よくここで寝てましたよね」
「そうだな。俺もここが気に入ってるよ。どうした?」
「咲輝さんに渡さなきゃいけないものがあって」
竜は俺に手紙を差し出した。
「ひー兄が書いた咲輝さん宛の手紙が見つかったんです。俺ずっとこれ持ってて。渡さなきゃと思って」
封筒には懐かしい緋禄の字で『咲輝へ』と書かれていた。
「中身は読んでないですよ」そういって竜は去っていった。
俺はその場で手紙を開けると、その中に俺が緋禄にあげた指輪も入っていた。
咲輝へ
お前がこれを読んでいるということは、俺はもうこの世にはいないんだろうな。
咲輝泣いてるだろ?泣くなよ。笑ってて欲しい。俺は咲輝の笑顔が好きだから。泣いたら怒るからな。
たった17年(もしも18になってたら嬉しいな)だったけど、俺の人生は満たされた。咲輝がいたから。毎日が楽しかった。ゲームを受け入れてくれて嬉しかった。咲輝と出逢えて俺は幸せだったよ。
待ってるから。一途に咲輝のこと待ってる。
あ…俺に逢いたいからってすぐこっちにくるなよ?そしたら怒るからな。見つけてもしばらくは口聞いてやらないからな。
待ってるから。ずっとずっと待ってる。
だから咲輝は咲輝のこれからを、咲輝の人生をゆっくり楽しめよ。俺はちゃんと空から見てるから。
空を見上げれば俺がいるから。だから俺のことは忘れないで。本当にありがとう。先にいってるからな。
辛くなったら上を見上げろよ。きっとそこに俺はいるから。
愛してるよ咲輝。またな。
緋禄
竜から「ひー兄の遺影の写真、咲輝さんが撮った写真を使いたいです」と連絡がきた。
俺は遺影の写真を選ぶために画像を見返すとそこには緋禄の笑顔がたくさんあって、どの写真の笑顔も良すぎてどれを選んでいいか分からないぐらい緋禄で溢れている。
―…こんなことのために撮った写真じゃないのにな
写真を選びながらそう思った。
数日後、納棺に立ち会わせてもらえた。
棺に入った緋禄は、まるで出会った時と同じで園庭の芝生で寝ているかのような安らかな顔をしている。
花に囲まれて、とても綺麗だ―…
気付くと俺の目から涙が零れ落ちていた。
なぁ緋禄…
お前はどんな気持ちで独りでこの世を去ったんだ?
本当は、面会謝絶なんてしないで欲しかった。
最期の最期まで緋禄の傍にいたかった。
弱っていく緋禄を独りになんてしたくなかった。
でも緋禄がそれを望まなかったから、俺はそれを受け入れた。
でも本当は、お前の傍にいたかったよ。
ごめん。
泣くなと言われたのに。
涙が止まらないんだ。
目の前に緋禄はいるのに。
もう動かない―…
笑わない。
話さない。
話せない。
抱きしめることすら、もうできない。
あぁ、
こんなにも、こんなにも、
緋禄は大きな存在だったのか。
今すぐ逢いにいきたい。
後を追いかけたくなるほどに。
そんなこと緋禄が望んでいないと分かるのに。
こんなところで泣くことしか出来ない。
怒ってるよな。
でもダメなんだ。
今日だけは泣くのを許して欲しい。
緋禄、
―…どうか、安らかに
それから3ヶ月が過ぎて、北風が吹く中いつもの園庭で一人で座って空を眺めていると竜に声をかけられた。
「咲輝さん、探しました」
「竜。バンド復活できたんだってな。よかった」
竜は緋禄が亡くなってからしばらく歌が歌えなくなってバンド活動を休止していたが、最近また歌えるようになった。
「ひー兄よくここで寝てましたよね」
「そうだな。俺もここが気に入ってるよ。どうした?」
「咲輝さんに渡さなきゃいけないものがあって」
竜は俺に手紙を差し出した。
「ひー兄が書いた咲輝さん宛の手紙が見つかったんです。俺ずっとこれ持ってて。渡さなきゃと思って」
封筒には懐かしい緋禄の字で『咲輝へ』と書かれていた。
「中身は読んでないですよ」そういって竜は去っていった。
俺はその場で手紙を開けると、その中に俺が緋禄にあげた指輪も入っていた。
咲輝へ
お前がこれを読んでいるということは、俺はもうこの世にはいないんだろうな。
咲輝泣いてるだろ?泣くなよ。笑ってて欲しい。俺は咲輝の笑顔が好きだから。泣いたら怒るからな。
たった17年(もしも18になってたら嬉しいな)だったけど、俺の人生は満たされた。咲輝がいたから。毎日が楽しかった。ゲームを受け入れてくれて嬉しかった。咲輝と出逢えて俺は幸せだったよ。
待ってるから。一途に咲輝のこと待ってる。
あ…俺に逢いたいからってすぐこっちにくるなよ?そしたら怒るからな。見つけてもしばらくは口聞いてやらないからな。
待ってるから。ずっとずっと待ってる。
だから咲輝は咲輝のこれからを、咲輝の人生をゆっくり楽しめよ。俺はちゃんと空から見てるから。
空を見上げれば俺がいるから。だから俺のことは忘れないで。本当にありがとう。先にいってるからな。
辛くなったら上を見上げろよ。きっとそこに俺はいるから。
愛してるよ咲輝。またな。
緋禄
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