58 / 63
純愛FINAL《咲輝side》
3
しおりを挟む「落ち着いたか?」
「―…うん」
それから俺達はキスをした。
キスだけで何十分もしたと思う。
舌を絡ませて息をきらせて。
「咲輝、抱いて…」
緋禄は自分の手に俺の指を絡ませて、上目遣いで懇願した。
恋人として初めてのセックスをしよう。
緋禄は俺の服を脱がせて、肌に唇をつけた。
それから舌を使って上半身を舐め始め、俺の首筋や上半身にキスマークをつける。
しばらくすると、緋禄が息を切らした。
「はぁ……はぁ…」
「大丈夫か、緋禄?」
「ん…大丈夫。咲輝と繋がりたい」
緋禄は俺をギュッと抱きしめる。
俺はそんな緋禄にキスをしてから用意していたローションを取り出して、それをたっぷりと俺の秘部に塗り、馴染ませて指を入れた。
「あっ…ん」
ゆっくりと根元まで指を入れて動かす。
指を増やし、波の音と共にイヤらしい音が広がる。
少し慣らした所で指を抜き、台湾で購入したあのコンドームを装着しようとした。
その瞬間、緋禄がその手を掴んで引き留めた。
「咲輝…今日はゴム無しでしたい。最期に俺のナカを咲輝で満たして欲しい」
今までずっと、コンドームは欠かさず装着してきた。
本当なら、今回も装着するのが望ましい。
でも緋禄が望むのなら。
してやれることはしてやりたい。
それは建前で、本当は俺自身が最期に何も隔てることなく緋禄のナカを感じたいと思ってしまった。
だから、緋禄の想いと自分の想いを優先させることにした。
「…辛かったら言うんだぞ」
「うん」
そして、硬くなった俺自身にもローションを塗りたくり緋禄の秘部へ押し当てた。
「あっ!」
ゆっくりと緋禄のナカに俺が入っていく。
初めて、何も隔てずに緋禄のナカを感じれたことに感動した。
愛しい。
温かい。
満たされる。
心も、体も、これ以上ないぐらいに満たされていく。
「咲輝、咲輝ぃ」
愛しいその声で名前を呼ばれ、俺は返事をするかのように空いてる緋禄の両手に自分の手を重ねた。
緋禄はその手をギュッと握り返した。
俺はキスをしながらゆっくりと緋禄の様子を見て腰を揺らした。
「はあっ…ん…咲、輝…ごめ……もっと速く動きたいよな?」
「大丈夫。こうして繋がれているだけで幸せだ」
もう充分満たされている。
こうして、緋禄の温もりを感じられているだけで。
―…全てが愛しい
「緋禄、愛してる」
緋禄の耳元でそう囁くと、緋禄はまた泣いてしまった。
「俺も愛してる。咲輝…愛してる」
今、心も体も繋がってる。
なぁ、緋禄
緋禄に出逢えて幸せだよ。
愛しくて堪らない。
俺達は何度も何度も「愛してる」を繰り返した。
まるで覚えたての言葉みたいに、何度も。
何度言っても足りない。
キスをしながら、腰を揺らして
「愛してる―…」
愛してるよ緋禄。
愛してる。
この温もりも、緋禄の優しさも忘れない。
必ず見つけ出すから。
だからしばらく待っていて。
ありがとう、緋禄。
「あっ…―…」
「っ―……」
そして俺と緋禄は同時に果てた。
こうして繋がれてる手から感じる緋禄の温もりだけで、幸せが増していく。
何度キスしたか、
何度呼び合ったか、
何度愛を確かめたか分からない。
「忘れないよ、緋禄」
待っていて。
必ず、俺が見つけ出すから。
「ありがとう」
何十年、何百年かかっても必ず。
だから安心して逝くといい。
「愛してる」
波の音を子守唄にして、二人で裸のまま朝まで抱き合った。
緋禄に逢えたのは、この日が最後だった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
アタエバネ ~恵力学園一年五組の異能者達~
弧川ふき
ファンタジー
優秀な者が多い「恵力学園」に入学するため猛勉強した「形快晴己(かたがいはるき)」の手首の外側に、突如として、数字のように見える字が刻まれた羽根のマークが現れた。
それを隠して過ごす中、学内掲示板に『一年五組の全員は、4月27日の放課後、化学室へ』という張り紙を発見。
そこに行くと、五組の全員と、その担任の姿が。
「あなた達は天の使いによってたまたま選ばれた。強引だとは思うが協力してほしい」
そして差し出されたのは、一枚の紙。その名も、『を』の紙。
彼らの生活は一変する。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・出来事などとは、一切関係ありません。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。
にのまえ
BL
バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。
オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。
獣人?
ウサギ族?
性別がオメガ?
訳のわからない異世界。
いきなり森に落とされ、さまよった。
はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。
この異世界でオレは。
熊クマ食堂のシンギとマヤ。
調合屋のサロンナばあさん。
公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。
運命の番、フォルテに出会えた。
お読みいただきありがとうございます。
タイトル変更いたしまして。
改稿した物語に変更いたしました。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる