純愛-junai-

槊灼大地

文字の大きさ
上 下
57 / 63
純愛FINAL《咲輝side》

2

しおりを挟む

「本当の…恋人?」


「そうだ。ゲームじゃなくて、本当の恋人に」




緋禄は驚いた表情で俺を見た。



「ダメだ…だって…そんなことしたら、咲輝は辛くなるだろ…俺はお前を…遺して逝くんだから」



「死なないよ緋禄は。俺の中で生きる。生き続ける」



俺は泣きじゃくる緋禄の背中を優しく撫でながら言う。



「俺もまだ咲輝と一緒にいたい。ずっとずっと一緒にいたい…でも…俺はもうすぐ…」




ずっと考えていた。
俺が、緋禄にしてやれること。



多分、これぐらいしか無い。



少しでも緋禄を安心させてやることしか。



「大丈夫。生まれかわっても俺は緋禄を探して見つけ出す。だから来世でもまた結ばれよう」



俺は立ち上がって自分の鞄から小さな箱を取り出し、再び緋禄の前に座った。



「緋禄、左手を出して」


「指輪…?」



俺はその綺麗な指輪を取り出して、緋禄の左手の薬指に嵌めた。



そして身に付けていたネックレスを首から外し、緋禄が誕生日にくれた指輪を緋禄の右手に乗せた。



少しだけ照れたが、王子様みたいに膝まづいて俺は自分の左手を緋禄に差し出した。



「緋禄も俺を恋人として受け入れてくれるなら、俺の左手の薬指にその指輪を嵌めてくれないか?」



緋禄はゆっくりと俺の左手の薬指に指輪を嵌めた。



まるで結婚式の儀式のようで、これで本当に結ばれたのだと実感した。



「緋禄がいなくなったら、この指輪とその指輪、2つの指輪は俺がずっと預かる。必ず来世で緋禄を見つけるから、そしたらまたお互いこの指輪を嵌めよう。嫌とは言わせない」



俺はそう言って、緋禄の左手の薬指にキスをした。




「嫌なんて言うかよ…」


「よかった」



ずっと考えていた。
緋禄にしてやれること。



他人を優先して、自分を優先しない緋禄だから。



だからそんな緋禄を早く安心させたくて。



ずっと、ずっと、こうしたかった。




「待ってるからな…必ず咲輝が見つけてくれるって信じてるからな」



「あぁ。だから安心して、緋禄」



「咲輝…ごめん…ごめん…涙、止まんない」




泣いたり、弱音を吐かなかった緋禄。



でも本当は違う。



他人を優先して、泣いたり弱音を吐いたりが出来なかったんだ。



「いいよ。今まで辛かったな。言いたいことがあるなら言って欲しい」



一番苦しいのは緋禄なのに。




だから、辛い思いを抱えたまま独りでなんて逝かせてやらない。



俺は緋禄の優しい所も弱い所も、全てを受け入れて生きていくから。



少しでも心を軽くして安心して眠って欲しい。



「竜が…竜が俺の後を追ってこないか…心配で…」




緋禄は初めて弱音を吐いた。



俺は緋禄の不安が無くなるまで話しを聞くことにした。



「分かった。竜のことは任せて。みんなで協力して必ず後は追わせない。後は?」



背中をさすりながら誘導をする。



今まで抱え込んでいたものすべて、解放するといい。



お前だけが、苦しむ必要は無いんだ。




「ごめん。咲輝にこんなこと…言っても困らせるだけなのに…」


「緋禄。お前は今まで一人で頑張りすぎた。俺には弱音を吐いて欲しい。それも恋人の役目だと思ってる」


「ありがとう…咲輝…」



今までずっと、苦しくても無理して笑っていたんだろう。



俺は知ってる。



誰よりも、緋禄よりも、緋禄のことを知っているつもりだ。



だから、泣いていい。
弱さを見せてもいい。
甘えて欲しい。



今日だけは素直になっていいんだよ。




俺だけの、緋禄―…




どんなお前も包み込むのが、俺の役目なんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

アタエバネ ~恵力学園一年五組の異能者達~

弧川ふき
ファンタジー
優秀な者が多い「恵力学園」に入学するため猛勉強した「形快晴己(かたがいはるき)」の手首の外側に、突如として、数字のように見える字が刻まれた羽根のマークが現れた。 それを隠して過ごす中、学内掲示板に『一年五組の全員は、4月27日の放課後、化学室へ』という張り紙を発見。 そこに行くと、五組の全員と、その担任の姿が。 「あなた達は天の使いによってたまたま選ばれた。強引だとは思うが協力してほしい」 そして差し出されたのは、一枚の紙。その名も、『を』の紙。 彼らの生活は一変する。 ※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・出来事などとは、一切関係ありません。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。

にのまえ
BL
 バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。  オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。  獣人?  ウサギ族?   性別がオメガ?  訳のわからない異世界。  いきなり森に落とされ、さまよった。  はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。  この異世界でオレは。  熊クマ食堂のシンギとマヤ。  調合屋のサロンナばあさん。  公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。  運命の番、フォルテに出会えた。  お読みいただきありがとうございます。  タイトル変更いたしまして。  改稿した物語に変更いたしました。

必然ラヴァーズ

須藤慎弥
BL
ダンスアイドルグループ「CROWN」のリーダー・セナから熱烈求愛され、付き合う事になった卑屈ネガティブ男子高校生・葉璃(ハル)。 トップアイドルと新人アイドルの恋は前途多難…!? ※♡=葉璃目線 ❥=聖南目線 ★=恭也目線 ※いやんなシーンにはタイトルに「※」 ※表紙について。前半は町田様より頂きましたファンアート、後半より眠様(@nemu_chan1110)作のものに変更予定です♡ありがとうございます!

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

処理中です...