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純愛FINAL《緋禄side》
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しおりを挟む「本当の…恋人?」
「そうだ。ゲームじゃなくて、本当の恋人に」
意外な咲輝の発言に驚いた。
だって、俺はもうすぐ死んでしまうのに。
「ダメだ…だって…そんなことしたら、咲輝は辛くなるだろ…俺はお前を…遺して逝くんだから」
「死なないよ緋禄は。俺の中で生きる。生き続ける」
咲輝は泣きじゃくる俺の背中を優しく撫でながら言う。
「俺もまだ咲輝と一緒にいたい。ずっとずっと一緒にいたい…でも…俺はもうすぐ…」
「大丈夫。生まれかわっても俺は緋禄を探して見つけ出す。だから来世でもまた結ばれよう」
咲輝は立ち上がって自分の鞄から小さな箱を取り出し、再び俺の前に座った。
「緋禄、左手を出して」
その箱を開けると、中には指輪が入っていた。
「指輪…?」
咲輝はその綺麗な指輪を取り出して、俺の左手の薬指に嵌めた。
そして身に付けていたネックレスのチェーンを首から外し、俺が誕生日にあげた指輪を俺の右手に乗せた。
まるで王子様みたいに膝まづいて、咲輝は自分の左手を俺に差し出す。
「緋禄も俺を恋人として受け入れてくれるなら、俺の左手の薬指にその指輪を嵌めてくれないか?」
そんなの、いいに決まってる。
俺は緊張しながら咲輝の左手の薬指に指輪を嵌めた。
よかった。
サイズぴったりだった。
「緋禄がいなくなったら、この指輪とその指輪、2つの指輪は俺がずっと預かる。必ず来世で緋禄を見つけるから、そしたらまたお互いこの指輪を嵌めよう。嫌とは言わせない」
咲輝はそう言って、俺の左手の薬指にキスをした。
ばか―…
本当の王子様かよ…
「嫌なんて言うかよ…」
「よかった」
微笑んで俺を見つめる咲輝が愛しい。
まだ死にたくない。
まだ咲輝と一緒にいたい。
でも来世でも咲輝が俺と結ばれたいと願うなら、
死ぬのも、咲輝を置いて逝くのも怖くない。
俺が先に走り出すだけのことなんだ。
「待ってるからな…必ず咲輝が見つけてくれるって信じてるからな」
「あぁ。だから安心して、緋禄」
咲輝は俺を優しく抱き締める。
「咲輝…ごめん…ごめん…涙、止まんない」
「いいよ。今まで辛かったな。言いたいことがあるなら言って欲しい」
泣くことなんか、弱音を吐くことなんか許されないと勝手に思ってた。
でも俺は本当は弱くて、怖くて、辛くて、ずっと苦しかったんだ。
だから咲輝に甘えた。
「竜が…竜が俺の後を追ってこないか…心配で…」
「分かった。竜のことは任せて。みんなで協力して必ず後は追わせない。後は?」
咲輝に誘導されるように、たくさん話を聞いてもらった。
今まで抱え込んでいたものすべて。
咲輝はずっと優しい顔で聞いてくれた。
「ごめん。咲輝にこんなこと…言っても困らせるだけなのに…」
俺一人で抱えてればいいのに。
咲輝に甘えて止まらない。
「緋禄。お前は今まで一人で頑張りすぎた。俺には弱音を吐いて欲しい。それも恋人の役目だと思ってる」
「ありがとう…咲輝…」
俺が泣けなかったのは、俺が泣いたら他の人はもっと悲しむから。
だから今までずっと、苦しくても無理して笑っていたのに。
だけど俺がこんなに泣いても
こんなに弱音を吐いても
咲輝は悲しい顔を一切せず、笑顔で優しく包み込んでくれた。
あぁ、咲輝を好きになって良かった。
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