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純愛FINAL《緋禄side》
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しおりを挟む出会ってどれくらい経ったんだろう。
弱くなっていく俺を見られたくないから、
だからもうすぐ、最後だよ―…
窓辺から差す日差しに溶けてしまいそうだ。
白いこの部屋も、居心地が良いのか悪いのか分からない。
薬の量も増えた。
食欲もない。
あと何日、同じ毎日を過ごすんだろう。
「ひー兄」
「竜」
竜が見舞いに来た。
竜の隣にいる人物は、初めて見る人だ。
「ひー兄、哀沢先生の弟のハルカさん。MAR RE TORREのベーシスト」
「どーも」
「へぇ、哀沢の…そういや弟はバンドやってるって前に言ってたな。MAR RE TORREだっていうのは初耳だ」
数学教師の哀沢の弟なのか。
言われてみれば、雰囲気とか似てるかも。
MAR RE TORREってのは、芸能関係に詳しくない俺でも知ってるバンドだ。
哀沢の弟って凄かったんだと実感した。
「あ、なんだろ…ちょっとごめん。メンバーから電話かかってきちゃった……はい、もしもし」
竜の携帯が鳴り、慌てて竜は部屋から出ていく。
白い部屋に残されたのは俺と哀沢の弟。
話かける言葉が無いんだろう、ハルカさんは窓の外を眺めていた。
「俺、もうすぐ死ぬって知ってます?」
沈黙を破った俺はハルカさんに話しかけた。
彼はそれに少し驚いて振り返った。
「あぁ…竜から聞いてる」
言うなって言ってあるのにな。
信頼している人以外には。
ハルカさんは、竜が心を開いてる人なんだと理解できた。
「俺は死ぬのは怖くない。けど、俺が死んで竜が後を追ってこないかが心配で…。あいつには俺しかいない。っていうか、竜はそう思い込んでるから…」
異常過ぎるくらい、竜は俺を居場所にしてる。
だから、心配なんだ。
「後なんか追わせねぇよ」
意外な言葉だった。
嬉しかった。
俺は「ありがとうございます」と小さくつぶやき、それからハルカさんに昔話をした。
この人になら竜を任せられると思ったから。
なぜ自分がこんな身体になったのかとか、竜の過去とかを話した。
竜は中学にあがった頃に、父さんに犯されていた。
母さんに顔が似ていたからっていうのが原因で。
「父さんに縛られたりして、いつも無理矢理だったらしくて。竜は誰にも言えなくて、たまに会う俺にだけ言ってくれて。だから寮のあるMY学園を勧めたんです」
常に自分を守ってくれたのは俺で、だから俺を居場所にしてしまっている。
竜の異常なくらいの愛情が、たまに不安になるんだ。
俺がいなくなったら狂ってしまうんじゃないか。
そんなことを思ってしまう。
「安心しろよ。お前の代わりに俺が竜を守るから」
「頼もしいです。あ…俺が死んでも、音楽だけは続けて欲しいな。あいつ才能あるんで」
まるで遺言を言っているかのように俺は話し始めた。
「あとは…笑ってて欲しい」
誰も悲しんで欲しくない。
特に、家族には。
だから堕ちないで欲しい。
俺のせいで悲しまれるのが、一番辛いんだ。
「俺が守るから安心しろ」
「…お願いします。これで心置きなく逝ける」
「あぁ。引き受けるよ」
兄として何も出来なかったけど、
最期に竜を頼める相手に出会えて良かった。
竜を、頼みます。
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