純愛-junai-

槊灼大地

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純愛Ⅳ《咲輝side》

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数日後、寮に戻ると緋禄は逢おうとしてくれなかった。


部屋の前で待機していても、『今は逢えない』と返事がくるばかりで。



仕方なく自分の部屋に戻ろうとしていると、寺伝とすれ違った。



「あ、前山久しぶり!帰国したんだ」


「寺伝、久しぶり。緋禄がなぜか逢おうとしてくれない。部屋も開けてくれないんだ。何か知らないか?」


「え…?…だってあいつ病院だろ?」


「病院…?」


「あ…まだ聞いてなかった?」



聞くと数日前から検査入院として病院にいるらしい。



すぐ電話をかけるも、緋禄には繋がらない。




俺はすぐに病院へと向かった。










「緋禄!」


「おー、咲輝」


「検査入院してたなんて、聞いてない」 


「だって言ってないからな。大丈夫だよ。いつものことだから。すぐ帰るよ」



いつもの明るい緋禄だった。



少し話して、緋禄が「眠い」と言うので病室を後にした。




何か、嫌な予感がした。



もう二度と、この病室のドアを閉めたら逢えなくなってしまうようなそんな不安感。















「咲輝さん」


「竜」



帰ろうと歩いていると、偶然院内で竜に会った。



竜の様子が少しおかしい。



「緋禄、いつ退院するんだ?」



「咲輝さん…ひー兄から聞いてないんですか?」


「何を…?」



竜が驚いた顔で俺を見る。



嫌な予感がする。
予感だけであって欲しい。




「1年前に、ひー兄はもってあと1年だと言われました。さっき主治医には数値が悪化しているから…あと半年も持たないと…言われています」



「え…?」




二人の会話を聞いたときから、長くは無いだろうと予想はしていた。



でも勝手に10年…短くても5年ぐらいだと思い込んでいた。




あと半年もない?



そこまで短いと思っていなかった。




なんでそんな大事なこと言わないんだ。
偽りでも恋人同士なのに。







―…言えるはずない。





いつも他人を優先している緋禄なら。
俺に心配をかけるから。


そういう性格だ。



緋禄の笑顔が頭から離れない。



それと同時に別れを想像してしまう。



どんな気持ちでゲームを始めて俺と一緒にいたんだ?



もうすぐ死んでしまうと分かりながら。



一番苦しいのは緋禄なのに。




ゲームを始めて今までより緋禄を知れた。
だからこそすぐに理解できた。




ゲームオーバーの理由。




"泣いたらゲームオーバー"




お前が死んだとき、悲しんで欲しくないから。
俺に笑顔でいてほしいから。



そうだろう?



どうしてお前は、いつも他人を優先して自分のことを優先しないんだ。




…緋禄



俺にとってはもう緋禄はかけがえのない存在なんだ。



失いたくない。


まだ傍にいて欲しい。




こんなにも、
こんなにも、



俺の中で緋禄は大きな存在になっている。





俺は残された時間で何が出来るのかを考えた。




大切な緋禄に、何が出来るのかを―…



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