純愛-junai-

槊灼大地

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純愛Ⅳ《緋禄side》

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咲輝がいなくなって1週間。



もう限界だと思った。




いつも一緒に居すぎたから気付かなかったけど、咲輝がいないと不安になる。



俺の精神安定剤。



「…やべ」



最近体がついていかない。




…苦しい。



「雨月…?」



昼休み。



寺伝と一緒にカフェテリアで昼食を取っていたとき、急に胸が苦しくなって咳が止まらなくなった。



苦しむ俺を、寺伝が覗き込む。



こうなるって分かってたはずなのに。




あぁ、これはきっとマズイ―…




咳が止まらず、手には血がついていた。



「雨月!?」




寺伝が心配して保健室に俺を連れていく。




見ないで。



心配させたくない。



「保健室じゃなくて救急車呼んだ方がいいか…」


「呼ぶな!呼ばなくていい」



携帯で救急車を呼ぼうとしていた寺伝の腕を掴んだ。



救急車なんて呼んだら、きっと抜け出せない。



あの白い部屋から抜け出せない。



まだ、ダメなんだ。



「でも…」


「大丈夫だから。今日夕方から診察なんだ。そこで主治医に見てもらうから」



俺にはやらなくちゃいけないことが残ってるんだ。




「分かった。俺も一緒に病院に付いてく」


「それも嫌だ」


「じゃあ救急車呼ぶ」


「…分かったよ」




病院には行きたくなかった。



きっと、俺の体は悪くなってる。



日に日に体がついていかない。




「寺伝…やっぱり病院までついてこなくていいって。生徒会あるだろ?帰れよ」




ホームルームが終わってから、すぐにタクシーで病院に連れてかれた。



つぅか、半ば強制的。



「あんな血を吐いたやつ一人にさせられるかよ」



…まぁ、そりゃそうだ。




本当は、今日は診察をすっぽかして別の日に来たかった。




薬だけ貰えればそれでいい。



「緋禄くん!!」


「水沢ちゃん…」



昔から担当してくれてる看護師の水沢ちゃんが受付にいた。



「顔色悪いわね…大丈夫?先生呼んできてあげる」



その言葉に、余計に心臓が痛んだ気がした。



診察をして、嫌な予感は的中した。




「1週間、検査入院しなさい」


「待っ…とりあえず薬だけ下さい」


「半年前の薬じゃもう効かないよ。体が酷く衰えてる」



医者の一言が、痛かった。



強制的に検査入院が決まった。



寺伝が待合室で待ってる。



言いたくない。



「どうだった?」


「1週間、検査入院だって」


「マジで?」



病院に来たらこうなるって分かってたのに。



自分の体が憎い。



嫌だ。



一番、嫌いな場所。



「なぁ、寺伝」


「ん?」


「咲輝にはこのこと言わないで欲しい」



取材で泊まりがけしてる咲輝に心配かけたくない。



「分かった。じゃあ…俺は帰るから。寮に荷物あるんだろ?明日持ってくるよ」


「ありがとう」




1週間経ってからじゃ意味がない。




あと少しだけ体がもてばよかった。



咲輝がいたら、俺は倒れなかったのかな…



逢いたい。




逢いたいよ、咲輝。




だって明後日は、お前の誕生日じゃんか。




一緒に居られる最期の誕生日。




逢いたい。





苦しいよ、咲輝。


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