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純愛Ⅲ《緋禄side》-ワイルドな夜編-
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しおりを挟む咲輝の父親で超有名な写真家の前山由輝の祝賀パーティーに参加することになった。
俺も咲輝も制服じゃなくてよそ行きのスーツ。
咲輝のスーツ姿、かっこよすぎる。
「緋禄くん」
「由輝さんお久しぶりです。個展おめでとうございます」
「久しぶりに会えて嬉しいよ。体は大丈夫なの?」
大丈夫ではないけど。
大丈夫って言っておかないとな。
「はい。元気です!由輝さんに会えるから体調良くなったのかもしれないです」
「嬉しいよ。ゆっくりしていってね」
「はい」
そう会話していると、由輝さんは招待客であろう外人に話しかけられたので俺はその場を去った。
咲輝も色んな人に声かけられてるし。
やっぱりこういう所に来ると場違いなんだよなぁ。
メディアもたくさん来てるし。
咲輝のじいさんも由輝さんも、テレビで一般人の絵や写真の評価してたりするもんなぁ。
俺が一人でいると、ボーイらしき人が俺にジュースを提供してくれた。
「由輝様からです」
「あ、どうも…」
咲輝いなきゃ食べるか飲むかしかないもんな。
そう思ってジュースを手に取る。
わざわざ由輝さんが俺にってくれたんだから、一口飲んでみた。
なんだこれ、変な味。
大人の味ってやつなのか?
さすがに捨てるわけに行かないしなぁ…ゆっくり飲むか。
そう思ってゆっくり飲んでいると、後ろからそのジュースを誰かに奪われた。
「これは俺のだ」
「咲輝」
そう言って俺から奪ったジュースを飲み干す咲輝。
「おいおい!わざわざ俺の奪わなくていいじゃん。まぁ美味しくなかったからいいけどさ」
俺の話しを無視して、咲輝はボーイを呼ぶ。
「すみません。彼は体調弱いので今後はミネラルウォーターだけにしてあげてください」
「かしこまりました」
「ひっど!俺はここに来て水しか飲めないのかよ!」
「緋禄、もうすぐ挨拶回りが終わるから、そしたら部屋でゆっくりしよう。絶対水以外飲むなよ?」
部屋でゆっくり…咲輝と部屋でゆっくり。
ゆっくりしたい。
そして咲輝は俺の耳元で囁く。
「たくさん、しような」
「―っ…!?」
な、な、な、なななななななんて!?
咲輝か、本当に咲輝なのか?
そんなこと言うやつだったか?
俺の方が赤面するっつの。
俺が赤面する中、また咲輝は誰かに話しかけられてどこかに行ってしまった。
色んな人と話して頭おかしくなったのかな?
あー、ちょっと頭…ってか顔冷やそ。
外に出て、月を見ながら顔を冷やした。
そういや最近、咲輝色んな機材使って月を撮影してたよなぁ。
すっごい綺麗な写真だった。
「やっぱり咲輝の写真の方が好きだなぁ」
月を見て独り言を言っていると、誰かが隣にきた。
「君、咲輝の友達?」
少しだけ顔をそちらに向けると、大学生ぐらいの男が俺を見ていた。
誰だこいつ。
っていうか咲輝とは友達っていうか恋人ごっこ中。
「俺咲輝のいとこなんだけどさ、君のこと知りたいなぁって」
「いや、俺は別に知りたくないです」
「これ飲む?美味しいよ?」
「俺水以外飲むなって言われてるんで」
なんか性格的にこういうグイグイ来るやつ合わないんだよなぁ。
俺の本能が関わるなと言っている。
「そう言わないでよ。咲輝さぁ挨拶まわりで忙しそうだし、一緒に写真みる?」
「いえ、見ないです」
そう言ってまた月を見ていると、そいつは更に近付いてスマホのギャラリーを見せてきた。
興味ねぇっつの。
「ねー、見てみて、これ俺と咲輝の小さいとき。」
「え…」
咲輝の小さいとき!?
幼い咲輝の写真なら…とついその画面を見てしまった。
「左が俺で、右が咲輝」
「左には興味ないです」
隣のやつの顔も見ずにスマホをガン見。
えー、なんだこの咲輝天使?
目がくりくり。
めちゃ笑顔。
たぶん5歳ぐらいかな?
すんげーーーかわいい!
「咲輝の昔の写真、俺の部屋にたくさんあるよ。見に来る?」
「なんであんたが咲輝の写真こんな場所に持ってくるの?おかしくない?」
「持ってこいって頼まれたんだよ。じいちゃんに。あ、俺と咲輝のじいちゃん同じね。前山かず輝」
ちらりと咲輝を探して見つけると、咲輝はまだ挨拶回りで忙しそうだ。
めちゃくちゃ見たい。
天使咲輝を拝みたい。
「おいでよ」
「何歳ぐらいの写真があるんですか?」
「ハイハイしてる咲輝とかあるよ」
赤ちゃん咲輝。
萌え死に確定。
ちょっとだけ、ちょっと見るだけ。
咲輝忙しそうだし、まだ時間あるか。
「咲輝の挨拶回りが終わるまでなら…」
「オッケー。じゃあ行こ」
俺はそいつと共にパーティー会場から出て同ホテルの部屋へ向かった。
二人でエレベーターを待っていると、そいつに肩をぐいっと引き寄せられた。
「あー、この手はちょっと…俺そういうんじゃないんで」
「いいじゃん。いいじゃん。君可愛くてさ」
うっざ。
面倒だなぁ…やっぱり止めよ。
天使咲輝に癒される前にイライラしそう。
てか、すでにしてるし。
そう思って引き返そうとした瞬間、背後から誰かに声をかけられた。
「すみません」
「咲輝」
写真じゃなくて本物の咲輝だった。
「俺たちもう部屋に戻るので」
そう言って本物の咲輝は、俺の手を掴んで開いたエレベーターに乗った。
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