純愛-junai-

槊灼大地

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純愛Ⅱ《咲輝side》-初夜編-

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―数日後―




「あ、咲輝くーん」

 

朝、美術室から教室に向う途中で誰かに声をかけられた。



「山田先生。おはようございます」


「やっと一つになれたみたいだね。嬉しい。結局ゴムつけたの?」


「…緋禄から聞いたんですか?」


「そうなんだよね。色々相談されて。口でさせてもらえないって悩んでたよ」


「そんなことまで先生に。すみません…」



廊下でこんな話しをするべきじゃないのに、山田先生が止まらない。



「どうして口でさせてあげないの?緋禄くん汚しちゃいそうで嫌?恥ずかしい?」


「恥ずかしいというか…」


俺は口でされたくないわけじゃない。



むしろ、してもらえたら嬉しい。



けれど、させない理由が俺にはあった。






「口でされたら余計に興奮して制御できなくて、緋禄をめちゃくちゃにしてしまいそうなので…」






緋禄を大切にしたい。
自分の欲望のためじゃなくて。



緋禄の体を優先したい。




「わーお!愛だね、愛。もう本当に君たち尊すぎて俺がキュン死にしちゃう。死んだら哀沢くんに怒られちゃうから死なないけど」







―昼休み―



緋禄と寺伝と3人で学食でランチ中。



俺の携帯に着信が入った。



「父からだ。悪い、先に食べててくれ」


「オッケー」

 

そう言って俺は席を外した。




『咲輝、元気か?』



「はい。個展おめでとうございます」


『ありがとう。今度祝賀パーティーがあるんだ。咲輝も出席しなさい』


「分かりました」


『ホテルで開催してそのまま泊まれるから、よければ緋禄くんも誘いなさい』



「はい」




父は過去に何回も個展を開催していて、いつの日だったか緋禄を連れていったことがあった。



そこで緋禄を気に入ってから、毎回祝賀パーティーに緋禄を連れてくるように言われる。



恋人ごっこを始めてから緋禄を連れていくのは初めてだな。



しかも最近は緋禄の体調が悪いときと祝賀会が重なっていて、父も緋禄に会えていなかったし。




今回は一緒に行けるといいんだが。




「二人とも、悪かった…大空?」



父からの電話を終えて戻ると、1学年下の大空がいた。



「前山先輩こんにちは!あの、口…」
「おーおーぞーら!!」



寺伝が大空の口を押さえて、制服を引っ張って二人でどこかに去っていった。



なんだ?



「口?」


「なんだろな?俺も分かんない」



寺伝と大空は仲が悪いと聞いていたが、見た感じそうでもなさそうだな。



席に座ると、緋禄が俺を見て問いかける。






「咲輝は、俺のこと大切なの?」




大切に決まってる。



俺はきっと、あの日園庭で寝ている緋禄に惹かれてしまったんだ。



人見知りである普段の俺なら、あの状況で絶対に声なんてかけない。



でも、話したくなった。
どんな声で、どんな表情で俺を見るのか知りたかった。



だから起こしたんだ。





「大切だよ」





もう、あの時から俺は緋禄を―…




「そっか。俺たちは俺たちのペースで頑張ろうな」


「?」


「由輝さん何だって?」


「あぁ、今度祝賀パーティーがあるから緋禄も連れておいでって」


「え、行く行く!やった。スーツ用意しなきゃ」





この笑顔をずっと隣で見ていたい。



あの時も今も。



出来ればこのゲームの終わりなんて来ないことを、俺は心の中で祈った。

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