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純愛《咲輝side》
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しおりを挟む緋禄に避けられて2週間。
いつもより早く起きて、緋禄の部屋の前で待ち伏せをした。
しばらくするとドアが開き、教室へ向かおうとする緋禄が出てきた。
「咲、輝…!」
「おはよう緋禄。話がある」
緋禄は俺に気付いて驚き、その場をすぐに立ち去ろうとしていた。
そうはさせまいと俺は緋禄の腕を掴んで、そのまま緋禄の部屋に上がり込み鍵を閉めた。
「おい、待てよ。遅刻す…」
「話があるんだ緋禄」
俺が怖かったのだろうか。
俺の顔を見るなり緋禄は黙って俯いた。
「お前が俺を避ける理由はなんだ?」
「…避けてない」
「嘘をつくな」
キスをしてから避けられている。
だとしたら、俺の予想はひとつだけ。
「俺があのゲームに参加すれば、お前は普通に戻るのか?」
「ゲームって…」
「『恋人ごっこ』だろ?」
目を反らしていた緋禄が、俺のその言葉を聞いてやっと俺を見た。
何か考え込むように黙って。
しばらく沈黙が続く。
そして開き直ったかのような態度で言う。
「そうだよ。ゲームがしたいんだよ俺は」
あぁ、やっぱり。
「気持ち悪いだろ、こんなゲーム」
そう言ってまた目を反らす。
ゲームの意図はよく分からないが、緋禄といつも通り過ごせないのならこのゲームに参加するのも有りだと思った。
「!?」
緋禄の顔を持ち上げて、俺は緋禄にキスをした。
「俺は嫌だとは言ってないだろ。なんで避けるんだ。返事も聞かないで」
緋禄にキスをして分かったことは、気持ち悪いとかそんな感情は一切生まれなかったということ。
親友としてではなく、恋人として緋禄を受け入れられると思った。
「恋人ってのは抱き合うもんだぜ?」
緋禄は挑発する。
参ったな。
男同士の知識が無い。
ゲームに参加すればいずれそうなるかもしれないと思っていたけれど。
こんなに早くその時が来てしまうとは…
その挑発に乗らずに断ってもいいと思った。
ただ、緋禄が求めているんだ。
なら今の自分に出来ることをしよう。
そう思い、緋禄を押し倒した。
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