純愛-junai-

槊灼大地

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純愛《咲輝side》

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ある日緋禄が1週間入院すると聞いて見舞いに行って病室に入ろうとしたとき、部屋から怒鳴り声が聞こえた。


「そんなわけないって言ってるじゃん!!」



その声を聞いて、開けようとしたドアの手を止めた。



「あ、ごめ…」


会話の相手は竜か?



会話を聞くのはマズイなと思って帰ろうとした瞬間、



「何で…何でひー兄なの?どうして?死んでもいいやつなんて他にいるのに…」


「俺は大丈夫だから。この体がお前じゃなくてよかったよ」




『死』という言葉が気になり会話を聞いてしまった。




「ひー兄がいなくなるなら生きてる意味ない」


「そんなこと言うな」




いなくなる…?
緋禄が?



「嫌だ。せっかくあの人から少し離れられて、ひー兄と同じ学校に行けたのに。短すぎるよ…長く生きられないなんて!」


「楽しいことがあるよ。俺がいなくなっても」


「嫌だ!嫌だ!嫌だ」



緋禄はこんな冗談を言うやつじゃない。
特に竜は緋禄に依存している。



同時に、だからこそすぐに理解することができた。



「俺が生きている間は思い出たくさん作ろう」


「泣くなよ。俺はまだ生きてるだろ?」


「嫌だよ。嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ!」




緋禄は長く生きれない―…







だからだろうか、







「咲輝、ゲームしないか?」






緋禄にキスをされてから考えた。





「恋人ごっこ」





緋禄が望むのならそれも受け入れようと思った。





「…なんてな。冗談」



いつか、俺の傍から居なくなってしまう大切な親友だから―…




「忘れて、今の。そろそろ授業始まるし」





しかしあのキス以来、緋禄は俺を避けるようになった。



「緋禄、学食に…」


「悪ぃ、先生に呼ばれてんだ」



何か嫌われるようなことでもしたのか?



色々考えてみたが、思い当たることがあるとすればやはりあのキス以外考えられなかった。



「前山」


「…寺伝?」


「雨月とケンカでもしたの?」


「ケンカはしてない。…と思う」


「そっか。なんかあいつ泣いてたから気になってさ」



緋禄が泣いていたと寺伝から聞いて、俺の心の中がざわついた。


もう緋禄と4年も一緒にいるのに、緋禄の涙を見たことが無い。



でも寺伝の前では泣いたという事実が、嫉妬に近いような感情を抱いた。




俺は何もしてない。
緋禄が一方的に避けているだけだ。



もう10日もこんな状態だ。


いいのか?
ずっとこのままで



解決策を考えてみても、行き着く先は緋禄の提案したゲームに参加することしか思い浮かばない。



でも冗談だと言っていた。



そもそもなぜそんなゲームがしたいのか。



恋愛をしてみたいから。
他のやつだと面倒だから。
自分が長くないから。
俺なら気を遣わなくて楽だから。



思い当たる理由といえばそれぐらいしか思い付かなくて。



あとは俺の気持ち次第だと思った。



別に緋禄にキスされても嫌じゃなかった。



緋禄が望むことはしたいと思った。



俺にとっては失いたくない親友。



それでもいつか、傍から居なくなってしまう親友なんだ―…




自分の中で決心が固まった。



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