純愛-junai-

槊灼大地

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純愛《緋禄side》

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2ヶ月前、母さんから俺はあと1年ぐらいしか生きられないと告げられた。



昔から体が弱くて、苦しい日も多くなってきた。
数値も安定していなかったし、なんとなくそうかなって予想はついていた。



自分の体だから、自分が一番知ってる。



母さんは「丈夫に産んであげられなくてごめん」って何度も俺に謝ってたけど、



俺はそんな言葉望んじゃいない。




人が自分のせいで泣いたり、悲しんだり、苦しんだり




一番、それが辛いから。





生まれたのは後悔してない。




皆に出逢えたことに感謝。




父さんのせいで精神病を患っていた母さんは、俺の体が弱いのも俺がもうすぐ亡くなるのも自分のせいだと思い、その数日後に命を経った。




母さん…守れなくて、弱くてごめん。













いつの日だったかまた数値が悪くなったので検査をするために1週間入院をした時、弟の竜が見舞いに来た。



「ひー兄」


「竜」




弟の竜とは1つ違いで同じ学校に通っている。
最近じゃインディーズバンドのJEESジースのボーカルとして活動もしている。



離婚して俺は母さん、竜は父さんに引き取られたから名字は違うけど血は繋がった本当の兄弟だ。



離れてからもよく連絡したり、遊んだりしていた。



「ひー兄…」







竜は昔から俺に依存していた。



だから俺が死んだらどうなってしまうんだろう。



「ねぇひー兄、元気になったらどこに行く?」


「竜…」



でも隠してもいいことなんて無い。
特に竜には時間が必要だ。
俺が死ぬことを受け入れてもらう時間が。



「俺のライブ見に来てよ!来年ツアーもやるし」



JEESもインディーズではトップクラスの人気で最近竜とまともに会話が出来ないぐらい忙しそうだ。



だから今、ちゃんと言っておかないと。




「竜…俺、長くないんだ」



竜の目つきが変わる。



「…そんなわけないじゃん!ひー兄は元気になるよ」


「自分のことは自分がよく分かる。最近体が重い。薬も量が増えた。なかなか効かない」



俺に依存している竜にはちゃんと分からせないと。
俺が死ぬ現実を受け入れてもらわないと。
この1年という短い期間内で。



「そんなわけないって言ってるじゃん!!」


白い部屋に竜の怒鳴り声が響いた。


竜が俺に怒鳴ったことなんてないから一瞬驚いた。



「あ、ごめ…」



そしてしばらく俺の顔を見つめて涙を溢した。


「何で…何でひー兄なの?どうして?死んでもいいやつなんて他にいるのに…母さんだってもういない…俺は一人になるの…?」


「俺は大丈夫だから。この体がお前じゃなくてよかったよ」


「ひー兄がいなくなるなら生きてる意味ない」



俺に近づいて、ベッドで泣きついて。



「そんなこと言うな」


「嫌だ。せっかくあの人から少し離れられて、ひー兄と同じ学校に行けたのに。短すぎるよ…長く生きられないなんて!」



竜は中学に上がった頃から父さんに犯されていた。



父さんは異常なまでに母さんを愛していたから、母さんに似ている竜を母さんの代わりにした。



竜は俺の勧めで高校に進学するのと同時に今の学校を受験した。



父さんは寮生活に反対したが自分も仕事が忙しく竜を一人にさせてしまうことと、爆発的にJEESの人気が出て音楽活動を辞められなくなった。



そして施設の整ったMY学園は最適だと判断され、毎日の連絡と長期休みには家に帰るという条件で今の学校に通わせてくれた。



だから長期休み以外は父さんから解放されて、俺にも学校で会えるようになったのに。





「嫌だ!嫌だ!嫌だ」


「俺が生きている間は思い出たくさん作ろう」



子供のように泣きじゃくって―…
お前にそんな顔をさせたくないんだよ。



「泣くなよ。俺はまだ生きてるだろ?」


「嫌だよ。嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ!」



背中を擦り頭を撫でるのと比例して竜の涙は溢れ出す。



死ぬのは怖くない。
けど、こうして俺のせいで誰かが悲しむのが嫌なんだ。




「あぁそうか…会える方法があるじゃん」



ふと、顔をあげた竜は一点を見つめて話し出す。



「…竜?」



「ひー兄がいなくなっても、すぐに会える方法がさ」




ダメだこの目は。



「おい…変なこと考えるなよ?」



たぶん、後を追おうとしてる。
そんなこと絶対にして欲しくない。



竜は返事をせずにニコッと笑って立ち上がり、鼻歌を歌いながら窓の外を眺めていた。



竜は、俺がいなくなったらどうなってしまうんだろう…




それだけが不安だった。

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