玄愛-genai-

槊灼大地

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玄愛Ⅲー文化祭編ー《雅鷹side》

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そんな怒っている俺に女子が近付いてきた。



「雅鷹くーん」


「なに?」


「女装の練習しない?たくさんカツラあるし」



メイク担当の女子が、たくさんのカツラとセーラー服を持ってきた。



ルイちゃんは仕事掛け持ちしていて、他にやらないといけない仕事があるらしく俺は少し暇だったからメイクしてもらった。



「あーどれも可愛い」


「肌綺麗だねー」


「まつげ長いし目もおっきい」


「完成」



まぶた重った…


女の子ってこんなにまつ毛バサバサなんだ。
違和感。大変だね毎日。



「かっわいー!」


「か、可愛い?」


「うん、すっごく可愛いよ」



女子たちから盛り上げられ、俺は嬉しくなってルイちゃんの元へ向かった。



「ルイちゃーん、俺」
「可愛いですよ」



即答の中の即答。


おい、ちゃんと見てないだろ。



そして作業しているアヤちゃんの元へ向かった。



「アーヤーちゃん」


「…雅鷹!?」


「そだよ。可愛い?」


「いやそこら辺の女よりヤバすぎだろ。本番はニーハイ履くように」


「うん、分かったぁ」



ナマ足よりも、ニーハイ派の模様。
なんか俺を見る眼がイヤらしい。
変態の目。



アヤちゃんから可愛いって言われたらこりゃもう自信でちゃうよね。



生徒会室で皆に可愛いと持ち上げられて気分をよくした俺は、放課後に部活に行く途中の哀沢くんの元へ向かった。


「哀沢くーん」



そして廊下を一人で歩いている哀沢くんを発見した。



「ナイスタイミング!いま会いに行こうとしてたんだよ」


「………………山田?」



振り返って女装した俺の姿を見て、上から下まで10秒ぐらいかけてゆっくりと確認した。



「メイクしてもらったの。本番これで司会やるんだ。どお?」






さぁ、何て答える…?





「…普通」


「ふーつーうー?」



哀沢くん攻略辞典は既にアップデート済みなのです。



でも分かってても俺のHPは削られた。



「可愛いと思わないの!?みんな可愛いって言ってくれたよ!?女子もルイちゃんもアヤちゃんも!みんなみんな!」



俺は怒りが抑えられなかった。
ムキになって哀沢くんを怒鳴ってしまった。



「よかったじゃねぇか【可愛い】って言ってもらえて」


「え?」



「お前は可愛いって言ってもらえればいいんだろ?よかったな」




―…違うのに



俺は、哀沢くんにだけ可愛いって言って欲しいのに。




「そうだよ、皆可愛いって言ってくれる。哀沢くんとは違うもん」



俺のこと本当に好きなのかな?



好きだ、とか
可愛い、とか



そんな簡単な言葉だけ言ってくれれば満足なのに。



「こんな俺だと誰かを誘惑しちゃうだろうし、俺が誰かに襲われて抱かれてもおかしくないんだからね!」



もう、自分でも何言ってんのか分かんない。



こんなこと言って嫌われてもおかしくないのに、止まらない。


「哀沢くんのバカ!もう知らない」



俺はそのまま再び生徒会室に戻った。



そして作業中のアヤちゃんに泣きついた。



「わー!また普通って言われたぁぁぁ」


「おいおい泣くなよ雅鷹」


「死ぬぅー。もーやだぁぁ!」



俺を横目に図面を書いているアヤちゃん。



あまりにも俺がうるさくて、持っているペンを置いて俺の頭を撫でた。



「落ち着けって。うるせぇし。皆こっち見てんだろ」


「なんで!?だっておれ可愛いでしょ?」


「あぁ、可愛いよ」


「じゃあ何で普通なの!?」



アヤちゃんはため息をついて、再びペンを取り図面を書き始めた。



「まぁもう文化祭終わるまでは炯のこと忘れろ。忙しいんだから」



話をちゃんと聞いてもらえなくて、腹黒金持ちで性格の悪い俺はアヤちゃんを脅すことを決めた。



「…ルイちゃんと愁ちゃん二人きりにしちゃお。出来れば個室に長時間閉じ込めてさ。部屋の温度下げてさ。絶対何か起きるよね。俺もう友達なんてどうでもいいんだ」


「雅鷹ー!!」


その発言を聞いて俺が拗ねていると、アヤちゃんは作業を中断して俺を掴んでルイちゃんの元へ向かった。


「おい、ルイ」


「…神威さん」


「雅鷹見張っとけよ!お前の傍から片時も放すな!」

 
「え?」



ルイちゃんは生徒会役員だから、総合司会以外の仕事も掛け持っている。



だから仕事が多くてずっと俺に構っていられないから、俺がいなくなったことに気付いていないようだった。



「てめぇの担当だろ。ちゃんと仕事させろ」


「申し訳ありません」


「もし雅鷹一人にさせたら、その時はてめぇのこと犯してイキ殺すからな」


「…分かりました」


「頼んだぞ」


「はい」



アヤちゃん…稀に見るマジな目をしている。



愁ちゃんとルイちゃんを本当に二人きりにしてしまったら、俺も何かと危なさそうだなと感じるくらいに。



「雅鷹さん、元気ないですね。大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃない」


「でしょうね」


「哀沢くんにバカって言っちゃった…俺全然可愛くないや」



ほんと、俺って可愛くない。



哀沢くんはこんな俺のどこがいいんだろう。



総合司会の打ち合わせをしてても、そんなことばかり頭の中がぐるぐるする。



そして哀沢くんと仲直りせず、準備に終われて文化祭当日になってしまった。




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